表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた王子たち  作者: ふたぎ おっと
第1章 おとぎの国からこんにちは
1/112

0.プロローグ

0.プロローグ


 私はどうすればいいのか対応出来ずにいた。


 普通はびっくりして腰抜かしたり、その場を逃げようとしたりするだろう。

 でも私は対応できずにただ“それ”を眺めていた。



「あー肩凝った。何でわざわざあんなところに閉じこめられなきゃならないんだ」



 “それ”は何やらぶつぶつと文句を言いながら、首を左右に曲げたり肩を回したりしている。まるで同じ空間に人がいるとは思っていなさそうだ。

 ……いても関係なさそうだが。


 私はどうすればいいか、内心パニックになっていたが、目の前にいる“それ”は明らかに不審人物。いや、不審物体? 分からないけど、どうにか自分で何とかしなくては。

 私は視界の端に入った殺虫スプレーに手を伸ばす。何故部屋に殺虫スプレーがあるかは気にすることなかれ。



「で、俺を呼んだのはお前か――っておい!?」


 相手が油断している今こそ撃退のチャンス! と思って慎重にスプレーの先を相手に向けていたのだが、いきなりこっちを向いたので、私はさらに焦ってしまい、勢いよくスプレーを吹く。


「おいっ何しやがる!? 人に向けるものじゃないだろう!!」

「きゃあっ動かないでよ変態!!」


 確実にしとめたと思いきや、“それ”は命の危機を感じてか、咄嗟に横に避けたので、スプレーを持つ手をそちらへ向ける。


「誰が変態だ、おいやめろ!」

「もう動かないでよ――っげほっげほっ」


 あまりにも機敏に動く“それ”を追いかけてスプレーを吹いていたら、一人暮らしの8畳の部屋が一気に殺虫スプレーで充満し、その空気の悪さに咳き込んでしまう。それが想像以上に息苦しく、スプレーを持つ手を下ろし思わずしゃがみ込んでしまう。

 窓を開けなくては……。


「お……おい、いきなりどうした。大丈夫か?」


 “それ”はいきなり咳き込んだ私を心配してか、こちらに寄って背中をさすってくる。


 いや、大丈夫も何も、おまえが原因じゃないか、と自分で殺虫スプレーを撒いたのを棚に上げて、“それ”を睨みつける。

 が、それよりも苦しかったので、徐に指を窓の方に向ける。


「窓、窓を開ければいいんだな?」


 “それ”は私の言いたいことをすぐさま理解すると、私が頷くよりも先に手をひらりと窓の方に向ける。



 すると、窓がいきなり開く。



「待ってろ、すぐに空気入れ換えるから」


 更に“それ”は私を安心させようと優しく背中をポンポンと叩くと、再び窓の方に腕を伸ばす。何をするのかと目を向ければ、“それ”は手のひらを上に向けて、手首を動かした。たったそれだけのことなのに、いきなり風が窓から吹き込んでくる。


「!?」


 それが余りにもすごい勢いだったので、私は思わず目をつぶり、身を固くする。



「大丈夫だ。もう終わった」



 耳元で囁かれたと思うと、“それ”の言うとおり、突風は一瞬で収まり、殺虫スプレーで充満していた部屋の空気が一気に清浄された。


 いったい何が起きたのか、現実では有り得なさすぎることがいっぱいで、私は驚きで見開いた眼を“それ”に向けた。

 だが“それ”を見たとたん、こいつなら今起きたことが普通に有り得そうだと納得してしまった。



 何故なら“それ”は、有り得ない登場をしたのだから。



 まるでアラビアンナイトに出てきそうな格好をした“それ”は、それだけでも十分変態で不審者なのだが、なんと“それ”は今床に転がっているサファイアの指輪から登場したのだった。



文章、内容にご意見あればよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