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フラグを無視して逢いに行こう  作者: 竜胆千歳
第四章 ゆっくりと着実に
21/59

1話 上手くても下手でも

歌詞はオリジナルですが、何かと似ていると思われましたら是非教えて下さい。修正・削除いたします。

20159.21一部修正しました

 美伶と秀章が遊びの予定を立てた日曜日の午後、恋愛応援同盟の3人を加えて向かった先はカラオケ店だった。


「う、歌うの? わたし上手く歌えなくなったのに……」

「お金を払わないのに、アイドルの歌を聞こうとする僕たちが無茶言っている訳だから、楽しく歌えば良いよ」

「仲が良い友達に練習を見てもらえば良いだろ、みんなとワイワイ騒ぐだけが楽しいカラオケでもないし」

「そうそう、秀章なんてノリが良い曲が苦手だから、開き直って後半にスローテンポの曲を歌う位だし!」

「大丈夫、私より下手じゃないから、みんな私の下手さに注目するから」

「美伶ちゃんは論外だからね……」


 さくらがしり込みしていると、みんながフォローを始めた。嬉しいと感じたさくらだったが、親友にツッコミを入れる事も忘れなかった。

 中に入って軽食を注文し、早速歌う事になった。トップバッターは聡成と海で、男性デュオ、トン・ツーの『ネバーギブアップ・ビリーバー」だった。


「どんなに頑張っても そこは遠くて~」

「夢破れても俺はまた夢を追いかけるよー」

「「ダメなヤツと笑われたってー」」


 見事にハーモニーを決めた2人に場が盛り上がった。聡成は音程が正確で、海はそれに加え声が素晴らしかった。


「すごいですね2人とも、声が曲にちゃんと合ってました」

「よし、さくらが歌いやすい環境を作ってあげるから、私が歌ってあげるよー」


 美伶が選曲したのは最近注目されているギタジョ、サンゴの『2人の歩幅』だった。


「あなたの歩幅に追いついたら 笑ってくれるかな──」


 秀章ら男たちは、あまりの下手さに口を抑えて蹲っていた、さくらは手慣れた様子で、イヤフォンで好きな音楽を聴いて乗り切ったのでけろりとしていたが。


「──どう、この後なら多少下手な人でもまともに聞こえるよー!」

「凄いな美伶、どんなメンタルしているんだ……」


 秀章が頭を押さえながら呟いた。キーが出ていないという問題ではなく、お経の様なドレミが全くない音程をフルで聞かされて、男たちはダメージを喰らっていた。


「さあ師匠、出番です!」


 美伶がふざけてマイクを渡すと、さくらが選んだ曲は、日本を代表するバンド、『SelfJudge』の『カカオフィス』、全員が担当する楽器と兼任してボーカルをするという規格外のモンスターバンド、その中でブルース系の曲を歌うキーボードの曲に、男性陣は驚いていた。


「いくらわたしが呼んでも きみはいないとわかっているけど きみのいない苦しみを分かってくれよ──」


 声質的には原曲とまったく違うが、聴きやすいフレッシュな声で歌い切った。


「これでスランプって言うなら、プロの世界って凄いな、普通の人よりも全然上手い」

「ちゃんと自分なりの歌い方で歌っているから、後は自信なんだろうね」


 聡成と海が評価している中、さくらはすごい勢いで首を横に振った。


「ダメです、わたしなんて下手くそすぎてお荷物でしたから、今回はまぐれです!」


 さくらの自信はまだつかなかったが、それでも心は回復に向かっている様だった。


「いや、もっとすごいアイドルが同い年がいて、斐文あやふみ君って言うんですけどダンスも歌も次元が違いますから」

「ああ、牧田まきた斐文か、あいつの声は上品だよな、R&B系は似合わないが、クラシックロックとか似合いそうな声していたのは覚えているな」


 注文したフライドポテトを受け取りながら、美伶は首をかしげる。


「アイドルなのに?」

「ああ、声質的に器用な感じがしたな、それにどことなく愛想が良いアイドルな感じがしなかった」


 そう言っている秀章が歌ったのは、『SelfJudge』の元メンバー、白虎の『ミルクティーフレンド』だった。


「泣いた時は一緒に ミルクティーを飲んだね」


 秀章は声が低く、キーを下げて歌っていた。ただ、美伶よりは上手く歌えていたので、音痴というほどの酷いものではなかった。


「良い意味で攻めませんね、自分の出来る範囲をしっかり分かってて歌っていますよ」

「ああ、ありがとう。この人は音域が結構広いんだけど、好きだから歌っちゃうんだよな。声が低いのは分かっているんだけど」

「大丈夫、少なくともミーちゃんよりは人に不快を与えないから」

「海君って時々残酷だよね……」


 その後もポテトやドリンクバーで休憩しながら、みんなで好きな曲を歌ったが、美伶の時だけは全員やたらとトイレに行っていた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ふう、久々に歌ったから気分転換出来たね」

「割と歌えていたので良かったです」


 みんなとても満足していたが、歌うたびにトイレに行かれた美伶は不満げだった。


「みんな、酷いよねーやけにトイレに行ってさ、私の歌ってそこまで酷いの?」

「さて、このまま家に帰るか」

「わたし、柊君の所に行って来ます」

「あっ、じゃあ僕も絵のレッスンをしてあげるよ、千榎に逢いに行くついでに」

「今日はアメフト特集がやっているんだった、じゃあな!」


 各々美伶を無視して逃げた、討論もしたくないと言ったところか。


「ったくもー、私も帰ろうか……」


 美伶がもやもやとした気持ちを持ちつつ、傾きかけた陽を見ながら歩いていると、複数の男に声をかけられた。


「なあ、ちょっと遊ばない?」

「良い場所知っているからさ、ちょっとだけ行こうぜ」


 薄ら笑いの、善良とは言い難い、チャラチャラした男たちが美伶の進路を塞いだ。


「遊びたかったら、5年位待ってからそういうお店に行きなよー。カラオケでメンタルボロボロでそれどころじゃないからさ」


 笑って横を通り過ぎようとすると、1人の男に腕を掴まれた。


「俺達をフルなんていい度胸してるじゃん、ちょっとついて来てもらおうか」


 美伶は男たちに囲まれて人通りの少ない場所に連れられた。

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