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3-5行き来する火の玉⑤
玉も別れたがっていました。2人きりになりたいのは男女では自然のことです。
しかし、サイレンの音がその空気をかき消しました。少年の後ろ、岡田から鳴ります。それは平和ボケしたこの地域に緊張感を蜘蛛の糸のように張り巡らします。
ボヤ騒ぎがあったようです。岡田にある成願の火事です。繊維工場です。
消防車などが鳴り響き、住人たちはざわざわと顔を窓から覗かせます。薄い黒煙がたしかに立ち上っているのです。
少年は恐れおののきました。そこは少年の家の近くだったのです。家事を間近で経験するなんて初めてなのです。
サイレンの音に釣られて家の近くまで戻ると、祖母が名前を呼んで迎えてくれました。近くの小学校の学生は集団下校しており、異様な雰囲気でした。
中には異質な体験にキャッキャっとふざけあう学生もいました。事実、そこまで大事ではないのです。死人も出ず、飛び火もせず、翌日には忘れ去られる程度です。




