【第七章】私と人生という名の恐ろしい壁と目覚めてしまった性癖【六十一話】
日々日課となっているトウフとの夕方の散歩。
今日は特に必要な物もなかったので、近所のスーパーにも寄らずに帰宅だった。
で、おかしなことが起こった。
アパートは目の前なんだが、そこから見えないなにかがあって先に進めない。
とりあえず通行を邪魔するような物はなにも見えない。
けど、手で触るとやわらかい何かが確かにそこにある。
やわらかいからといっても力を籠めると、それは固くなって完全に通れなくなる。
だけど、見た目は何もないただの道路であり通路なのだ。
そこに何かあるわけではなく、目に見えない透明な壁でもあるかのように、アパートへと続く道が通れなくなっていた。
なんだこれ?
いや、まあ、予想はつくよ?
妖怪関係だろうとはね?
「トウフ、通れるか?」
一応トウフにも聞くと、トウフも道の真ん中で何かを必死に何かを押しているような仕草をしている。
そんな仕草もかわいいな、トウフは。
その様子を見る限りトウフも私と一緒で先に進めないようだ。
「通れません」
しばらくトウフが踏ん張った後、返答が返ってきた。
「これは…… 妖怪の仕業だろ?」
けど、トウフも通れないとかどういうことだ?
恐らくあれだろ? なんだっけ? 妖怪組合? あ、いや、妖怪連合だっけ?
その連中がトウフの様子を見に来ているんだろ?
何度も来ているんだからさ、報告くらいしろよ、と、そう思ったところで私も気づく。
トウフの様子を見に来た妖怪、なんだかんだで全員このアパートにいないか?
カラカサも妖怪連合を抜けたから報告も連絡もしていない。
スネカジリはペット化しちゃったから、ある意味監禁している。
スイカ侍は、あれは討伐しちゃったって受け取られてもおかしくない。勿論報告などできるわけもない。
残りもなんだかんだで、妖怪連合を抜けてこのアパートに住み着いてんじゃないか。
どいつもこいつも、その妖怪連合を抜けるだとか、現状を報告もしてないだろ?
そりゃ、次から次へと刺客というか、トウフの様子を見にやってくるってもんだよな。
だってトウフはこんなにもかわいいもの。
「だと思います」
だろ? トウフもそう思うよな。
お前はかわいい。
いや、今はトリップしている場合ではないか。
「思い当たるヤツとかいないのか?」
と聞いて、その名を答えられても、私は別に妖怪に詳しくないんだよな。
名前聞いただけじゃどんな妖怪かもわからん。
カラカサくらいか?
妖怪に詳しいのは。
「えーと、ボクも妖怪連合の全員を知っているわけじゃないので……」
トウフが申し訳なさそうにそう言った。
「そんなにいっぱい所属してんの?」
人当たりも良さそうなトウフが知らない奴となると……
やばい連中なんじゃないのか?
スイカ侍もトウフはよく知らなかったしな。
「はい! ほとんどの妖怪は現在の生活に適応できてませんからね」
「あー、それで集まってんのか。なるほどね。まあ、文明が変われば妖怪もそうだよな。生きづらくなるよな」
トウフの言葉に私も納得してしまう。
妖怪が生まれてきた昔と今では生活様式が変わりすぎている。
確かに、そりゃ妖怪も生きづらくなるよな。
豆腐なんて今やパックでスーパーに売られているものだしな。
豆腐皿に乗せて持ち歩くなんてしないからな。そもそも妖怪として成り立たないし。
カラカサも唐傘自体が珍しいし、考えてみれば他の連中もそうだよな。
そりゃ組合とか集まりでもして、どうにかしようって話にもなるか。
「はい」
「うーん、にしても何の妖怪だ? 念動力を使える妖怪とかか?」
念動力というか、見えない壁だよな。
なんかいたよな、有名な奴でそんなの。
「いっぱいいますね」
念動力を使える妖怪いっぱいいるのかよ。
それだけで食っていけるんじゃないか?
いや、妖怪だからそれ以前の問題か。
妖怪としての在り方が大事なんだっけか?
まあ、今はそんな話はどうでもいい。
「見えない壁とか作るヤツは? そんな妖怪いただろ?」
「あっ! 壁! 壁ですね! わかりましたよ!」
トウフが嬉しそうにして、その妖怪の名前を口にする。




