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俺様獅子との猛愛エンゲージ!  作者: 古都助
~第二部・俺様獅子様の出張と婚約パニック!~
34/71

予感と不安




―― side 征臣。




『……というわけなんだよね』



「ほぉ……、その悠希とかいう奴の親が、ほのかを嫁に狙っていると?」



『残念ながらね。本人にその気はないみたいだけど、

 秋葉さん家は、ほのかの事を諦めてないみたいでね』




日本にいる蒼から通話が掛かって来たのは、午前三時近くのことだった。

向こうじゃまだ夜の早い時間帯だろうが、こっちは紛れもなく深夜だ。

気持ちよくベッドで寝てたってっつーのに、問答無用で呼び出しの音が鳴り、

表所画面には、『鈴城蒼』と出ていたものだから、通話に出ないわけにはいかない。

で、通話オンの表情をタップしてみたら……、とんでもない話を聞かされたわけだ。




「秋葉家っつーと、『狙った獲物は逃がさない』、『惚れ込んだらとことんまで』ってのが、

 家訓みたいな家だったよな、確か」



『そうそう、そのお蔭で企業成績も良いし、日本でも屈指の大会社にまで成長した。

 そんな秋葉さんが次に目を付けたのが、ウチのほのかってわけだ』



「勿論、お前のとこの親は断った話なんだよな?」




仮とはいえ、俺はほのかの婚約者だ。

獅雪家との関係も考えると、ほのかの両親が秋葉家に押し切られるとも思えない。

俺の事を持ち出せば、いくらでも回避可能な縁談だ。

しかし……。




『父さんも母さんもちゃんと断ってるよ。

 だけど……、熱意が凄いというか、しつこいというか……』



「最初に聞いたとおり、諦めが悪いって事だな。

 ……どうしたもんか。俺がすぐに帰国できりゃいいんだがな」




出来るものなら、今すぐに仕事を切り上げて日本に帰国したいところだ。

秋葉家が手を出せないように、諦めるしかないように、

俺とほのかの関係を確実なものに変える。

そうすれば、さすがにあの秋葉家といえど肩を落とす事だろう。

だが……、まだ生憎と帰れない……。

ほのかをこの腕に抱いて、誰も寄せ付けないように隠してしまいたい気持ちに駆られながら、

俺は深い溜息を吐き出した。




「とりあえず、その悠希って奴が、ほのかに懐いてるのはわかった。

 だが、あまり必要以上に近付かせないようにしてくれよ?

 いつ、恋愛感情に発展するかなんて、誰にもわからないんだからな」



『そこはちゃんと考えてるよ。

 二人きりで会う事は禁じているし、透君にも番をしてもらう事になったしね』




透か……。確かにアイツはほのかの幼稚園の同僚で、

一番近くにいるし、何かあれば気付くだろう。

だが……、肝心な時に役に立たなかったり、ヘタレな面があるからな。

過剰な期待は禁物だ。




「あと一週間……、なんとか何も起きないように見張っててくれ。

 帰国したら、その足でお前の両親に挨拶に行く」



『わかった。でも、……出来るなら、早めに仕事を片付けて帰国した方がいいかもね。

 良く分からないけど……、何か嫌な予感がするというか』



「お前の予感か……」




蒼の予感というのは、大学時代から外れなしの的中率大という恐ろしいもので、

それを無視して大丈夫だと楽観したら最後、痛い目を見るのはこっちの方だ。

俺は蒼の助言に頷くと、予定より早めの帰国が出来ないかと思案し始めた。













―― side ほのか。




「あの~……」




透先生の組との合同お遊戯の時間。

今日は粘土を使って皆で遊んでいるところに、透先生の暗い声が割って入った。




「なんで……、『この人』もいるの? ほのか先生」




『この人』……、透先生が口端を引き攣らせて見下ろしているのは、

――なぜか私の組の子供達に囲まれて、一緒に粘土遊びをしている悠希さんだ。

本当は園内に部外者を入れるのは禁止されているのだけれど、

園長先生と悠希さんの実家である秋葉さん家は親戚関係らしく、

特別に許可が出てしまったのだ。

まさか……、ウチの幼稚園の園長先生が秋葉さん家とご親戚関係だったなんて……。

世の中狭いというか、色々都合よく出来ている部分もあるんだなぁ。




「ここなら、皆いるから、ほのかと会っても大丈夫、でしょ?」



「あのなぁ! ほのか先生は勤務中なの!!

