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捨てられた王子たち  作者: ふたぎ おっと
第1章 おとぎの国からこんにちは
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4.「さわって」オーラ

4.「さわって」オーラ


 家に帰りシャワーを浴びた後、プログラム作りに取りかかる前にまず明日の準備を先にする。


 鞄の中身を入れ替えようと口を開くと、今日夏海にもらったプレゼントが出てきた。


 …………。


 さっきは無理矢理自分を納得させようとしていたけど、やっぱりもやもやする。

 普通に考えて、荷物が増えたら重くなるはずだ。夏海や柳さんの反応が普通。

 なのに、どうして私には軽く思えるんだろう。言うほど私は力持ちでもないし、ちゃんと重量感覚はあるつもりだ。疲れてるならなおさら重く感じるはずなのに。


 それともう一つ懸念事項があった。


 確かに荷物が増えたら重くはなる。だがしかし、新学期初日の今日は、2時限分しか授業がなく、しかも初回なので教科書とかもないため、ノートを数冊と空き時間に読む用の本を一冊と筆記用具、あとは財布とかポーチとかを入れているだけだった。つまり、もともとそんなに重い荷物でもなかったのだ。

 夏海からもらったプレゼントはそれなりに重量感はあったが、それが増えたからと言って持つのがしんどくなるような重さにはならない。

 だからさっき二人に持ってもらったときに、「こんなに重い」「こんな荷物」って言葉が出てきたのは、多少なりとも違和感を感じた。


 考えれば考えるほど、迷宮にはまっていくような感じだ。


 とりあえず私は、もう一度鞄を持ち上げてみた。


 ……うん、軽い。


 次にプレゼントを鞄の中から出す。

 プレゼント自体はそれなりに重量感があった。というか、鞄よりも重い気がする。

 更にもやもやしたが、先にプレゼントがなくなった鞄を持ち上げてみる。

 

 ……プレゼントが入っていたときよりも重いというか、今朝持ったときと同じくらいの重量感だ。


 何でプレゼントを鞄に入れたときだけは軽く感じたのだろうか。私がおかしいのかな?

 本当に今日は疲れているのか、寝不足なのか。

 いやでも、昨日たっぷり寝たし、朝だって爽快に起きたはずだ。


 私はプレゼントとにらめっこをする。

 馬鹿げているような気もするが、このプレゼントに何か関わりがあるんじゃないかと思う。

 夏海は一体私に何を渡したのだろうか……。


 この違和感の原因が本当にプレゼントかどうかも分からないが、私はとりあえず包みから中身を取り出す。


 まずランプ。

 プレゼントの重さはほとんどこれによるものだと思う。

 あれ? このランプ、昼間見たときよりもやたらと光沢を放っている気がする。特に側部の赤い帯状の部分がきらきらしているような。まるで「さわって」って言っているような輝き。


 ……やっぱり私今日おかしいのかな?


 ランプから目をそらして、机に置く。この光沢のことは、後で考えよう。


 次に指輪。リングの上についたサファイアの石もまた、青みが昼間よりも深くなっているような気がする。

 私を吸い込みそうな深い蒼色。

 昼間見たときは深層水のような深みだと思ったけど、日が沈んでから夜空になる前の群青色に近い色合いになっている。ランプのような「さわって」オーラは放ってはいないが。


 そこでふと「アラジン」の話のストーリーを思い出す。


 貧しい少年アラジンは、お城のお姫様を助けるために、ランプの魔法使いにお願いして悪いやつをやっつける。そしてお姫様と結ばれてめでたしめでたし、だったよね?

 

 このランプの「さわって」オーラは実は中に魔法使いが入っているとか? ランプの側部をこすれば中から出てくるとでも言うのだろうか……。


 いやいや、そんなことが起こるわけないよな。どれだけめでたい思考しているんだ私は。


 でもなんだか試してみたい気もする。だが、本当に出てきたら、色々危険な気がする。


 そこでもう一度指輪に目をやる。

 これもこれで私を惹きつけているのだが、でも指輪って魔法使い関係の話あったっけ?


 あったとしても、この指輪がそう言うわけがあるはずもないのだが。


 ただ、最初にランプをこすっていきなり規格外の魔法使いが出てきたら腰抜かしそうなので、先に指輪の石をこすってみることにする。


 これに何の意味があるのかは全くもって分からないが。


 ちょっとドキドキするが、きっと何も起こらないだろうしと思って指輪のサファイアをこすってみた。


 …………。


 ほら、何も起きないじゃないか。うんうん、そんな魔法なんて非科学的なことが起こるわけがない。


 ほっと息をつく。なんだかとことん馬鹿げたことを想像して、無駄にドキドキしてしまった。あーもう、あほらしい。もう、構わないことにしよう。


 そう思って指輪をローテーブルに置こうとしたとき、



「!?」



 いきなりサファイアの指輪が熱くなったので、私は思わず床に指輪を落としてしまった。

 え? どうしたのいきなり?


 落とした指輪を眺めていたら、いきなりサファイアの中心から煙が立ち上がる。それはすさまじい勢いで一気に広がり、部屋中を覆った。


 私は煙の圧力に押されて、壁にへばりつく。


 え、え? これやばくないか!?


 熱くなった指輪から火が上がったとか? それの煙なの!?

 ということは火事ってこと!?

 火事じゃなくてもこの煙って、火災報知器とかやばいんじゃないの!?

 窓、開けないと……!

 いや、この場合、ドアから逃げるのが先か!?


 いきなり起こったことに、一人パニックに陥って結局何をするのが先決か判断できずに動けないでいたら、部屋中を覆っていた煙は薄れ始める。


 薄れてきた煙の中にうっすら人影が映る。


 この煙に乗じて人が入ってきたのだろうか?

 窓の方に目をやると、窓は何も動いていない。

 そして視線を戻すと、"それ"が窓から来たのではないとなんとなく理解する。


 煙の中から出てきたのは、頭に紺色のターバンを巻いた背の高いアラブ人男性。


 ただ、よくテレビで見るような中東の人っぽい感じじゃなくて、腹巻きのようなもので腰で留めている黒いパンツを穿いただけの上裸の上に水色の裾の長い上着を着た姿は、いかにも「アラビアンナイト」に出てきそうな様相だった。


 ”それ”の足もとには、夏海からもらったサファイアの指輪。


 つまり、指輪から登場したってこと!?




 ――――そして冒頭に戻るのである。


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