日常の終焉
「…っと、これで連絡は以上。あぁ、美浜は掃除が終わってから、職員室に来て。内容は…、わかってるだろう?」
「では、お終いっ!号令!」
「きをつけー、れい!」
「さよーならー」
「うへぇ、まさかの呼び出しかよ」
うう、ここ一週間の連続遅刻がこんな形で返ってくるなんて…。気をつけようと思っても、朝は起きられないからしょうがないじゃん。
「昨日も、一昨日も言ったわよ、そのこと。あなたがちゃんと来れなかったんだから、当然っちゃあ、当然の結果だね。」
「夏佳が冷たいぃぃー」
「しょうがないって思っても、そう思ってるだけじゃ改善しないでしょ?早く掃除終わらせて、大人しく職員室行きな。」
「私の言ったことにリアクションしてよ~。…、はいはい、行きますって。部活遅れるって、部長に言っておいてくれる?」
「オッケー。」
はぁ、、、。家に電話が行かないだけましか。
私は、父さんと進路のことで大喧嘩して、その後半年以上、口を利いていない。また電話が、しかもこんな内容の電話が来たら、あの人は絶対に爆発する。
今も、私は父さんのことが許せない。
発端は、私が志望校を父さんの希望通りにしなかったこと。父さんの望みは、県立の進学校に行くこと。私の希望は、私立の部活に熱心な学校に行くこと。
結局、私が啖呵を切って押し通したけれど、その日から一言も口を利かず、顔すら合わせなくなった。
「はい、掃除終わりー!お疲れ様!」
「ありがとうごさいました。」
憂鬱だぁ…。職員室。
「失礼します。2年3組、美浜です。」
「入って。」
2年生の先生の机は、職員室の真ん中あたり。つまり、先生方に見られまくる位置である。最悪だーっ、、。
「さて、お前、何でこんなに遅刻してるんだ?前…、も、まあ少しはあったが、最近多すぎだぞ?」
「すみません。最近、寝坊する事が多くて。」
「寝坊?部活で疲れて、か?」
「それもあるんですけど、そこに宿題が重なって、寝る時間が削られてしまうんです。」
「でも、宿題はさすがにどうしようもないな。じゃあ、部活をー、そうだな、一週間
プルルルル!プルルルル!
あ、ちょっと待ってくれ。」
「はい、海神第一中学校です。…、えっ?!はい、こちらにいますので、すぐに向かいます。」
ガシャン。
振り向いた山ちゃんの顔は、今にも倒れそうなほど、真っ青だった。
「美浜、ついてきなさい。」
「え?なぜ、どこに?」
「君のお母さんが、交通事故に遭われて…。今、意識不明の重体だそうだ。病院に、行こう。」
うそ、で、しょ?
呆然と立ち尽くした私を、山ちゃんが車に乗せ、病院に着いた。
気づくと、お医者さんが出てきて、事故のことを話してくれた。
「お母さんは、買い物帰りの横断歩道で、信号無視の自動車にはねられたようです。救急車できたのですが、ここについて30分後、午後4時53分に亡くなられました。」
「うそ、でしょ?うそだよね、母さん、母さぁぁんっ!!」
なぜ?どうして、母さんなの?なぜ、どうして…。
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こうして、彼女の日常は終わりを告げた。