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フラグを無視して逢いに行こう  作者: 竜胆千歳
第一章 出会いの春は頬を染めて
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2-1話 地味系のモテ期 

祝 初ポイント! 『毎日アップする』をコンセプトにこれからも頑張ります

 名古屋にある私立草木そうぼく高校2-Dの教室で秀章と海は勉強に励んでいた。

 去年まで注目を集めていたのは有名人の息子という事で海だったが、アメフトの全国大会で一年ながらチームを引っ張っていった秀章に注目が集中していた。


 ただ、当人たちは相変わらず勉強を怠らず、部活や自分の夢のために日々勤しんでいる。秀章は今日も日課のプレイブックというチームプレーをまとめた本に書かれている事を頭に入れていた。


「ちょっといいかしら?」


 秀章が顔を上げるとすらっとした女子生徒が立っていた、秀章のポジションはQBクォーターバックというチームの司令塔で、作戦を大量に憶えなければやっていけないオフェンスの中でも一番記憶力が良くないといけない場所だったので彼女の事もしっかり記憶していた。とはいえ、この学校内で彼女を知らない者などほとんどいないが。


「どうしました、戸沢先輩?」


 戸沢五十鈴とざわいすずは1年の終わりに生徒会選挙に立候補し、2年の副会長を打ち破って二年間会長を守り続けている才色兼備という言葉が似合う学校きっての有名人だ、そんな五十鈴が2-Dに来たとクラスがざわついていた。


「貴方って今付き合っている人とかいるのかしら?」

「なんですか急に」


 秀章の隣にいて、それを聞いていた海が耳打ちした。


「ヒデちゃん、モテ期到来だね」

「分からないぞ、嫌な男に付きまとわれて強そうな男というので俺にカモフラージュを頼んできたかもしれないし、そもそも少しちやほやされているから釘を刺しに来たのかもしれないぞ」

「どれだけ自分に自信がないの?」


 秀章はスポーツで多少有名になったからといって浮かれるような男ではなかった、むしろどこか冷めた目で周りを見ていたので、立ち位置をあまり間違えず、無駄な争いをした事は無かった。


「いいから答えてくれない?」

「恋人的な人なら今はいません、これから出来るかもしれませんが」

「あたしがその恋人っていうのはどう?」


 その言葉にクラスが一瞬静まり、驚愕の声が上がった。


「う、嘘だろ!」

「凄いヤツとは前々から思っていたけど、そっちもか!」

「戸沢先輩、大胆すぎです!」


 興奮気味の声をよそに、秀章は口を開いた。


「確かに先輩が彼女になってくれる可能性はあります、ただ、一年生から生徒会長を任された秀才という情報以外あなたの事を知らない状況で、首を縦に振る事はできません。あなたの人となり次第では付き合う事もあり得ますが」


 今度はその発言に驚愕の声が上がった。


「戸沢先輩を振るバカがこの学校にいるのか!」

「この状況何なの!」

「こんな楽しいクラスだなんて、このクラスになって良かった~」


 首を縦に振らなかった秀章に逆に引き込まれたのか、五十鈴は食い下がった。


「生徒会長を一年から任されたという点で人となりは分かると思ったけど」

「あくまでも表面上や先輩方が見ていた行動を評価されてはいても、あなたの本質は完全に把握はしていないでしょう。あなた自身も自分の事を完璧に把握しているかと言われたら多分把握していないと思いますよ、先人たちですら把握していないですから。もちろん、俺も自分の事を全部は分かっていません」


 すると、五十鈴は大声で笑い出し、クラスをまた驚かせた。


「貴方って慎重なのね、あたしに対して緊張したようにも見えないし、かといって恋愛に興味がないってわけでもない、またお話させてもらえる?」

「俺は全然かまいません、お互い忙しい立場でしょうけど交流を深める事はお互いに良い事だと思いますから」


 秀章は生徒会にパイプをつなげる事が出来るし、五十鈴は冷静な後輩の意見が聴け、運が良ければ秀章が心を開いてくれる。その言葉の意味をしっかり理解した五十鈴は秀章とニッコリと笑顔を交わし、教室を去っていった。


「お前、普通あの戸沢先輩の告白を断るか!?」

「リア充め、爆発しろ!」


 など、男子を中心に秀章に怒りのまなざしと言葉を浴びせかける、最初は無視して本の続きを読もうかと思った秀章だったが、教室を静かにするため説明した。


「俺ははいと言ってもいいえと拒んでもいない、お前らだって知らない人にいきなり付き合って下さいなんて言われて、はい喜んでー! って居酒屋みたいに言えるのか?」

「戸沢先輩は学校の有名人じゃないか!」

「ちゃんと見て知っているのと、名前は知っているのとじゃ違うさ、付き合ってお互いがっかりするのは嫌だと思わないか? それこそ戸沢先輩ほどの有名人なら、他人が知らない部分を知られてがっかりされるのは嫌だろう、安易に付き合うのじゃなくて、お互いの事を知ってから付き合った方がまだ良いんじゃないか」

「そ、それはそうだけど……」

「くぅ~リア充が恨めしい!」

「焦らなくても、相愛の人は現れるだろ、チャンスを掴んだらしっかり握って俺にリア充報告してくれよ、いいね! とか、このリア充め! とかいうから、お前の方が絶対彼女出来るの早いって、恋愛経験が浅いのは俺も同じだし、周りを盛り上げるのと女性に優しくするバランスさえしっかり取れたら、人気が出ると断言するぞ」

「これがモテる男の余裕か……」

「親友の僕から言わせてもらえば、告白経験はこれが初めてじゃないかな」


 うなだれているクラスメイトに、海口を出した。


「見てろよ井領、お前より先に結婚してやるんだからな!」


 名もないクラスメイトの1人の宣言は授業開始のチャイムにかき消された。


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