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俺様獅子との猛愛エンゲージ!  作者: 古都助
~第一部・俺様獅子とのお見合い騒ぎ!~
19/71

俺様獅子の嫉妬、ほのかの告白

R15指定内、だとは思うのですが……。

うーむ……。




無言のまま、獅雪さんが車道を暫く走らせると、とあるホテルの駐車場に入って行った。

人目につかない奥の方に車を停めると、獅雪さんがシートに体重を預けた。

視界を覆うように自分の目を手で覆い、降りることもせず上を向いている。




「あの……、獅雪さん……」



「……誰だ?」



「はい?」




黙っていたかと思うと、急にポツリと吐き出すように獅雪さんが口を開いた。

誰だ、って……。何を聞かれているのだろうか。

質問の意図がわからず首を傾げた私に、獅雪さんがやっと手を外してこちらを向いた。

それは、先ほどまでの怒りが嘘のように……、切ない光を宿して私を見つめてくる。

もう一度、今度はゆっくりと、問いを重ねてくる。




「誰、なんだ? ……お前の『好きな奴』って……。

 俺の知ってる奴か? さっきの子犬じゃないよな」



「と、透先生はただの同僚ですっ」



「じゃあ、誰だ? 俺はお前の婚約者なんだから、知る権利はあるだろう」



「そ、それは……っ」




思わぬところでこんな風に問い詰められることになるなんて……!

せっかく告白してくれた透先生には悪いけど、今は心から恨みたくなる瞬間です!

獅雪さんが腕を伸ばして、私の座っていた助手席をガタンッと後ろに倒した。

反動で、私もそこに寝そべる形になってしまう。

上から見下ろす形で、獅雪さんが命令してくる。




「言え。そいつの名前を……」



「うっ、そ、それは……、あの……」



「ほのか……、答えろ」




どうしたらいいの……!

完全に退路を断たれ、答えない限りは解放されそうもない。

大人しく言うべきか……、息を呑んで口を開こうとする。




「わ、私の、好きな……人、は……」



「……っ」




獅雪さんの名を口にしようとした瞬間、急に目の前に影が下りて唇に柔らかい温もりが押し付けられた。

まるで獣が噛み付くように、強引に唇をまれ奪われていく。

手首を押さえ付けられ、獅雪さんの身体の重みが上からのしかかってくる。

どこで息をしていいのかわからない。獅雪さんの熱を受け止めながら、互いの吐息と交じりあう音だけが車内に響いた。




「んっ……、獅雪さん、やめっ……んん」



「ほのか……、んっ」




ようやく、獅雪さんの状態が落ち着いたのか、その濡れた唇がゆっくりと離れた。

獅雪さんのキスは、私の言葉を封じるように何度も深く重ねられた。

それはまるで、私の口から別の誰かの名前が出る事を恐れているかのように……。

唇を離した獅雪さんの表情が、どこか艶を含んだような熱を宿し、私を見つめている。




「獅雪さんの、……馬鹿ぁっ……」



「ほのか……」



「貴方が答えろって言ったんじゃないですかっ……。

 なのに、なんで、……こんなことっ」



「自分でもわからねーよ……。お前が白状しそうになった時、

 聞きたくないって、衝動的に……」



「獅雪さんの馬鹿っ、肉食獣っ、俺様男ぉっ」



「ほのか……」




前に獅雪さんに後部座席で押し倒された時のように泣きじゃくり始めてしまった私は、

思いつく限りの暴言を獅雪さんにぶつけ始めてしまった。

そんな私を、獅雪さんが困ったように見下ろす。




「どうしていつもっ、強引で、横柄でっ、自分のしたいことばっかりするんですかっ」



「……悪い」



「貴方に出会ってから、……私っ、振り回されっぱなしじゃないですかっ。

 なんでこんなに……、うぅっ……獅雪さんの馬鹿ぁっ……」



「ほのか、泣くな……」



「嫌っ、獅雪さんに触れられると、私、おかしくなることばっかり……っ。

 もう、いやだ……。こんなに苦しいの嫌です……っ、どうしたらいいのっ」



「ほのか? お前、何言って……」




感情の昂りのままに、私は意味不明なことを泣きながら吐き出してしまう。

それを聞いていた獅雪さんが、右手を伸ばして私を宥めようとしてくれるけれど、

バッと払いのけて、私は自分の顔を両手で覆った。

今の自分を見られたくない。ぐしゃぐしゃに泣いた顔も、赤く染まった顔も……。




「次に会ったら、どんな顔すればいいのかって……、ずっと考えて……っ。

 なのに、急に担ぎ上げるしっ、こんな所でキスまでするしっ……」



「ほのか、落ち着けっ」



「返してくださいっ、返して……っ」



「俺とのキス、そんなに嫌だったのか、お前……」



「違いますっ、私が返して欲しいのは……っ、

 うぅっ、獅雪さんの鈍感っ」



「……はぁ? 鈍感はお前の方だろうがっ。

 ついでに振り回されてるのも、俺の方だ!」




獅雪さんが一度は引きかけたものの、私からの鈍感呼ばわりにピキッと青筋を立てて手を伸ばしてきた。

顔を覆っている両手を無理やり引き剥がされたせいで、見られたくない部分が露わにされてしまう。

薄暗いし、頼りになるのは車内の淡いライトの明かりだけ。

どうか私の顔の色が真っ赤だということがバレませんように……。

そう祈ったけれど、獅雪さんは気付いているのかいないのか、私の顔にぐっと近づいてきた。




「お前に好きな奴がいるって聞いて、俺がどれだけ焦ったかわかるか?

