新たな日々 Part.Ⅱ
ジリリリリリリ、ジリリリリ…
ガシャン!
……………Zzz…………
ジリリリリリリ、ジリリリリ…
バンッ!
あー、もううるさーい!
寝かせてよ!
…あ、弁当!起きなきゃ。
眠い。時計の針は、7時58分をさしている。最近起きている時間より、30分も早い。でも、
「弁当、作れないよね…?」
まず、朝ご飯すらない。
どう作ればいいのかも、わからない。
やばいなぁ。
とりあえず、家を出る支度をして階段を降りる。
ダイニングを見ると、そこには、父さんがいた。
何で?どうしてここに?いつもなら、この時間にはいるはずがない。だって、普段はとうに家を出ているのだから。
思わず、自分の部屋に戻っていた。
パタン…
ドアが閉まる音が、遠く聞こえる。なぜ?どうして?そんな言葉だけが、頭の中を駆けめぐっている。
一度、深呼吸。
さっきよりいくらか落ち着いて部屋を見渡すと、ふと、何かに目が止まった。よく見ると、それは壁掛けの時計。ああ、これは、小学校の入学祝いにって、母さんが買ってくれたんだっけ。中学校に入ったときには、きれいで、大人っぽいペンをもらった。でも、高校に入学しても、大学に行っても、母さんからの入学祝いはもらえない。もう、一生。
そう考えると、悲しさがこみ上げてきた。涙が一粒こぼれると、もう限界。
「うっ‥うっ‥なんで、母さん…ひっぐ‥」
止めることなど、できなかった。後から考えてみると、母さんを亡くしてから泣いたのはここれが初めてだった。
「ふぇっ…ぅわぁぁぁん…っ!」
大切な物は、失って初めて気づく。もう、すべて手後れになってから。
そんなこと、知らなくてよかった。
母さんと、ずっと一緒にいたかった。いろんなことを知りたかった。
「ひっ…ぐす‥」
ようやく落ち着いて顔をあげると、真正面に時計があった。
「ぎゃぁぁぁっ!なにこれ!やばいっ!」
針が指していたのは、8時52分。
正真正銘、完全な、遅刻!