【第五章】私と粒餡派か純情派か、はたまたコーヒー豆か?【四十三話】
姿を現したのは…… え? ええ? ま、まて、顔というか、目が少々鋭いのはあるが、いってしまえば美少年の範疇だ。
それに、なんで子供がスーツ着てるんだ?
そう、現れた妖怪? 少年? は、お洒落なスーツを着ていたんだよ。
コイツ、妖怪だろ?
妖怪がスーツ? 子供用のスーツか?
なんでそんなもん来てるんだ?
しかも似合っているじゃないか!
お洒落妖怪かよ!
あまりにも想像以上の美少年。しかもスーツ姿だったので、私はてんぱってしまった。
けど、ビビッときたね、今までトウフの相手に悩んでいたけど、コイツだよ! コイツ!
コイツがトウフの運命の相手だよ!
くっはー! なんか興奮して来たな!
私が人知れずに興奮して鼻息を荒くしていると、トウフの方から小豆洗いに話しかけた。
なんだ、トウフが攻めなのか!?
「あ、小豆洗いさん…… ですよね?」
トウフはそう言っておずおずと、いや、もじもじとしながら小豆洗いに話しかけた。
「ああ、そうとも。豆腐小僧、おまえが帰ってこないというから、オイラがわざわざ見に来てやったぜ?」
話しかけられた小豆洗いは、まず襟を正した。
子供は子供なんだけど、やけにスーツ着なれてるな。
なんなんだ、この小豆洗いは!?
そして、やっぱりトウフ目的で来たのか、なるほどなるほど。
囚われのトウフを助け出すためにやって来た、少年ながらにスーツの似合う小豆洗い。
やがて二人は友情を超えた愛に芽生えるんだな! 私にはわかるぞ!
見えているぞ!!
「あ、ありがとうございます。けど、ボクはもう妖怪連合を抜けたんです!」
トウフは今度こそ、もじもじとしながらそのことを小豆洗いに告げる。
それを聞いた小豆洗いは鋭い目の眉を片方だけ、ピクッとさせる。
そして、なぜか小豆洗いは私に鋭い眼光を向ける。
いやいや、おまえがその眼光を向けるのとはトウフだよ。トウフのかわいい尻にだよ。
「ん? そうなのか? それは…… まあ、良い。だが、隣の女はなんだ? 人間の女だろう? なぜ一緒にいる? 妖怪のおまえが?」
妖怪と人間が一緒に居たらダメなのか?
まあ、私はかまわんよ。トウフと小豆洗いが一緒に暮らしてくれるなら、私はそれを見る観測者で一向にかまわんぞ!
「私は森田和美だ! 今は無職だ! 私はおまえに興味がある!!」
そうだ。
私はおまえに興味がある。
私の妄想を、より正確な物とするために、おまえのことを知る必要があるんだ。
「な、何だこの女!? いかれてやがるのか?」
私にそう言われた小豆洗いは後ずさりしながら、怯えている。
イキっていても所詮は少年……
私からすれば、おまえもただの妄想のもとに過ぎないのだ。
妖怪だからといって恐れるものではないのだ!
「んなことはどうでもいい!! おい、トウフ!」
まずは選定だ!
第一印象は良き。
だが、かわいい私のトウフの相手だ。
ちゃんと私が選定して、見極めてやらないとな!
「は、はい!? なんですか、カズミさん?」
私の覇気に押されてか、トウフが慌てて返事をする。
今やトウフは我が意のまま、でもないけれど、虚を突けば意外と意のままよ!
有無を言わさず、私はトウフに命令した。
「ちょっとその小豆洗いと並べ」
異論を言わさない強い念を込めてだ。
トウフは咄嗟の事と、私の覇気に当てられて訳も分からず私の言いなりになっている。
この機を逃すわけにはいかない。
「え? は、はい、こうですか?」
「なんだなんだなんだ?」
小豆洗いの真横にトウフが直立不動で立つ。
私は交互に何度もトウフと小豆洗いを見比べる。
「背丈良し、体格も良し、顔良し、合格だ!」
ちょうど良い同じくらいの背丈。
体格差もほとんどない。少しトウフの方が線が細いくらいか?
それくらいの違いはいい味になる。
最後に顔だ。
中性的で綺麗な白い顔のトウフに対して、小豆洗いは少しワイルドな目の鋭い顔つきをしている。
良いコントラストだ。
やはり小豆洗いが攻めでトウフが受けだ。
顔つき的に。
だが、その逆もありと言えば、ありだ!!
さあ、まずは友情から育みたまえ、そして勢い余って禁断の一歩を踏み抜くんだ!
「な、なにがですか? 小豆洗いさんがですか? 良かった? ですね?」
トウフは未だに訳が分からないといった顔をしている。
ダメだぞ、トウフ。
今、おまえの隣に居るのが運命の相手だ!
「なんの話だ!」
少し憤慨したように小豆洗いが言ってくる。
「キミ、才能があるよ」
私は小豆洗いにそう言ってそのまま、小豆洗いを小脇に抱える。
「なんのだ! やめろ! 抱えるな!」
トウフと同じくなんて抱えやすいサイズなんだ。
「とりあえず、私の部屋に来たまえ、話はそれからだ」
小脇に抱えた小豆洗いにそう言って私は自分の部屋に足を向ける。
い、忙しくなるぞ! 色々と!!
「お、おう? え?」
訳も分からずにそう言う小豆洗いに対して、トウフは笑顔で、
「良かったですね、小豆洗いさん、カズミさんに気に入られたようですよ!」
やさしく話しかけた。
もういい雰囲気だな!
「だから、な、なんの話だ!?」
小豆洗いの叫び声だけが、夕闇に響き渡る。




