【第六章】私と油の相容れなくもない不思議な関係【五十五話】
「あっ、アライさんの歓迎会もまだですよね? 一緒にやりましょう!」
トウフはアライのことを思いついてそんなことを言い始めた。
そうかそうか、トウフ、おまえ、アライのことを気に入っているんだな。
いい傾向じゃないか。
そのまま親友、そしてその先へ行ってくれ!
私はそれを待ち望んでいるぞ!
あっ、やべっ、涎出てきた。
「あー、まあ、そうだな。じゃあ、むこうの部屋でやるか?」
涎をジュルジュルっと吸い上げた後、私はそう言った。
特にアブラスマシの油でも使って揚げ物でもするとなると後かたずけが面倒だしな。
アライの奴にすべて押し付けよう。
「そうですね、色々準備していきましょう!」
そう言って色々具材などの準備をし始めるトウフ。
「んじゃ、先に行って話付けとくな」
私はそう言って立ち上がり、先にアライの奴に話をつけに行く。
トウフがせっかく準備したのに、アライの奴が嫌だとか言わないようにな。
「おねがいします!」
トウフは笑顔でそう言った。いつ見てもトウフは可愛いな。
「そんなわけで、アライ。新しい仲間のアブラスマシのアブラさんだ。いや、アブラさんだとアライさんとちょっと被るから、スマシさんだ」
スマシさんってなんだよ。
我ながら適当なネーミングセンスだな。
とりあえず顔合わせがてらに、隣の部屋にいるアライのところスマシさんを連れて行く。
「ようこそ」
と、やっぱり言う言葉はそれなのか。それしか言えないから仕方ないよな。
スマシさんは。
「アブラスマシだぁ? おまえ、この女に妖力の元を渡したって本気かよ?」
アブラスマシのスマシさんを見て、とりあえずウエルカムコーヒーを出すアライだ。
なんだかんだで本当にコーヒーが好きなんだな、コイツ。
「ようこそ」
そう言って、コーヒーを受け取るアライさん。
そんな地蔵みたいななりして、コーヒー飲めるのか? と疑問だったが、地蔵のような手で砂糖とミルクを自分で器用にいれて、飲みだした。
まあ、妖怪だしな。
細かいところを気にするだけ負けだよな。
いや、しかし、さっきの反応から見るに、
「ん? なんだ、アライもアブラさんの話が分かるのか?」
って、ことだよな?
「いいや、さっぱりだ。さっきカラカサから聞いただけだ」
「なんだよ、じゃあ、もう歓迎会の話も知ってるのかよ」
なんだよ。カラカサの奴、先回りして……
って、アライとカラカサ、地味に仲良くないか?
アライ、おまえにはトウフという運命の相手が居るだろうが!!
「俺様とスマシさん? の合同歓迎会だろ? いいぜ、歓迎されてやるよ」
そう言ってアライはなんだか得意そうに生意気な表情を浮かべる。
おお、いいねぇ、その顔。
クソガキ感が出てるよ!
実際には私よりも生きている時間はながいんだろうけどな。
「そんなことより新商品の開発はできたのかよ」
結局新作ないんだよな。
コーヒーと小倉トーストだけ。
流石に飽きてきたよ。
「まだだよ。コイツの油がバターとかならな、よかったんだが。バターコーヒーってあるんだろ?」
アライも少し困った顔をしてそんなことを言いだした。
バターコーヒー?
そういえば、そんなもんもあると聞いたこともあったな。
え? バターコーヒーってそのままコーヒーにバター入れたもんなの?
そ、そうなのか?
「え? あー、なんかあるらしいな。私は飲んだことないが…… アライはあるのか?」
ちょっとスマホで調べてみると本当にそんな感じらしい。
へー、合うんかね? でもバターも元は牛乳だし、そう考えると合うのかもな。
「俺様もない」
なんだよ、アライの奴もないのかよ。
しかし、
「俺様が板について来て嬉しいぞ」
今なんかほんと自然と出てきたし。
いいぞ、後はトウフのことを好きになってグイグイ来てくれればいいだけだ。
まあ、そこが一番の問題だけどな。
でも妖怪だろ? いけるいける!!
「なんなんだよ、おまえ…… しかし、新メニューか。難しいもんだな」
喜ぶ私をアライの奴はいぶかしむように見て来やがる。
新メニューか、まあ、難しいよな。
「スマシさんの菜種油でなんか思いつかないか?」
豆腐とコーヒーの組み合わせはそれほどよいわけじゃないけど、コーヒーと菜種油なら……
なさそうだな。組み合わせ。
「なんでアブラスマシだけ、さん付けなんだ?」
そういえば、なんでスマシさんだけ、さん付で呼んでんだ?
「なんか、雰囲気があるだろ? スマシさんには」
ほぼ見た目が地蔵様だからか?
なんかそのせいもあってアブラスマシはさん付けで呼んじゃうんだよな。
日本人の性か?
「そ、そうか…… まあ、いいけどよ。けど菜種油で新メニューとか俺様には何も思いつかないぞ」
「それこそバターの代わりに菜種油でも使ってみたらどうなんでありんすか?」
アライの言葉に特に考えずに、カラカサがそんなこと言った。
「え? 菜種油コーヒー? ああ、バターコーヒーの話か…… どうなんだ?」
と、アライも首をひねる。
「どうなんだって聞かれても…… 試しに作ってみれば良いんじゃないか?」
けど、油瓶を持っているのはトウフか。
トウフがきたら試すか。
「そ、そうだな。一杯淹れて、それに垂らしてみるか…… 菜種油の可能性という奴を……」
後日試してみたが、油ぽくて美味しくはなかった。
少なくとも私は別々がいい。




