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1-1始めに①

・1:初めに


それは投げられたのです。それは高く高く遠くまで。電線を高飛びで飛び越えるように飛翔するのです。

 そのままアスファルトに叩き落とされたのがダンゴムシでした。音もせず姿も確認できず、そのまま音信不通となりました。もっとも、知人でもないし連絡先も知らなかったので気にも止めませんでした。

そのまま少年はケラケラ笑い転げます。「とんだとんだ」と笑顔が残酷でした。魔女がまるまる太った人間の兄妹を頂戴するかのようでした。

ダンゴムシから見た少年は、童話におけるお菓子の家に迷い込んだ人間の兄妹から見た魔女みたいなものでしょう。命を刈り取る鎌は少年の手中に収められているのでしょう。その何も持っていない手は確実に小さな生物を刈り取ります。

少年はまだ小学校に上がる前でした。なぜそういう表現かというと、幼稚園か保育園かの区分以上にややこしかったからです。少年は養護学校に入っていたのです

皆が幼稚園に入るくらいの時分、少年はそういう施設に入りました。理由として、全く話さなかったからです。家で話しているところを見たことがない親が、特別支援学校に入れたのです。

岡田の家から樽井の養護施設までせっせと自転車を運ばせる母親でした。自転車の後ろに座って風をきる少年でした。母親は足がパンパンに膨れる毎日です。鍛えられた人桃は太く、競輪選手のごとくでした。

足の太さは後天的なものもありますが、主に先天的な遺伝を原因も持ちます。母親は幼い時から足が太いことを嫌がっていました。女性だからです。

足が太いほうが運動には便利と世間では言います。しかし、母親は運動が嫌いな引きこもり気質です。自転車も早くはありません。

それでも自転車での送り届けが足腰を強靭にさせました。子育てはたくましくないと務まらないと世間は言いますが、自転車1つでさえその通りです。それがあったからか、後に母親は自動車免許を取りに行きますが、それは関係のない話です。

母親の心配を嘲笑うかのように、少年は養護学校ではよく喋りました。同じ年頃の子供たちが多いからでしょうか? 母親は元気に話す息子を見てホッと胸をなでおろしました。

「めだかのがっこうはかわのなかー、そーとのぞいてみてごらん、そーとのぞいてみてごらん、みんなでおゆうぎしているよ」

そこの校歌(?)を歌いながら、少年はダンゴムシを投げていたのです。次の年度からは近くの幼稚園に入ることが決まっていました。そんな大人の事情も将来のことも気にせず、家の庭で遊び呆けるのです。

遊びの1つとして虫取りがありまして、少年は蝶々は虫かごに放り込まれました。それを数日放置されるうちに徐々に蝶々は元気をなくしていきました。そうやって衰弱死していくのが捕らえられた虫の常でした。

あるときに、少年は気紛れで蝶々を虫かごから解き放ちました。その蝶々は少年の周りを3舞いして天に姿を消していきました。母親から「蝶々さんが喜んでいる」と言われて、少年は胸をジーンとさせました。

そんな胸打たれることもありますが、ひと晩寝たら忘れます。にわとりは3歩で忘れると言いますので、比較的優秀です。それくらいバカにされるのが子供です。

アリの巣には水が注がれました。生き物の貴さをすでに忘れている少年です。子供とは残酷なものだと人は言うのです。

庭で列を作って行進するアリを踏みつけたり進行の先にモノを居て妨害したりするのです。その最終局面がアリの巣に水を撒き散らすことでした。

桶でせっせと運んだ水を注ぎ込みます。あるときはゆっくりと、あるときは勢いよく。それはケラケラと楽しそうに。のちに祖父がアリの駆除剤を撒くのだから、それに比べたら可愛いものではあります。

落ちたセミは踏みつけられます。それはもうぐちゃぐちゃと。腸が飛び出て変な汁が流れているのがやはり少年を愉悦に運びます。

後の話になりますが、小学校時の夏休みの自由研究でセミを集めて紙に貼った同級生女子がいました。そのセミはきちんと標本としての処置を施されていなかったので、数日後には体から駅が垂れていました。それを馬鹿にされてイジメに近いいじられ方をしたのを見ましたが、別の話です。

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