創造の進化(真価):2
優希の「創造」スキルがLv2になり、簡単な短剣を作り出すことができるようになったことで、優希と幸司は新たな目標を見出した。それは、優希の「創造」スキルをさらに強化し、より複雑で強力なアイテムを作り出すことだ。そのために、彼らは再びギルドを訪れた。
「ギルドマスター、レンさん。俺たちのスキルを効率的に上げるための、何か良い方法はないでしょうか?」
幸司がレンに尋ねると、レンは顎に手を当てて考え込んだ。
「うむ…スキルを意図的に強化するには、二つの方法が考えられる。一つは、より高度な素材を使って創造を行うこと。もう一つは、創造の対象をより複雑なものに変えていくことだ」
レンはそう言って、壁に貼られた依頼掲示板を指差した。
「現在の君たちの実力なら、そろそろ王都周辺のダンジョンに挑戦しても良い頃だろう。ダンジョンには、より珍しい魔物が生息しており、そこから手に入る素材は、森の魔物とは比べ物にならないほど質が高い。そして、その素材は、君の『創造』スキルを大きく成長させる糧となるはずだ」
レンの言葉に、優希の胸は高鳴った。ダンジョン。それは、王都の冒険者たちが腕試しをする場所であり、同時に危険も隣り合わせの場所だ。宗志が以前、ダンジョンの入り口まで行ったと自慢していたことを思い出す。
「ダンジョン、ですか…」
優希が少し躊躇するような素振りを見せると、幸司が優希の肩を叩いた。
「いい機会じゃないか、優希。きっと、そこでしか手に入らない素材があるはずだ。それに、俺の『境地』も、より強い魔物との戦闘でこそ真価を発揮する」
幸司の言葉に、優希は力強く頷いた。
「分かりました、ギルドマスター。ダンジョンに挑戦してみます!」
レンは満足そうに微笑んだ。
「よし。王都の南東には、比較的浅い階層のダンジョンがある。そこなら、今の君たちでも十分に探索できるだろう。くれぐれも、深層には近づかないように」
ダンジョンへの挑戦と新たな課題
レンの助言を受け、優希と幸司は王都南東にあるダンジョンへと向かった。ダンジョンの入り口は、巨大な岩が口を開けたような形状をしており、中からはひんやりとした空気が流れ出ている。
ダンジョンの中は、薄暗く、湿った空気が満ちていた。壁には苔が生え、足元には魔物のものらしき足跡が点々と続いている。彼らは慎重に奥へと進んでいく。
「気をつけろ、優希。この気配…複数の魔物がいる」
幸司が短剣を構え、優希も腰の剣に手をかけた。その直後、通路の奥から複数のゴブリンが姿を現した。しかし、森で遭遇したゴブリンとは明らかに違う。彼らはより大きく、皮膚の色も濃く、身につけている装備も簡素ながらも強化されているように見えた。
「強化ゴブリンか!」
幸司が叫ぶ。強化ゴブリンたちは、森のゴブリンよりも素早い動きで襲いかかってきた。幸司は「境地」を発動させ、その動きを精密に見極め、攻撃を捌いていく。優希も剣を振るうが、強化された皮膚は予想以上に硬く、なかなか有効打を与えられない。
「くそっ、剣が通らない…!」
優希が焦ったその時、幸司が叫んだ。
「優希! 創造だ! このゴブリンの素材で、何か作れないか!?」
幸司の言葉に、優希はハッとした。彼はアイテムボックスから、以前手に入れたゴブリンの素材を取り出す。そして、意識を集中させ、その素材を自分の剣の刃に融合させるイメージを抱いた。
「創造 Lv2」の力で、ゴブリンの素材が剣の刃に吸い込まれていく。剣の刀身がわずかに輝き、以前よりも黒ずんだ色へと変化した。そして、刀身の表面には、ゴブリンの皮膚のような頑強な模様が浮かび上がる。
「よし…!」
優希は新しくなった剣を構え、強化ゴブリンに斬りかかった。ズシン!という手応えと共に、剣は強化ゴブリンの皮膚を切り裂き、深々と食い込んだ。
「ギャアアアアッ!」
強化ゴブリンが悲鳴を上げ、その場に倒れる。
「やった…! 剣が強化された!」
優希の顔に、喜びと驚きの表情が浮かんだ。自分のスキルで、既存の武器を強化できる。これは大きな発見だった。
ダンジョンを探索しながら、優希は手に入れた魔物の素材で、自分の剣や防具を強化していった。幸司も、自身の短剣をさらに強化してもらい、より強固な装備を身につけていく。