父の思い
…ばふっ…
「もームリ。疲れたぁ。」
そんなことをつぶやいたら、うつぶせに寝転がった布団に吸い込まれた。
結局、学校に着いたのは1時間目が始まった頃。さすがにここまで遅れたことは無かったので、放課後、下校時刻まで先生のお説教フルコースになってしまった。休み時間には相当うわさが広まっていて、廊下を歩くたびに散々からかわれることに…。
ちなみに、昼ご飯は夏佳たちに恵んでもらいました。
学校でも、今朝の父さんの姿が離れなかった。何もしないで、テーブルについていたところが。なぜ、あんな時間に家にいたのかはまだ分かっていない。ふと、気がつくとそのことを考えていたけど、結論は出ず終いにおわってしまった。
ぐうぅぅぅ~
時刻は7時30分。道理でおなかが空いたはずだ。幸い、今日は少し、時間に余裕がある。簡単なものでも作ろうか、と思ってキッチンへ降りる。
我が家のキッチンの手前には、ダイニングテーブルがある。そこで西日を受けて黒くのびた陰があった。近づいて見てみると、そこにおいてあったのは…
弁当箱だった。
私が、毎日毎日学校に持って行っていた、弁当箱。包み方が、綺麗にしようとして失敗してしまったようで。それをほどくと、懐かしさがわきでてくる。二段弁当のふたを開けると、一つには白いご飯と、梅干し。もう一つには、野菜炒めと卵焼き、プチトマトが入っていた。野菜炒めも卵焼きも、お世辞にもおいしそうとはいえない不格好な見た目だ。
ここまできて、疑問が浮かび上がった。
「誰が、これをつくったの…?」
家の鍵を持っているのは、私と父さんだけ。私は作っていないし、だとすると…、父さん?
まさか、弁当持っていくの、忘れたのかな?そう思ってキッチンを覗くと、父さんの弁当箱は無かった。母さんがたまに使っていた弁当箱は、置いたまま。
じゃあ、これは、私に?
父さんが?
どうして…?
疑問が、次々と浮かんでは消える。
ねえ、もしかして、父さんは許してくれたの?わがままを突き通した、自分勝手な私を?ごめんね、ごめんなさい。ずっと、意地張ってた。父さんが許すまでは、絶対に許さないって。
わがまま言って、ごめんなさい。
もう、私の家族はあなたしかいない。だから、許して。
また、何も気にしないで笑って喋りたいから。