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【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活  作者: 只野誠
【第一章】私とトウフと寿命がない

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【第一章】私とトウフと寿命がない【六話】

「辞めるって何を?」

 私は思ったことを口に出す。

「妖怪連合です!」

 そんな答えが返ってくる。

 連合? 妖怪の連合? 妖怪がたくさんいるってことだよな?


 つまり……


 私の妄想のネタがたくさんあるってことか?

 なるほど。トウフの相手はやはり妖怪ってことか?

 妖怪連合を辞めるトウフ、それを取り戻しに来た妖怪と、くんずほぐれつの……

 トウフは見た目、普通のショタだし、妖怪との対比が美しい……

 かもしれない。

 これは妄想がはかどってしまうな。


「妖怪連合? トウフみたいのがたくさんいるのか?」

「はい! 昨今、夜は照らされ妖怪の住処がなくなり、人は妖怪を恐れなくなりました。それを妖怪たちが集まってどうにかしよう、と言うのが妖怪連合です!」

 やっぱり妖怪って、未だにたくさんいるのか。

 私の幻覚にしては…… んー? でも私の幻覚だったら、私がはじめっから豆腐小僧のことを知ってなかったのはおかしくないか?

 いや、そもそも冷静になれ。

 幻覚に死相が出ているって言われて、仕事を辞めるのはどうなんだ?

 いや、仕事を辞めるのは正しいはずだ。

 だって、誰が欠けても終わりが見えるようなあの会社が存続していくのは無理だろ?

 私が辞めなくても他の人が辞めるか潰れるかするだろうしな、近いうちに。


 で、なんだっけ? 妖怪連合?

 怖がられなくなったからだっけ?

 それで死相が見えた私の前に現れたんだっけ?

 あれー? 幻覚じゃなくて、これ現実な気もしてきたな。

 まあ、いいか。とりあえず明日会社は辞める。

 んでもって、死相を確認する。

 トウフに妄想の中で色んな目に会わせる。

 これらは決定事項だ。


「はあ? あっ、だから、私を狙ってたのか?」

 妖怪の怖さを知らしめるために、死相の出てた私をターゲットにと。

 でも、私が死んでもただの過労死で終わるだけじゃないか?

「はい! みんなで相談し合って、人でも殺せば、また恐れてもらえるんじゃないか? って、ことになりまして」

「そんなあやふやな理由で? 物騒な集まりだな」

 まあ、確かに人死にが出れば、怖がりもするだろうけれどもさ。

 妖怪と今の人間って、どっちが強いんだ?


「みんなで話し合った結果ですよ!」

 と、トウフは自信満々にそう言ってはいるが、キミは人殺せなかったよね?

 その上で、カルボナーラを美味しそうに食べて、その連合を辞めるとか言ってたよね?

「安直だけど、まあ、確かに…… でも、今の時代そんなことしたら、人間VS妖怪の戦争が起きるんじゃないか? 今の人間の軍隊に勝てるの? 妖怪って」

 私も軍隊の事はよく知らないけどさ。

 妖怪が勝てるものなのかな?

 トウフを見ていると不安でしかないけども?


「ボクはただ豆腐を持っているだけの妖怪ですが、強い方は強いですよ!」

 トウフは自慢げにそう言ってはいるけど、おまえ、本当に豆腐を持っているだけの妖怪なのか。

 けど、強い妖怪は強いかー、妖怪ってどんなのがいるの? 河童とかそうだっけ?

 河童は相撲が強いんだっけ?

 流石に河童じゃ銃を持った軍隊には勝てないよな?

「まあ、妖怪だしな。けど、今の軍隊とかって、爆弾で山とか吹き飛ぶんじゃないか?」

 山は流石に言い過ぎか? でも爆弾落とせばそれくらいはできそうだよな。

 日本では、まずやれなそうだけど。

 でも、日本でも戦車とかあるんだよな?

 戦車に勝てる妖怪とかいるのか?


「え? 山が……? ですか?」

 あっ、トウフが絶望している。

 その目からハイライトが消えた表情もいいぞ、トウフ。

 おまえはなんて愛い奴なんだ。


「あっ、えーと…… 私は詳しく知らないけどな? ちょっと待て…… 戦争の動画を……」

 そう言って、スマホで戦争や軍隊関連の動画を探して、それをトウフに見せてやる。

 恐る恐るスマホを受け取ってどの動画を見たトウフの顔に、更なる絶望と恐怖の表情が浮かんでいる。

 いいぞ、トウフ。その表情は私の想像を刺激してくれるぞ!

