創造の進化(真価):1
老鍛冶師との出会いは、優希の「創造」スキルに新たな可能性を示してくれた。ただ魔物を倒すだけでなく、手に入れた素材を活かし、自らの手で武器や道具を生み出す。それは、宗志のような攻撃スキルとは異なる、優希ならではの戦い方になるはずだ。
翌日、優希と幸司は再び老鍛冶師の元を訪れた。
「じいさん、俺の『創造』スキルで、何か武器を作ってみたいんだ」
優希が意気込むと、老鍛冶師はニヤリと笑った。
「ほう、その意気やよし! だが、いきなり複雑なものを作るのは難しいだろう。まずは、簡単なものから試してみるんだな。例えば…お前さん、剣の腕はまだまだひよっこだが、短剣くらいなら作れるかもしれねえぞ」
老鍛冶師は、ロックトロルの素材の切れ端を優希に差し出した。
「まずはこの素材で、簡単な短剣を作ってみるんだ。俺が隣で見ていてやるから、安心しろ」
優希は老鍛冶師の言葉に頷き、ロックトロルの素材を受け取った。幸司も優希の隣に立ち、その様子を静かに見守る。
優希は素材を手に取り、意識を集中する。脳裏に、シンプルな短剣の形を思い描いた。刃の部分は鋭く、柄は握りやすいように。しかし、イメージはできるものの、それを現実の形にするのは想像以上に難しい。素材は優希の意図に反して、不規則に歪んだり、ひび割れたりした。
「くっ…!」
優希は額に汗をにじませながら、何度も試行錯誤を繰り返す。その度に、素材は形を変え、そして崩れていく。
「焦るな、優希。創造とは、そう簡単にいくもんじゃねえ。だが、諦めずに試行錯誤することが、スキルを成長させる道だ」
老鍛冶師の言葉に励まされ、優希は再び集中した。失敗を重ねるごとに、優希は素材の特性や、自分の魔力の使い方を少しずつ理解していく。
そして、何度目かの挑戦で、ついにそれは形になった。
優希の手に収まる、小ぶりながらも鋭い刃を持つ短剣。ロックトロルの素材特有の、鈍い光沢を放っている。完璧とは言えないまでも、それは確かに「短剣」の形をしていた。
「できた…!」
優希が歓喜の声を上げると、幸司も感嘆の声を漏らした。
「すごいな、優希。本当に短剣を作ってしまった」
その瞬間、優希の全身に、温かい力が流れ込むのを感じた。そして、彼のステータスに変化が起きた。
優希 Lv1
体力 220
攻撃力 50
防御力 50
スピード 120
スキル アイテムボックス、創造 Lv2
「創造」のスキルレベルが、Lv1からLv2へと上がっていた。優希は驚きと喜びの表情で、自分のステータスを見つめた。
「スキルレベルが…上がった!」
老鍛冶師は満足そうに頷いた。
「やはりな。創造のスキルは、実際に何かを作り出すことで成長する。レベルが上がれば、もっと複雑なものや、より強固なものを作れるようになるだろう」
優希は、自分の作った短剣を手に取り、その感触を確かめた。Lv1の時とは違い、より明確に、そして細部までイメージが鮮明に浮かび上がる。
「これで、もっと色々なものが作れるようになるのか…!」
優希の瞳には、新たな決意が宿っていた。
老鍛冶師は、優希が作った短剣を受け取り、それを検分した。
「ふむ、Lv2にしては上出来だ。これなら、俺が少し手を加えれば、十分に実戦で使えるようになるだろう。幸司の短剣も、この素材でさらに強化してやる」
老鍛冶師はそう言って、優希が作った短剣と、幸司の短剣を手に取り、鍛冶場へと向かった。
宗志への対抗策
強化されたロックトロルの短剣と、優希が創造した短剣を手に、二人は宿屋へと戻った。優希の「創造」スキルがレベルアップしたことで、彼らの冒険は新たな局面を迎えるだろう。
「これで、宗志にも見返せるかもしれないな」
優希が呟くと、幸司は微笑んだ。
「宗志は派手な攻撃スキルを持っているが、それだけではこの世界で生き残れない。優希の『創造』は、状況に応じて様々なものを生み出し、俺の『境地』は、どんな状況でも対応できる力を与える。俺たちには、俺たちなりの戦い方がある」
幸司の言葉に、優希は力強く頷いた。宗志のように力任せに突き進むのではなく、自分たちのスキルを最大限に活かし、知恵と工夫で困難を乗り越える。それが、優希と幸司の目指す道だ。
彼らは、王都周辺での魔物討伐を続けながら、優希は「創造」スキルを磨き、幸司は「境地」のさらなる解放を目指すことを決意した。