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依頼と力

ギルドで新たな依頼を受けた優希と幸司は、再び王都郊外の森へと向かった。今回の依頼は、指定された薬草を採取することと、森に生息するゴブリンの討伐だ。スライムとは違い、ゴブリンは武器を持ち、集団で襲いかかってくる可能性もある。


森の奥へと進むにつれて、空気はさらにひんやりとし、木々の間から差し込む日差しもまばらになった。優希は周囲を警戒しながら、幸司の後ろをついていく。


「この辺りに薬草が生えているはずだ」


幸司が地図と照らし合わせながら、地面に目を凝らす。しばらくして、彼らは薄暗い木の根元に、淡い緑色の葉を持つ薬草を見つけた。慎重に根を傷つけないよう採取し、アイテムボックスにしまう。


薬草をいくつか集め終えた頃、ガサガサと茂みが揺れる音が聞こえた。優希がそちらに目を向けると、そこには粗末な棍棒を構えた小柄な緑色の魔物、ゴブリンが立っていた。一匹かと思いきや、その背後からさらに二匹のゴブリンが姿を現す。


「ゴブリンだ…三匹も!」


優希が思わず声を上げると、ゴブリンたちは威嚇するように奇声を上げた。


幸司は素早く短剣を構え、優希も剣を抜く。スライムとは違い、ゴブリンの動きは俊敏だ。一体のゴブリンが棍棒を振り上げて襲いかかってきた。幸司はそれを紙一重でかわし、間髪入れずに短剣をゴブリンの脇腹に突き刺す。


「ギャアッ!」


ゴブリンが甲高い悲鳴を上げて倒れる。残りの二匹が幸司に気を取られている隙に、優希は一歩踏み出し、剣を横薙ぎに振るった。剣はゴブリンの腕をかすめ、ゴブリンは怯んだ。


「今だ、幸司!」


幸司は優希の言葉に合わせるように、もう一体のゴブリンに斬りかかり、これを仕留める。しかし、残る一体のゴブリンが、今度は優希めがけて突進してきた。優希は咄嗟に剣で受け止めようとするが、棍棒の勢いに押され、体勢を崩してしまう。


その瞬間、優希の脳裏に、宗志の嘲笑がよぎった。


「こんな雑魚、俺の衝撃波(ストライク)で楽勝!」


悔しさが優希の心を支配した。その時、彼の内側から、何かが弾けるような感覚が走った。


「ぐっ…!」


優希の全身から、淡い光が放たれる。その光はすぐに収まったが、彼のステータスに変化が起きていた。


スキルの覚醒

優希 Lv1


体力 220


攻撃力 50


防御力 50


スピード 120


スキル アイテムボックス、創造 Lv1


未解放だった「???」のスキルが、「創造 Lv1」と表示されていた。優希は自分の手のひらを見つめ、静かに呟いた。


「創造…?」


いったいどんなスキルなのか、優希にはまだ分からなかった。しかし、残るゴブリンが再び襲いかかってくる。優希は咄嗟に、目の前の石ころを拾い上げ、ゴブリンに向かって投げつけた。すると、投げた石がゴブリンに当たる直前、まるで意志を持ったかのように僅かに軌道を変え、ゴブリンの額に命中した。


「ガッ…」


ゴブリンはかすれた声を上げ、その場に倒れ込んだ。


「優希、今の…!」


幸司が驚きと安堵の混じった表情で優希を見る。優希もまた、自分の身に起きた変化に驚きを隠せないでいた。石を投げただけなのに、なぜあんなことができたのか。もしかしたら、これが「創造」の力なのかもしれない。


さらなる高みへ

ギルドに戻り、依頼を報告すると、受付の女性は優希たちの成長に目を細めた。


「ゴブリン討伐、お見事です。お二人とも、着実に力をつけていらっしゃいますね」


報酬を受け取り、優希はすぐに自分のステータスを確認する。レベルはまだ上がっていなかったが、スキルの解放は彼にとって大きな一歩だった。


酒場では、相変わらず宗志が豪快に笑っていた。


「やっぱ俺最強! この前なんて、ダンジョンの入り口まで行ってきたんだぜ? 中にはまだ入ってないけどな!」


宗志の声を聞きながらも、優希の心には以前のような焦りはなかった。隣で静かに茶を飲む幸司の顔を見ると、彼もまた、優希のスキルの覚醒を喜んでくれているようだった。


「幸司…」


優希が声をかけると、幸司は優しく微笑んだ。


「焦ることはない。俺たちは俺たちのペースで進めばいい。優希のスキルも解放されたことだし、これでまた一歩、魔王討伐に近づいたな。それにしても、『創造』か。一体どんなスキルなんだろうな」


幸司の言葉に、優希は力強く頷いた。


「ああ。俺もまだよく分かんないけど、きっと、すごい力になるはずだ。このスキルで、宗志を見返してやる!」


翌日、二人は更なる経験を求めて、再びギルドへと向かった。優希の「創造 Lv1」と、幸司の「境地(一部解放)」。二つのスキルが完全に解放された時、彼らはどれほどの力を手にするのだろうか。

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