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宗志との衝突

魔王討伐の準備が進む中、勇者たちの間では、それぞれの実力に対する認識が広まりつつあった。特に、優希と幸司の成長は目覚ましく、彼らがダンジョンでロックトロルを討伐し、優希のスキルが「創操」へと進化したことは、一部の生徒たちの間で噂になっていた。


そんな中、宗志の苛立ちは募る一方だった。彼は自分が最強の勇者であると信じて疑わず、優希たちの台頭が面白くなかったのだ。ある日の午後、王城の訓練場に優希と幸司がいると聞きつけた宗志は、数人の取り巻きを連れて現れた。


「おい、優希! 幸司! ちょうどいいところにいたな!」


宗志は、優希たちの前に立つと、挑戦的な笑みを浮かべた。


「お前らが最近、調子に乗ってるって話じゃねーか。ダンジョンでちょっと強い魔物を倒したくらいで、俺に勝てると思ってんのか?」


優希は静かに宗志を見据えた。


「宗志、何が言いたい?」


「決まってんだろ! 俺と勝負しろ! ここで、どっちが真の勇者か、はっきりさせてやる!」


宗志の言葉に、訓練場にいた他の生徒たちもざわめき始めた。幸司は一歩前に出て、冷静に宗志に言った。


「宗志、無意味な争いはやめろ。俺たちは魔王を倒すために召喚されたんだ。仲間割れをしている場合じゃない」


「うるせえ! 雑魚は黙ってろ! 俺はな、お前らみたいな中途半端な奴らが、俺の邪魔をするのが気に食わねえんだよ!」


宗志はそう叫ぶと、スキルを発動させる構えを取った。彼の拳に魔力が集中し、空気が震え始める。


「『衝撃波(ストライク)』!」


宗志の拳から、目に見えない衝撃波が放たれた。それは一直線に優希と幸司に向かっていく。


優希の「創操」と幸司の「境地」

優希は咄嗟に、自身の「創操」スキルで作り出した魔剣を構えた。そして、魔剣から魔力を放出し、目の前に薄い魔力の壁を形成する。


ドォン!


衝撃波は魔力の壁に衝突し、大きな音を立てて霧散した。しかし、優希の魔力の壁も、宗志の攻撃の余波でわずかに揺らいでいる。


「なっ…!?」


宗志は、自分の攻撃が防がれたことに驚きを隠せない。


「宗志、これが俺の『創操』だ。ただの剣じゃない。俺が作ったものは、俺の意のままに操れる」


優希がそう言うと、幸司も動き出した。彼は「境地」を発動させ、宗志の動きを予測する。宗志は再び衝撃波を放とうと構えるが、幸司はその隙を見逃さなかった。


幸司は、信じられないほどのスピードで宗志の懐に飛び込んだ。宗志は反応が遅れ、幸司の短剣が宗志の脇腹をかすめる。もちろん、殺傷する意図はないため、刃は立てていない。しかし、そのスピードと正確さに、宗志は思わず後ずさった。


「くそっ、速ええ…!」


宗志が体勢を立て直そうとしたその時、優希が動いた。優希は、訓練場に転がっていたいくつかの石ころに「創操」の魔力を流し込む。石ころは優希の意図するままに宙に浮き、宗志の周囲を取り囲んだ。


「な、なんだこれ!?」


宗志が困惑する中、優希は石ころを宗志に向かって一斉に飛ばした。石ころは宗志の体をかすめ、彼の動きを制限する。宗志は衝撃波を放つことができず、身動きが取れなくなった。


「宗志、もうやめろ。これ以上は無意味だ」


幸司が宗志に短剣の切っ先を突きつける。宗志は悔しさに顔を歪ませたが、反撃の糸口が見つからない。


「くっ…覚えてろよ、お前ら…!」


宗志はそう言い残し、取り巻きを連れて訓練場を去っていった。


互いの理解と新たな関係

宗志との戦いは、優希と幸司の勝利に終わった。訓練場にいた生徒たちは、優希の「創操」と幸司の「境地」の連携に、驚きと感嘆の声を上げていた。


「優希、幸司、お前ら…本当に強くなったな」


「まさか、宗志をあそこまで追い詰めるとは…」


生徒たちの言葉に、優希は少し照れたように笑った。幸司は、静かに優希に歩み寄った。


「優希、助かった。お前の『創操』がなければ、宗志の衝撃波を防ぎきれなかったかもしれない」


「幸司の『境地』もすごかったぞ。宗志の動きが全部見えてるみたいだった」


二人は顔を見合わせ、互いの成長を喜び合った。この戦いを通して、彼らは自分たちのスキルが、宗志の攻撃スキルとは異なる形で、いかに強力であるかを証明することができた。


宗志は、今回の敗北で、優希と幸司の実力を認めざるを得ないだろう。彼らの関係は、これまでの敵対的なものから、少しずつ変化していくかもしれない。


魔王討伐という共通の目標に向かって、優希と幸司はさらに力を合わせていく。

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