 婚約までしてお前を縛ったんだ……。今更、他の男に黙って渡せるわけがないだろうっ」



「だからっ……、なんでそこで、他の男の人だって思うんですかっ。

 最後まで聞かないで勝手なことばかりしてっ」



「ほのか……?」



「……さん、なのに……」



「は?」




もう抑え込むのは限界だった。

獅雪さんが目の前にいるだけで、その瞳に見つめられるだけで……、こんなにも胸が熱い。

早く言葉にして吐き出さないと、身の内の炎に焼き焦がされて死んでしまいそうだ。

余裕もなにもなかった……。

一瞬身を引きかけた獅雪さんの胸元をぐいっと掴むと、勢いのままにその唇に自分のそれを押し当てた。

さすがの獅雪さんも、予想外の私の行動に引っ張られた反動で前に倒れ込んでしまった。




「ほのか、お前……、んんっ」



「んっ……」




ほんの少しの時間。私は自分から獅雪さんの唇を奪うと、すぐに離れた。

涙で濡れた眼差しをキッと獅雪さんに向け、掴んでいた胸元にぐっと力を入れる。




「私が好きなのは……、貴方ですっ!獅雪さんの馬鹿ぁ!!」




大声で叩きつけるように想いの丈を獅雪さんに向かってぶつけると、

私の迫力と大声に吃驚した獅雪さんは、意味を理解出来ずに固まってしまった。

そして、じっと顔を見ていると、

次第に今度は獅雪さんの顔が一気に湯でダコ状態に赤くなり、口元を押さえた。

多分、私の口から自分の名前が出てくるなんて思っていなかったんだろう。

嫉妬を向けていた相手が、まさかの自分自身だったのだから当たり前といえば当たり前なのだが。




「お前……、嘘、言ってんじゃない、だろうな……」



「人の勇気を振り絞った告白を、なんだと思ってるんですかっ。

 もういいです。取り下げます。なかったことに……きゃあああっ」





疑われるのは心外だと頬を膨らませた私を、獅雪さんの力強い腕が抱き締めてくる。

言葉にならない想いを伝えようとするかのように、痛いくらいに腕の中に抱かれた。




「獅雪さんっ、苦しっ……」



「……後で嘘だったとか、からかったとか言うなよ……。

 俺を好きだって言ったんだ、絶対なかったことになんてさせないからな……っ」



「嘘じゃないって、何度もっ……獅雪さん、もう少し力緩めてっ」





感極まった獅雪さんから、やっと腕の拘束を解かれたかと思うと今度はコツンと額同士を当てられた。

逸らすことも出来ない至近距離、獅雪さんが喋ると、すぐ近くに吐息を感じられるほど……。




「お前は俺を振り回す天才だよ……、本当。

 こんな熱烈な告白をされることになるとはな……」



「本当は……、まだ言うつもりは、なかったんです。

 だけど、獅雪さんがあんな風に聞きだそうとするから……」



「仕方ないだろう? 俺がこんなに苦労してんのに、急に好きな奴が出来たとか聞いたら……。

 すぐ言わないお前が悪い」



「獅雪さんだって……、言わなかったじゃないですか?」



「ん?」




獅雪さんと恵太さんの会話、あれを私が聞いていたとは知らないからか、不思議そうに首を傾げた。

自分だって、私のことを好きだってこと、いまだに言ってくれないくせに……。

私の方から言わざるをえない状況に追い込んだ獅雪さんはズルイと思う。




「恵太さんとの会話、聞いたんです。

 獅雪さんが、私のことを好きだって……」



「お前、あれ聞いてたのか? どこからだ」



「蒼お兄ちゃんとの通話が終わって、戻って来たらドターンて音が聞こえて……、

 恵太さんと獅雪さんが二人で話してる会話が聞こえてきて……」



「なるほどな、あのへんからか……」



「盗み聞きは悪いことだって思ったんですけど、聞こえた内容が、気になってしまって」





最初は聞き間違いかと思った。

だけど、二人の会話に耳を澄ませていると明確な事柄が聞こえてきてしまって……。

獅雪さんが私を好きなんだってことを知ってしまったのだ。

まぁ、それが私の気持ちを大きく揺るがすきっかけになってしまったのだけれど……。

多分、獅雪さんの意図を知らないままだったら、まだこの想いはゆっくり進行していたかもしれない。




「怒るなよ。俺だって、お前に怯えられて結構へこんでたんだ。

 いつ拒絶されるか、婚約だって、お前が本気で親に訴えて解消に持ち込んだらどうしようかってな」



「婚約は、最初の時に大反対しましたけど……」



「あれは、心底俺を嫌ってのことじゃなかったから、蒼が解消にならないように止めてくれてたんだよ。

 まだ、お互いのことをよく知ってないのに、バッサリ切るのは勿体ないとかなんとか言ってな」



「そうだったんですか……」



「大体、あんなにあからさまに俺を怖がって怯えてたお前に告白してなんになる?

