【第五章】私と粒餡派か純情派か、はたまたコーヒー豆か?【四十八話】
なんというかアライの行動は早かった。
スーパーで売られていたバリスタマシーンを買い、それなりに値段のするコーヒーカップを数組ずつ揃え、カフェ風の家具をネット通販で買い揃えた。
まあ、実際に買ったのは私だが、現金で前払いされたらな、断れるもんじゃないだろう。
ってか、アライの奴どんだけ金持ってるんだ?
小豆相場ってそんな儲かる物なのか?
わ、わからん……
問題はアライが喫茶店かカフェか、わからないが開く場所だよな。
と思ってたら、私の部屋の隣の空き部屋を占拠しやがった。
もちろん無断でだ。
無論犯罪行為だけど、やっている奴が正真正銘の妖怪だぞ?
法で妖怪が裁けるのか?
私にはわからん。
なるようになるのを見守るしかない。
それに隣の部屋なら、トウフとアライの関係を育むのにうってつけだしな。
そこは何も問題はない。
私の部屋が、これ以上狭くなることもないしな。
ついでにトウフはブラックコーヒーは無理だが、牛乳と砂糖たっぷりのカフェオレなら好きなようだ。
流石トウフだ、そんな子供っぽいところもかわいい。
「んで、この届いた荷物は隣に運び込んで良いのか?」
大量に届いた荷物を私の部屋の前から隣の空き部屋の前まで、とりあえず移動させる。
にしても鍵はどうしたんだ?
まあ、古いアパートだしどうにでもなるか?
「ああ、いいぞ」
と、アライは笑顔で空き部屋だった部屋に、組み立て前の家具を持った私とコーヒーカップが入っている箱を抱えたトウフを招き入れた。
まあ、何もない部屋だ。
エアコンは…… ついている。
かなり古い型だけど、前に住んでいた人間の置き土産か?
でも、電気とか水道ってどうなってるんだ?
「いいぞ、じゃないだろ、何勝手に空き部屋使ってんだよ」
とりあえず突っ込んでおく。
まあ、どうでもいいけど私とトウフに迷惑かけるなよ。
あ、いや、待て、この買った家具から私にも容疑がかかったりするのか?
それは嫌だな……
「ここは空き部屋だろう? ならいいじゃないか」
アライはそう言って笑う。
まあ、妖怪ならそんな感じだよな。
法律も何もないし、そもそも人間じゃないんだから。
「いや、良くないし、まあ、妖怪だからギリ許されるかもしれないが、私とトウフには迷惑かけるなよ」
いざって時の言い訳でも考えておくか?
どんな言い訳だよ。思い浮かばないぞ。
「分かっている」
と、アライは言っているが本当に分かっているのか? コイツ。
いや、わかってないよな。
だから空き部屋を占拠しようとしてんだよな。
「あと一人称は俺様、な? それが条件でスマホ使わせてやって、こうやって家具やらなんやらを買わせてやったんだからな?」
バリスタマシーンはスーパーで買って来たが、良い感じの家具やらコーヒーカップセットなんてものはこの付近じゃ売ってなかった。
だから、ネットでお取り寄せになった。
そのおかげでアライに俺様呼びを強要することはできたが……
アライが勝手に空き部屋を占拠するとなると早計だったかもな……
「わ、わかっている。俺様…… 俺様な」
と、アライは少し照れながらそう言った。
うんうん、悪くない。悪くないぞ!!
後はトウフとの仲をドンドン進めていってくれれば問題ない!
私はそれを少し離れて観察するだけでいい!!
「うんうん。いいぞ。あと、トウフと仲良くしろよ?」
「お? おぅ? それはもちろんだが、なんでトウフを押して来る? カラカサの奴は?」
アライは私の真の目的に気づいていない。
だが、おまえの相手はトウフなのだ。
その可愛さに気づき、いつの間に意識するようになり、そしていつしか……
フフ、フフフフフ…… ああ、妄想が捗る!
え? カラカサ? アイツは……
「そっちはどうでもいい」
うん、心底どうでもいい。
そう思っていると、珍しくカラカサが部屋の外に出てくる。
暑くて傘の部分に使っているピンクのビニールが溶けるとかなんとかで、外に出て来やがらなかったのに、どうして?
私が少し疑問に思っていると、
「あちきをメイドとして雇ってくれる件についてでありんすが」
と、カラカサの方から言い出した。
コイツを? メイドに?
うん? んー? いや、ありか? 妖怪相手に商売するならありなのか? そういう方向性なのか?
なら、トウフもメイドで雇ってくれないかな。
私は見たいぞ、トウフのメイド姿。
「おお、そうだな、部屋を飾りつけながら色々決めよう!」
アライは嬉しそうに部屋の中へカラカサも招き入れる。
「あい、わかりんした」
「ボクも飾り付け手伝ってきます!」
そう言って、トウフもアライの部屋へと上がり込んでいく。
「トウフが行くなら私も行くぞ」
うん、ちゃんと見届けないとな!!




