お姫様と体育授業
プールとか…私にどうしろと!!
「明日からプール授業だからな~」
入学してから3ヶ月が経ったある日。
星羅に最大のピンチが訪れた。
それは、水泳と言うなの授業だ。
「え…」
星羅は目を見開く。
「どうかしたのか?」
「へ?いや…なんでもない」
話しかけてきたのは、クラスメイトの石谷彰だ。
席が隣だというのもあり、すぐに二人は仲良くなった。
今では一緒に行動をする仲である。
そんな彰に隠し事をしている。
―――――私…どうしたら良いんだろう?
「はぁ…」
寮へ戻る途中、立ち止まる。
「プールとか…初めて聞いたんだけど?」
入学する前、お母さんは水泳とか無いからとか言っていたのに。
「あるじゃん…普通にあるんだけど」
もう泣きそう。
なんて考えていたら、肩を掴まれる。
「!?」
「しっ!俺だよ…星斗だよ」
「せ…むぐ」
「だから静かにしろって」
「むぅ…。ぷは!…い、今までどこに行ってたの!?」
「どこって…秘密♥」
「秘密♥じゃないっての…」
「でも良いじゃん?」
「何が」
星斗はニコリと微笑む。
「私の顔で笑わないでくれる?キモイ」
「そうゆうこと言わない!」
「…で、なんで良いの」
「逆ハレーム」
キャハなどと言っている。
「彼氏がいつまでも出来ない星羅が可哀想でさ…」
「…」
「痛いんだけど」
「失礼すぎるでしょ」
なんて言い合いをしていると後ろから声が聞こえて来た。
「やば!」
「ちょ!?」
「さっさと隠れろ!」
茂みに星斗を無理矢理隠れさせる。
「星斗?」
「せ…先輩」
「一人で何してんだ?」
「い…いえ」
急いで振り向くと唯世がいた。
「そう?なら帰るよ??」
「は…はい」
後ろを静かに見る。
「そこに何かあるの?」
「え…?なんでも無いですよ~」
あははと笑って誤魔化す。
「なら良いけど」
体育当日。
「水が怖くて入れない?」
「は…はい」
凄く怪しんでいるのか星羅を睨み付ける体育の先生。
「海で溺れてしまってから…怖くて…」
「ふーーーーーん。そうか、それは仕方ないな」
なんだかアッサリしている先生だ。
そんな事を思った。
「…で、暑くないのか」
「え?ぜ、全然」
ジャージの上を着ている星羅を嫌そうな顔をして見下ろす彰。
「そ。ほい」
「ん?」
「タオル持ってて」
「はーい」
彰は星羅にタオルを投げる。
「…男子だけのプール授業は暑苦しいなぁ…」
蒸し暑い中、授業が終わるまで涼しい顔で我慢していた。
「星斗!」
「ん?…先輩??」
2年生専用のコースに唯世がいた。
「そっか。あの人2年生か…」
静かに立ち上がると唯世の近くに寄る。
「なんですか、先輩?」
「ん」
「ん?」
何も言わず手を出された。
「ん」
「なんです?」
「良いから手」
「はぁ…?」
渋々と手を差し伸べる…が。
「えぇ!?」
いきなり手首を掴まれ引っ張られる。
「ぷはぁ!な…何するんですか!?」
「何…ってプールに入れてみた?」
「なんで、やった本人が疑問形で俺に聞くんです?」
すると先生がやって来た。
「なんの音だ?」
「さぁ?気のせいじゃないっすか?」
「なら…良いが」
そして去っていく。
「気のせいじゃないでしょう…」
「もう、ジャージの上脱ぎなよ」
「えええ!?無理です。真面目に無理ですから」
とりあえず、唯世から離れようとしたが、なかなか離れなかった。
「力弱いね?」
「そ…そうですかね?」
「唯世…って星斗?」
バシャバシャと暴れていると、彰が来た。
「あ…彰?」
「お~彰。ヤッホー」
星羅はビックリして見上げる。
唯世は手を振っている。
「ヤッホーじゃ無いだろ」
唯世の頭を蹴る。
「ほら…手」
「う…うん」
彰が手を差し伸べて来る。
それを星羅は掴む。
「ベチャベチャだな…」
「んう…」
「風邪ひいたら困るし、ちゃんと拭いとけ」
「でも、彰の体拭くタオルが…」
「大丈夫だって。もう一つあるし」
彰は頭を軽く叩く。
「あれ、茜也お前…」
「細川先輩に引っ張られて落ちました」
「アイツ…とうとう後輩イジメを…」
―――――先生…突っ込む所違うと思う。
「寮に戻って着替えて来て良いぞ」
「あ…はい」
星羅は早足で寮へと戻った。
「はぁ…なんでこんな目に遭うかなぁ?」
星羅は溜め息を吐きながら、着替える。
「何言ってんの?」
「うわぁ!?」
ビックリして後ろを振り向く。
「せ…先輩」
「何驚いてんの」
「音何も聞こえなかった…んですけど?」
「普通に入って来たよ?」
星羅は急いで服を着る。
「なんで…そんなに慌てるんだい?」
「別に…意味は無いですけど…つい」
唯世は星羅の隣に座る。
「な…なんですか」
「なんでそんなに距離を開けるの」
「そんなつもりは…無いですけど」
「いやあるでしょ」
「無いですって」
勢い良く星羅に近付くと星羅はビックリしてベッドから落ちる。
「う…」
腰を打ったのか起き上がれない。
「なーにやってんの」
「ビックリしちゃって」
「ほら…」
「どうも…ってうわぁ!?」
いきなり抱きつかれる。
「なんですか!?」
「いや別に」
なんだかパッとしない返事をされたと思えば笑顔で離れる。
これからとんでもない事になるとは知らずに…。