【第七章】私と人生という名の恐ろしい壁と目覚めてしまった性癖【六十二話】
「え? 何が分かったんだよ、トウフ」
元気よく、わかりましたよ! と、私に報告してくるトウフをかわいいと思いながら聞き返す。
まあ、この通せんぼしている妖怪の正体だよな。
「ヌリカベさんですよ! それが正体です!」
ヌリカベ? あっ、それ、私も知ってるぞ!
あの国民的な妖怪アニメで出てくる奴だよな。
知ってる知ってる。
「あー、私も聞いたことあるぞ。コンクリ壁に手足が生えている奴だろ?」
あの姿は一度見れば忘れないよな。
透明にもなれるんだな。
なるほどな。そいつの仕業か。
「え? そうなんですか? ボクの知っているヌリカベさんは、そんなんじゃなかったですよ、というか、今、初めて会いましたよ!」
「会う?」
初めて会う?
うーん? 妖怪連合ってなんかこじんまりとした組織だと勝手に思ってたけど、同じ組織で初めて会うことがあるってことは結構大きな組織なんか?
「はい、ヌリカベさんは透明で見えないんです! なので会ったことなかったというか、認識できなかったというか。でも、道をふさいでいるのでヌリカベさんですよ!」
透明で見えない?
あれ? 私の知っているヌリカベとは違うのか。
少し残念だな。
あの壁に手と足が生えた姿は一度くらい見てみたかったんだけども。
「なんか壁に手足が生えてて、ヌリカベーって鳴き声を上げるんじゃないのか?」
違うのか?
私の頭の中ではそうなんだけれども?
子供のころ、そんなのを見ていた気がするぞ。
「え? そんなヌリカベさんは知りませんよ?」
トウフが奇妙な顔をして私を見上げてくる。
やっぱり私が知っているヌリカベとは違うらしい。
そうか、そうなのか……
子供のころの夢が一つ壊された気がするよ。
「そ、そうか…… で、相手が分かったところで対処方法はあるのか?」
今はそんなことよりも、早く家に帰ることだよな。
でも、見えない相手に何ができるって言うんだよ。
「はい! 確かヌリカベさんは足が弱点で、足のところを木の棒なんかで払えば消えるはずですよ!」
「なるほど。足を踏めばいいんだな?」
足を踏めば消えるとか、変態かよ。
というか、妖怪はみんな変態なのか?
そんな奴らばっかじゃないか。
「踏むんじゃなくて、木の棒で払うんですよ!」
「踏むのじゃダメなのか?」
木の棒、木の棒ねぇ、今どき木の棒なんてホームセンターに行かないと売ってないぞ。
そして私はそんなもの買いたくないぞ。
「え? ど、どうだろう? カラカサさんなら詳しそうですけど……」
うーん、トウフは頼りないなぁ。
まあ、そこが、かわいいところなんだけど。
「今時、木の棒なんて落ちてないぞ?」
そもそも公園とか行かないと木すら生えてないぞ。
生えてても生垣になるような小さな木ばっかりだよな。
「そういえば、そうですよね。道に落ちているの見たことないです」
「だろ? じゃあ、踏むしかないよな」
だよな。
棒きれ買いにわざわざホームセンターに行くのは面倒じゃん。
なら、足踏んで消えるなら、それでいいじゃんかよ。
「そうなんですか? でも、どこですかね? ヌリカベさんの足」
それは確かに。
見えないんだから、踏みようがないよな。
「まずは足を探すところからだな」
どうやって探す?
適当に踏んでいけば、いいのか?




