【第六章】私と油の相容れなくもない不思議な関係【五十八話】
「いや、まあ、こうやって歓迎会もしたわけだが、うちに住むのか? うちか? もう寝る場所ないぞ?」
実際問題として、こんな頭のでかい地蔵みたいな奴を住まわせるスペースはないよな。
私の部屋はあれだぞ。大学時代から使っているワンルームだぞ?
傘立てがベッド代わりのカラカサや小さな子供のトウフならまだしも、頭だけ大きな地蔵を住まわせる余裕はないよな……
少なくともスマシさんが寝っ転がれるスペースはないぞ。
「ようこそ」
すまし顔で答えるスマシさん、ではなくカラカサに問う。
「なんて?」
「自分は寝る時も横にならねえから平気だと言ってやす」
なるほど。
確かにあの頭でっかちじゃ一度寝たら自分じゃ起き上がれなそうだもんな。
「そ、そうか…… で、スマシさんよ、あんたは何ができるんだ?」
お金には困っていないとはいえ、ニートは私とスネカジリだけで十分だ。
いや、カラカサももか?
トウフ以外、うちはみんなニートだな。
そう考えるとアライのやつはなんだかんだで偉かったんだな。
「ようこそ、ようこそ」
「特にできることはありんせんが、誠心誠意働くと言ってやす」
やる気はある…… ってことか。
そんなスマシさんに、アライが、
「じゃあ、給料は出せねえがうちで働くか? カラカサの奴は注文しか取れねえからな」
と、提案をする。
いや、スマシさんはその注文すら取れないと思うぞ?
ようこそ、しか言えないんだからな。
まあ、カラカサが注文を取って、スマシさんが運べばいいのか?
それならありか?
「ようこそ」
「やる気のようでありんすよ」
「そうかそうか、これでさらにカフェぽくなるな」
アライはそう言って嬉しそうに頷いているが、どこがカフェっぽくなるんだ?
お化け屋敷にはなりそうだが……
「なるのか? まあ、アライがいいならいいけど……」
まあ、アライの店のことにはあまり口を突っ込まないでやろう。
新メニューとトウフとの関係を進展してくれれば、何も問題はないからな。
にしてもだ、
「うーん、うちの住むのか、うち平気か?」
うちにこのサイズの地蔵のような奴を住まわせられるのか?
床抜けないか?
「大丈夫ですよ、カズミさん! 寝るときは洗面所にでもいてもらえばいいじゃないですか!」
「かわいい顔で意外とえげつないこと言うな、トウフは」
トウフが笑顔でそんなえげつないこと言っているが、実際、そこくらしか居てもらうスペースないよな。
夜中にトイレに行ってスマシさんがいたら、心臓止まって死ぬぞ。
まだ洗面所というか脱衣所にいてもらったほうがいいよな。
「え? そ、そうなんですか? ある意味自分の部屋じゃないですか!」
なんだ、トウフ。
私と同部屋は嫌なのか?
そういうお年頃なのか?
トウフもそういうことをしたいお年頃なのか?
見てみたいというか、じっくり観察したいぞ、私は。
「そういうことか、まあ、スマシさん本人がいいなら別にいいけどもさ」
うーん、地蔵に洗面所を明け渡すのか。
風呂の時だけ出てもらえば、割と支障はないのか?
「ようこそ」
「そこでよいと、住めば都と言ってやす」
住めば都ねぇ……
「そ、そうか…… なら、まあ、いいけど……」
あー、洗濯物をよく干してるんだったな、洗面所は。
それをどうするかな。




