後日談。
眉間に皺を寄せ不平不満を全力で表現するお父さんとは対照的に、ヤツは嬉しくて仕方がないといった空気を振りまいていた。
「あなた、ふたりは婚約者なんでもすもの。
遅かれ早かれ、こうなることはわかっていたのでしょう?」
お母さんは笑顔でお父さんの腕に抱きつき、子どもにするように叱る。
お母さん、あたしの心情としてはお父さんにもっとバシッと言ってもらいたいところなんですが。
「だがなぁ」
理解はしてるけど納得はしていないといったふうにお父さんは呟いて、空いている手で顎を撫でる。
「俺はまだ、おじいちゃんになる心の準備というものがだな」
ちょっと待って。
どうしてそこで、あたしに子どもが出来ることが前提の話になるのよ?
確かに世間はクリスマスムードで甘い雰囲気になってるけど。
そしてあたしはヤツとお泊りデートだけど。
だけどどうしてそうなるの?
「安心してください、おじさん。
俺はまだ十七歳ですし、高校くらいは卒業させてあげたいと思ってますから」
ヤツは事実上の、ヤるけど子どもは作らないよ宣言をし、あたしの両親に笑みを向けた。
「それなら安心ね」
お母さんは「でも」と言葉を続ける。
もの凄く嫌な予感がする。
「避妊道具も絶対とは言えないのよねぇ。
もし失敗しても、認知してくれるなら構わないわよぉ」
……なんかもう、返す言葉が見当たらない。
「失敗した暁には、責任は取らせていただきます」
むしろこの場合、そっちの方が成功なんじゃないかって思ったあたしは悪くないはずだ。
「行こうか」
ヤツはあたしの腰に手を回し、あたしの両親に頭を下げてから歩くように促してくる。
売られていく仔牛の気分だよぉ。
某テーマパークの中にあるホテルで、傍から見れば甘い一夜を過ごしたことは……言うまでもない。
ついでに、次の日は目一杯楽しむつもりだったあたしの予定が崩れたことも。
(終わった)