 どうせ尻ごみして、すぐに逃げちまうだろ」





確かに。獅雪さんに出会った当初なら、こんな超絶美形様に告白されるなんて勿体ない!と

全力でお断り申し上げていただろう。自分が獅雪さんの相手なんて不相応すぎるもの。

それを考えれば、獅雪さんの判断は正しかったんだと思う。




「お前を捕まえるためには、時間が必要だと思ったんだよ。

 蒼が許す限りは、お前に近づく事が出来るしな。

 だから、耐えに耐えてここまで我慢してきたわけだ」



「獅雪さん……。……その気持ちは嬉しいですけど、

 なんで私だったんですか? 獅雪さんとはお見合いの場が初めて対面した場所でしたし……。

 それだけじゃ、私を好きになる理由がわかりません」



「……はぁ、……これだもんな。

 お前さ、本当に思い出さないか?」



「なにをですか?」



「……少しは考えろ。とにかく、その話はまた今度な。

 今は、それよりも……」




ぎゅっと、今度は優しい抱擁で背中に腕を回され抱き締められる。

その腕の温もりに身を預けながら、私は獅雪さんの言葉に耳を傾けた。




「人生で一番幸せかもな。お前が俺の傍にいる……。

 ははっ、夢だったらマジで切ないよな。……お前は確かにここにいるよな」



「はい……傍にいますよ」



「俺の事を好きだって言ったのも、現実だよな?」



「疑うなら取り下げます、って、さっき言いましたけど?」



「もう一度、俺を安心させると思って、な? 頼む」





そんな耳元で優しく囁かれたら、そのお願いを聞かないわけにはいかないわけで……。

私は顔を引くと、獅雪さんの瞳をしっかりと見つめた。

夢じゃない。この言葉は紛れもない私の本心……。




「好き。獅雪さんが……大好きです」



「もう一回……」



「言いました。二回も言いました! もう恥ずかしいから嫌ですっ」



「こら、逃げるな。まぁ、暴れようが喚こうが、もう離してやる気はないけどな?」



「獅雪さん、本気で怒りますよ? ……んっ」




膨れる私の頬を包んだ獅雪さんが、それを宥めるように優しいキスをくれた。

啄ばむように触れる感触が、私を大切にしようと気遣ってくれていることがわかる。

俺様でどうしようもなく自分勝手な肉食獣なこの人だけど、

彼のくれる温もりに、どうしようもなく深い安心感と愛情を感じるのは事実だから、

私が彼を好きになってしまった以上、もう逃げられないんだろうな。

獅雪さんのキスに応えていた私は、大事なことを聞かなければと唇を離した。




「どうした?」



「獅雪さん、私にばっかり言わせてますよね?

 そろそろ、貴方の言葉もちゃんと聞きたいんですけどっ」



「キスしてもわからないわけか?」



「それとこれとは話が別です。

 それに、私が獅雪さんの言葉で、ちゃんと聞きたいんです」



「じゃあ、俺が言ったら、ほのかもまた言えよ?

 俺が好きだって……」





なんでそうなるんだろう。

私はもう何度も獅雪さんへの想いを口にさせられているのに……。

だけど、獅雪さんからの言葉も聞けるなら、恥ずかしいけど頑張って耐えよう。

私が頷くと、獅雪さんが愛おしそうに今度は額にキスをくれた。

そこから徐々に下にキスが下りてきて、私の耳朶に触れたところで動きが止まった。




「ほのか……、俺は……お前が好きだ。

 会う度に、この想いは歯止めが利かないくらい溢れて大きくなっていく。

 なぁ、この責任、ちゃんと取らせるからな?」



「……」



「ほら、ちゃんと言ったんだから、今度はお前の番だろ?

 ……ん? ……ほのか? ほのか!?」




耳元で発された獅雪さんの熱烈な告白は、一応心の準備をしていたものの……。

あまりの刺激の強さに、私は再び許容量オーバーの熱を感じてふらっと意識を手放してしまった。

獅雪さんが私の頬を叩いて、必死に呼びかけてくるのが遠く聞える……。

だけど、ごめんなさい。私に耐えられるのはここまでのようでした。がくっ。

 




やっと両思いになりました。個人的に書いていて……、凄まじいバカップルぶりに涙が出そうでした(笑)

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