 邪魔しちゃ駄目だろ!!」



「……ほのか、俺……迷惑?」



「え~と……、う~ん……」




幸いな事に、子供達は悠希さんに懐いている。

彼の髪を引っ張ったり、一緒に粘土で動物を作ったり、本当に嬉しそうだ。

だから、迷惑……ではないのだけれど、

悠希さん自身は、プロのミュージシャンでお仕事もお忙しいはず。

こんな所でゆっくりしていていいんだろうか。




「あの、悠希さん、お仕事の方はいいんですか?」



「仕事……、今日は、夕方から、だから、大丈夫」



「そうですか。じゃあ、少しくらいなら、良い……ですかね」



「ほのか先生~!! 許しちゃ駄目じゃん!!」



「でも、子供達も懐いてますし、園長先生からの許可もありますし……」




子供達や私達教諭に害がないと、園長先生のお墨付きをちゃっかり貰ってしまった悠希さんは、

透先生に向かって特別パスをひらひらと振って見せている。




「そんな伝家の宝刀見せつけられたら……っ。

 くっ、いち教諭の俺じゃ、追い出せないじゃんか!」



「まぁまぁ透先生。特に子供達に害があるわけじゃありませんし」



「だけど~!!」




それでも何か言いたそうな透先生に、周りの子供達が口を揃えてこう言った。




「「「「「おいだしちゃだめ~!!」」」」」」




私の組の子供達が、大きな声で悠希さんの周りを固め透先生を見上げている。

どうやら、この短時間で相当悠希さんに懐いてしまったらしい。

特に……、女の子達が、ハーレムでも作るように悠希さんにべったりくっ付いている。

さすがプロミュージシャンにして、銀髪美形さん!!




「ふふ、悠希さん、モテモテですね」



「そうなの? ……あ、そうだ。

 ほのか、昨日、君のお兄さんが言ってた件だけど……」



「はい?」



「俺の実家の事……」




あぁ、そういえば、悠希さんのご実家である秋葉家の事について、

蒼お兄ちゃんが何か彼に聞いていたような。

確か、お見合いがどうとか……。

悠希さんは視線を一度下に落とすと、言いにくそうに口を開いた。




「昨日、夜に実家に戻って……確認した。

 そしたら……、俺が見合いをしないなら、他の兄弟とって……言ってた」



「え……?」



「最初は、俺とほのかを結婚させたくて、親が勝手に鈴城さんのとこに行ってたらしい……」



「わ、私と悠希さんを?」




それは初耳だった。

この間の日曜日に蒼お兄ちゃんが悠希さんにお見合いがどうとか聞いていたのは知っているけれど、

まさか、その相手が私だなんて……。

……そういえば、確か前に、……蒼お兄ちゃんから、「もうお見合いする気はないよね?」とか、

確認のように聞かれた気がする。

もしかして、あれは悠希さんとのお見合いの事を言っていたの?

私には獅雪さんがいるのに、新たにお見合いの話が浮上していたなんて……。




「俺は、結婚とか……考えてないから。

 だけど、ウチの親、結構しつこいから……何かあるかもしれない。

 気を付けておいた方が……いいかも」



「悠希さん……」



「俺の兄さんと弟、……結構、手段……選ばないタイプだし。

 もし、父さん達の話にノリ気になってたら、ちょっと、まずい」




そう語る悠希さんの表情は、本当に何かが起こる事を予感させるような憂鬱そうな顔だった。

私には獅雪さんがいる。だから、きっと何もない……。

そう信じているのに……、何故だろう、この嫌な予感は……。


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