「なっ、なっ、なんですか! こ、これは!! こんなに大きな建物が一瞬で粉々に!? に、人間ってこんなに恐ろしいんですか!?」

 見せた動画はなんかよくわからないごっつい銃が建物に発射されて、その建物が蜂の巣にされて、そのまま崩れ去って行く動画だだった。

 もちろん外国の動画だったけど、トウフは食い入るようにどの動画を見ていた。


「それは、まあ、外国の動画だけど、似たようなもんじゃないかな。知らんけど。そろそろ、豆腐煮えたか?」

 グツグツと煮立っている鍋の様子を見る。

 もう十分に豆腐も煮えていることだろう。

 煮えた豆腐を箸で崩れないように取り出し、小皿へと移す。

 ただお湯で煮ただけだが、美味しそうな豆腐の香りがする。

 薬味も何もないが、これをめんつゆで頂こう。

 ついでに醤油は切らしていてない。

 うちにはめんつゆしかない。


「無理です、こんなの勝てませんよ!!」

 そう言って絶望しているトウフを肴に、茹でた豆腐にめんつゆをかけ、箸で食べやすい大きさに割る。

「さてさて、お味はどうかな? 薬味でもあればよかったがそんなもんもないしな…… っと、あっちぃな、くっそ!」

 口に入れると、まずは熱い、そんな感想しか出てこない。

 が、熱さが収まると、口の中に濃厚な大豆の旨味が広がって行く。

 何より暖かい。

 心身ともに冷えていたのが温められていくような、そんな感覚になる。

 そして、めんつゆの丁度良い塩味とダシが口に広がって行く。

 ああ、豆腐ってこんなにも旨かったんだ、と、シンプルな味わいながらに、いや、シンプルな味わいだからこそ、私に思い出させてくれる。


「だ、大丈夫ですか?」

 私が熱い湯豆腐でハフハフしていると、トウフが心配してくれた。

 いや、一人じゃないって存外にいいもんだな。

 しかも、こんなかわいらしいショタと。


「ああ、大丈夫大丈夫。湯豆腐なんて久しぶりに食ったが旨いな。次の豆腐を出してくれよ」

 まだ全部食べ終わってないけど、これならいくつでも食べれそうだ。

 本当に優しい味わいだな。


「お、お皿を返してください」

 トウフは少し不安そうな顔をして手を伸ばす。

「ほい」

 と、私は元々トウフが持っていた皿を返す。

 ただの白い皿だけど、これがないとダメなのか?

「どうも」

 と言って、トウフはその皿を大事そうに受け取る。

 トウフがその皿を両手で持つと、まるで湧き出るかのように豆腐が生成される。


「おっ、一瞬で豆腐が…… それを鍋に入れておいて」

 流石は豆腐の妖怪って奴か。

 これからはお味噌汁の具には困らなさそうだな。

 まあ、今は味噌自体がうちにはないけど。

 味噌とダシパック、あと薬味も買って来ないとな。

 しばらくは豆腐料理生活だ。


「は、はい」

 トウフは言われた通り、鍋に豆腐を入れる。

 完全にさっき見せた動画でビビってるな。

「なにビビってるんだよ。私にはその動画のような事はできないからな」

「そ、そうなんですね…… でも、これで本当に決心がつきました」

 トウフも何かの決心をしたらしい。

 えっと、なんだっけ? 妖怪連合だっけ?


「その連合を辞める?」

 って、いう話だったよな。

「はい」

 トウフも同意する。

 んま、今の時代に人を襲うとか、やめた方が良いのは事実だよな。


「行く当てはあるのかよ?」

 豆腐が茹で上がるのを待っている私はトウフに話しかける。

「ないですけど、元々妖怪ですので」

 そうか、そうか。

 まあ、妖怪だしな。

 私が保護しても良いんだよな。

 犯罪じゃないよな?


「なら、うちに居なよ」

「良いんですか!?」

 そう言うと、トウフは目を輝かせた。

 あれ? 嫌がるかと思ってたけど、トウフも乗る気なのか?


「ああ、食費が多少なりとも浮くしな」

「ありがとうございます!」

 あれ? 涙を流して喜んでるんだけど?

「今まではどうしてたんだよ?」


「豆腐がなくなると次の豆腐を出すまで、ボクも存在自体が消えるので」

「ふーん。流石妖怪だな」

 なるほど。

 もしかして豆腐が出せる皿が本体だったりするのか?

 だから、あの皿を大事に?


「それなに飲んでるんですか?」

 興味津々にトウフは私が飲んでいるチュウハイの缶を見ている。

 人間の食べ物に興味があるんだな。

「お酒だよ、お酒! トウフにはまだ早い奴だよ」

 そう言って、一応、チュウハイの缶をトウフからは遠ざけておく。

 いや、妖怪に未成年者飲酒禁止法が適用されるのかどうかはわからないけど、絵面的にダメそうだからな。


「ボクにはこれがあるので! こんなにおいしいもの初めて食べました!」

 そう言ってもうほとんど残ってないないカルボナーラを私に見せる。

 コンビニのカルボナーラ一つでここまで喜んでくれるなら安いもんだな。


「そっかー、安上がりで良い奴だな」

 まあ、こうして妖怪、豆腐小僧のトウフと私の奇妙な共同生活が始まったわけだ。






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