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【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活  作者: 只野誠
【第五章】私と粒餡派か純情派か、はたまたコーヒー豆か?

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【第五章】私と粒餡派か純情派か、はたまたコーヒー豆か?【四十五話】

「まあ、いきなりはないか。何事も順序が大事だよな」

 そうだ。何事も順序が大事だ。

 大切なトウフと無理やりくっつけて、トウフが泣きでもしたら大変だからな。

 時間をかけてゆっくりとアライとトウフの行く末を見守らないとな。

 間近でな。じっくりとな。


「な、なんの話だ!?」

 アライの奴は全く分かっていない。

 だが、今はそれでいい。

 少しずつ仲良くな、まずは友人、そして親友、更にその先へ行ってもらわないとならない。

 私のイメージではアライが攻めだ。

 だから、アライにはトウフのことを好きになってもらわないとならない。

 そのように仕向けないとならないが、まあ、トウフは可愛いからな。

 問題はないだろう、うむ。


 今はとりあえず餡子が安定供給できるのかどうか、それを確かめようじゃないか。

「ところでお前、小豆洗いなんだろ?」

「そ、そうだ」

 アライの奴は既に私のことを不信がっているな。

 まあ、私の事なんてどうでもいいからな。

 そこは問題じゃない。

 問題なのは、

「つまり、小豆、出せるんだろ?」

 これだ。


 そう言われたアライは得意そうな顔をする。

「そりゃそうだろ、出さなきゃ小豆は洗えねぇ」

 そうかそうか。

 なら問題ないな。

 と、すると次は、

「んー、そうするとアライ、おまえは粒餡派か? それとも、こし餡派か?」

 一応確認しておかないといけない。

 まあ、私は別にどっちでもいいけど。


「え? お、オイラは……」

 急に聞かれたアライは反応に困っている。

 だが、問題はそこじゃない。

「オイラ? お前、一人称オイラなのか? 俺にしとけよ、もしくは俺様だ。いいな?」

 オイラって恰好じゃないだろ?

 俺様って言えよ、そんな恰好なら。

 俺よりも俺様が似合ってるよ、アライにはさぁ!


「な、何を言って……」

 アライの奴はきょとんとした表情で私を見る。

 オイラとか解釈違いだからやめてくれよ。

 そこで私は気づく。

 アライの奴がスーツ姿に似つかわしくない物を大事そうに持っていることに。

 ざるだ。恐らく小豆を洗うざるだ。


 んー、それがお前の本体か?


「そのざるを寄こせよ!」

 と、私は素早くアライからざるを奪い去る。

 奪い取られたアライの顔は、まさに絶望といった感じだ。

 いい表情をするじゃないか。

「や、やめろ! それは大事な…… ざるなんだぞ!」

 そう言って、アライは私に襲いかかるが、所詮トウフと同程度の体格。

 女とはいえ、大人の私に敵う訳もない。

 まず背の高さが足りない。

 私が座ったままでも手を上に伸ばして、ざるを上げれば、アライの奴はそれを掴むことも出来ない。

「これがお前の本体かぁ!」

 必死にざるを取り返そうとしているアライに私がそう言うと、動きがピタリと止まる。

 やっぱりそうらしい。

「な、なんなんだ、この女は!」

 そして、アライはざるを取り返すことを諦めて座り込み悪態をつく。

 私の勝ちだ。

 これでトウフの相手と、餡子を手に入れたぞ!!

 

 そんな私の勝ち誇った顔を見てカラカサがが一言。

「まさに傍若無人、やりたい放題でありんすね」

 と言った。


 流石にやりすぎたか?

 ざるを取り上げるのはまずかったか?

 コイツらにとっては命みたいなもんだしな。

「そうですよ、カズミさん、少し酷いですよ!」

 トウフまでそう言って私を睨んでくる。

 うむ、良いぞ、トウフ。おまえがアライと仲良くやってくれるなら、私はいくらでも悪役をやろう!


 そんなとき、上からポツポツと何かが落ちて来る。

 それは小豆だ。

 小豆がざるから生成されて、落ちてきているんだ。

「あっ、これ、私が揺らしても小豆が出て来るぞ? これが小豆無限製造機か!」

 私がそう言ってざるを掲げて揺らすとポロポロと小豆が落ちて来る。

 本当に小豆無限製造機じゃないかよ!


「や、やめろ! な、なんてことしやがるだ!」

 そう言いながら、アライは若干苦しそうにしている。

 あれ? まずいか? これ、ざる返した方が良いか?

 コイツにはトウフのお相手になってもらわないと困るんだよ!


 そう思ってるとトウフがアライに駆け寄って来て、

「大丈夫ですか、アライさん」

 と肩を貸そうとする。

 ああ、素晴らしいぞ、トウフ!

 実はお前、誘い受けなんだろ? そうなんだろ?


「そ、その名で呼ぶな!! くそ、なんなんだここは! とにかく、ざるを取り返さないと…… やめろ、勝手にざるを振って小豆を出すな! オイラの妖力が……」

 だが、アライはトウフを張りのけて、私が持っているざるへと手を伸ばす。

 それを私は寸前のところでかわす。

「オイラじゃないだろ? 俺もしくは俺様だと言っただろうか!」

 そして、アライに向かい叱咤する。


「な、なんなんだ、この人間は、おかしいぞ!」

 そう言って、妖力とやらが切れたのか、ゼイゼイし始めたアライにざるを返してやる。

 アライにはこれでも期待しているんだ。


 そして、とりあえず生み出された小豆をかき集めてまとめる。

「トウフ、この小豆で餡子を、ぜんざいを作ってくれよ」

 それを机の上に乗せてトウフに頼む。

「え? この状況でですか?」

 流石のトウフも少し困惑しているが、私の口はもうぜんざいになってしまっているのだ。


「ぜんざい! ぜんざいが食べたい!!」

「この暑いのにですか?」

 と、トウフは信じられないという顔をするが、既に準備に取り掛かってくれている。

 おまえは本当にいい奴だよ、トウフ。


「エアコンの設定温度を下げよう! そして、この小豆でぜんざいを作ろう!」

 エアコンのリモコンを取り、設定温度をこれでもかと下げる。

 エアコンが唸り出し、冷たい冷気を吐き出し始める。

 これで準備はばっちりだ。


「おや、ざるが本体ってなぁ当たっているようでありんすね、妖力がのうなっているじゃありんせんか」

 未だに、ゼェゼェと荒い息をしながら、ざるを抱えているアライに向かいカラカサがそんなことを言った。

 なんだかんだで、カラカサは私の味方でいてくれるよな。

 ギャルだからか?

 理由にはならないか。


「唐傘お化け、おまえどっちの味方だ!?」

 と、アライにも言われて、カラカサはニィと笑いながら答える。

「もちろん強い方でありんす」







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