【第七章】私と人生という名の恐ろしい壁と目覚めてしまった性癖【六十五話】
しかし、そうか。
私に踏まれて目覚めてしまったのか。
自分でいうのもなんだが、私はそんなに美人ってわけでもないんだけどな。
しかし、まあ、考えようによっては役に立つか?
だって見えない壁だろ?
色々と役に立ちそうじゃん?
じゃあ、便利に使ってやるほうがいいのか? ドMみたいだしな。
「じゃあさ、最近なんだかんだで妖怪の襲撃が多いじゃん? このヌリカベに守ってもらおうぜ? そうしたら定期的に私かカラカサが踏んでやるからさ」
踏んでやるだけで、新しい妖怪が来ないのであれば、それはそれでいいよな。
だって、トウフの運命の相手である小豆洗いが見つかったんだよ。
これ以上、変な妖怪が来てトウフとアライの関係が……
いや、そうか、三角関係という奴か……
そちらのほうが燃えるか? 燃えるのか? どうなんだい? 私?
「なんであちきまで? 巻き込まねえでおくんなんし。ああ、けんど、それでいいそうでありんすね」
カラカサも同意してくれているな。
まあ、とりあえずは一旦トウフとアライで仲を良くしてもらって、マンネリ化したときに三角関係にでも……?
一旦はこれ以上の妖怪はシャットアウトする方向がいいかもしれない。
今は、トウフとアライが早く仲良くなってくれないことにはな、私の妄想もはかどらないという奴よ。
「ボディガードというか、警備員だな。有能な奴が来たじゃないか」
うんうん、これはいい味方ができたな。
これで変なセールスとかもやってこなくなるんじゃないか?
「でも、ボクですらヌリカベさんの弱点知っていますよ? 妖怪相手にあんまり意味ないんじゃないんですか?」
トウフが少し心配そうにそう言った。
それは確かに。トウフですら棒で足を払うと知ってたからな。
なら妖怪相手には無力か?
「それは…… そうだな。なんせトウフが知ってたくらいだしな。有名な弱点なのか?」
トウフが知っていたということは…… それはもう妖怪全員が知っているってことじゃないのか?
「かなり有名ではありんす。妖怪なら皆知っててもおかしゅうはありんせん」
カラカサも少し残念そうにそう言った。
じゃあ、妖怪相手に対しては無力か。
まあ、人間の怪しい人を通さないだけでも有能ではあるか?
とはいえ、このあたりで変な訪問販売とかが来ることもないからな。
さらに妖怪相手には意味ないんじゃ、
「それじゃあ、意味ないじゃないか」
だよな。
そもそも訪ねてくるのは最近は妖怪ばっかりだもんな。
「何かヌリカベさんの足を守るようなものでもあればいいんじゃないんですか? 例えばカラカサさんのハイヒールとかどうですか! あれなら想定の場所に足はないですよ」
トウフが嬉しそうにそんなことを言った。
見えない壁の足元にハイヒールがあったら逆に目立つだけなんじゃないか?
弱点ですよ、って言っているようなもんじゃないか?
「あれは大事なあちきの宝物でありんす」
そんな中、カラカサが珍しく憤慨したように声を荒げた。
よっぽどハイヒールが好きなんだな。
私のお古の奴だっけか?
お古か…… ん? そういえば、あれ、まだあったかな。
あれも自費でかわされたんだよな。
「あっ、あー、ヌリカベの足のサイズはどれくらいだ? 私のおさがりを履けるのなら、安全靴が一つあった気がしたけど」
私、倉庫の在庫チェックもしてたから、安全靴持ってたんだよな。
倉庫で作業するならあったほうがいいと買わされたんだよね、自腹でだけど。
だから、会社辞めた時に持って帰ってきたはずだよな。
あれをヌリカベが履けるなら、ちょっとやそっと足を払われたくらいではびくともしないんじゃないか?
「安全靴ってなんです?」
トウフが興味深そうに私を見上げて聞いてくる。
にしてもだよ、トウフの上目遣い…… 可愛すぎやしませんか?
安全靴を探すために立ち上がった私にトウフが上目遣いで聞いてくるだぞ。
「んー、靴に鉄板が入ってて重い物が落ちて来ても平気な靴だよ。倉庫整理用に買った奴なんだけど、どこにしまったかな……」
私は、トウフの上目遣いにさよならを告げて、部屋のクローゼットの中を探し始める。
しまったとすればここだよな。
それとも玄関の靴箱か?
「妖怪の身の丈はある程度自在なゆえ、サイズは問題はありんせんよ」
私がクローゼットの中を探していると、後ろからカラカサがそう声をかけてくれる。
じゃあ、サイズは問題ないのか。
妖怪って便利だな。
そういえば、スマシさんも一回り小さくなってたっけ? でもあれは妖力がどうのこうのって話じゃなかったけか?
まあ、履けるならどうでもいい話か。
後は、私のお古をヌリカベが嫌がるかどうかだよな。
嫌がるのか? 私に踏まれて興奮するような変態が?
逆に喜んだりしてな。
「ヌリカベのほうはどうなんだ?」
一応、声に出して確認する。
しばらくの間があって、
「言いとうありんせんが、主さんのおさがりと聞いて興奮してやすえ」
カラカサがうんざりとした表情を見せながらそんなことを言った。
「あ、あぁ…… そう…… なんか複雑な気分だな……」
私、今までこんな経験したことなかったが、実際にやられるというか、言われるとなるとキモイんだな。
うん、ヌリカベさんよ、おまえ十分にキモイぞ……




