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【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活  作者: 只野誠
【第六章】私と油の相容れなくもない不思議な関係

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【第六章】私と油の相容れなくもない不思議な関係【五十四話】

 話の流れで、つい部屋にアブラスマシを上げてしまったが……

 良かったのか? これ?

 胡散臭さはないが、なんというか、不気味だ。

 ずっとすまし顔だし、ようこそ、しか言えないし。

 部屋にアブラスマシを招き入れると、カラカサの奴が少し驚いた様な顔をする。

「あら、アブラスマシさんではありんせんか」

 そうしてカラカサはアブラスマシに少し親し気に声を掛ける。

「ようこそ」

 と、アブラスマシも返事をする。

 いや、それしか言えないのはわかっているけれども、それはこの部屋の主である私の言葉だ。


 私がそんな事を考えていると、カラカサの奴が頷き、

「そうでありんすか、あんさんも妖怪連合を抜けたかったわけでありんすか」

 と、言い出す。

 ん?

「ようこそ」

 それに同意するようにアブラスマシも返事をする。


「待て、待て待て、カラカサ、コイツの言いたいことがわかるのか?」

 驚いてカラカサを見ると、カラカサはゆっくりと頷いて見せる。

「あい、わかりんす」


「流石妖怪同士…… トウフとは違う?」

 以心伝心できるようなことがあるのか?

「な、なんですか、カズミさん!」

 トウフが少し怒ったように私の尻をバンバンと叩いてくるが痛くはない。

 非力なトウフだし、そもそも力を込めて叩いているわけでもない。

 本当にトウフは可愛い奴だな。


 そんなことをしていると、カラカサとアブラスマシの間で会話が続いていく。

「ようこそ」

「え? 良いんでありんすか? それ大切なものでありんしょうに」

 カラカサはかなり驚いている様子だ。


「な、なんだ? どうした、何を言っているんだよ?」

 私が聞くと、

「あ、いえ、こちらさんが敵意がありんせん証拠に妖力の元を家主に渡したいと言い出しんして」

 と、カラカサは少し歯切れが悪そうにそう言った。

 まるで私にその妖力の元を渡すのはやめた方がいい、そんな意志をひしひしと感じているぞ。

 まあ、私にそんな物を渡しても碌な事にはならないと思うけどな。


「トウフの皿みたいなものをか?」

「あい」

 となると、つまりアブラスマシの命を預かるって話だよな。

 そう考えると、色々と重たいな。


「それ、大丈夫なのか? 命を預かるみたいな話だろ?」

 だよな。

 敵意がないのはわかったから、そんな物を人に預けるなよ。

 トウフだって自分で管理してるぞ。

「大事に扱っておくんなんし」

 いつになくカラカサが真剣な眼差しで私を見て来る。

「ようこそ」

 アブラスマシの奴はそう言って、陶磁器の瓶を私に差し出してきやがった。


「この油の入った瓶が妖力の源だそうでありんす。中身は菜種油だそうでありんす」

 さっきの、ようこそにそこまでの言葉が本当に含まれているのか?

 けど、菜種油なんか?

 意外と普通だな。


「菜種か。この油は料理で使っていいのか?」

 瓶の蓋を開けて、油の匂いを嗅ぐけど変な匂いはしない。

 それどころか少し香ばしい良い匂いがしてくる。

 香ばしさに紛れて、菜種の青臭さもあるが、それも含め悪くない匂いだ。

 匂いを嗅ぐ限りじゃ、上品で品質もかなりいい油に思える。

「ようこそ」

「中の油は使っても問題ありんせんそうでありんすよ」

 それを見越したように、アブラスマシが発言し、それをカラカサが訳してくれる。

 ふむ、中の油は使いたい放題か。

 けど、油か。

 揚げ物でもしない限りはそこまで使わないし、揚げ物は後始末の方が大変だしな。


「まさにトウフの皿と一緒だな。じゃあ、預かるぜ…… って、なんか一回り小さくなった?」

 これからは油も買わなくてよくなったか、なんてことを考えていると、頭の大きな地蔵そのものだったアブラスマシの奴が一回り小さくなって見える。

「妖力の元を手渡したゆえ、一段階妖力が減ったんでありんしょう」

 カラカサもアブラスマシの方を見て確認し、そんなことを言った。


「そ、そうか…… まあ、その方が床が抜けにくくなるだろうしな」

 妖怪ってそんな物なのか?

 いや、まあ、一回り小さくなってくれたおかげで、床が抜ける心配はなさそうだけど。


 私が握りしめている油瓶をトウフが見て、

「カズミさん、大事にしまっておいてくださいよ!」

 と、言ってきたので、トウフに丸投げすることにした。

 いや、私が補完しているよりもトウフが補完してた方が壊さないだろ?

 誰かの命を握るとか、そんな重いことは勘弁してくれよ。


「分かってるって、あっ、じゃあ、今日はこの油使って何か料理作ってくれよ」

 そう言って、アブラスマシから渡された油瓶をトウフに手渡す。

 よし、これで私は妖怪のとはいえ、人の命を預かる重責から解放されたわけだ。

「え、は、はい、わかりました」

 トウフは何もわからずに大切そうに油瓶を受け取る。

 私はもう受け取らないからな。

 トウフ、大切にしまっておくんだぞ。


「後トウフの豆腐も使って、それで今日は料理作ろうぜ?」

 ついでにそんな提案をする。

「トウフと油ですか? 厚揚げでも作るんですか?」

 厚揚げが。

 それも悪くはないが、

「揚げ出し豆腐とかもあるだろ。まあ、なんでもいいけど、暑い中悪いけど頼んだぞ、トウフ。アブラスマシの歓迎会のメイン料理だぞ」

 揚げ出し豆腐か。

 あれも旨いよな。

 とりあえず私がそう言うと、トウフは嬉しそうな顔をした。

「歓迎会! はい! 気合い入れて作ります!!」

 本当に嬉しそうな顔でトウフはそう言った。







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