表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【徒然妖怪譚】私とトウフの奇妙な共同生活  作者: 只野誠
【第一章】私とトウフと寿命がない
3/23

【第一章】私とトウフと寿命がない【三話】

 夢か幻か、はたまた幻覚か。

 まあ、私の頭の中に豆腐小僧という存在が強く残ってしまった。

 妄想のディテールを細かくするために、ちょっとした空き時間に豆腐小僧のことをスマホで調べたせいだ。


 少し調べた限りだが、大体は無害な妖怪と言うことだった。

 ただ中には、持っている豆腐を食べるとお腹を壊したり、全身カビだらけになったりする、そんなことが書かれていた。


 全身カビだらけってなんだよ。

 水虫か? 水虫の事か? 水虫もカビって言うしな。

 全身水虫とか最悪だろ。


 でも、まあ、命がとられるような記述は見当たらなかった。


 そうなんだけれども、私が出会った豆腐小僧は、私に死んでくれって言ってたよな?

 豆腐の角に頭をぶつけて?

 そんなの死ねるわけがない。

 なんだよ、豆腐の角にぶつけて死んでくれって、逆に難しいだろ。


 にしても、個体差でもあるんかね? 豆腐小僧で。

 そういえば、妖怪も色々と大変とか言ってたな。

 どこも厳しいんだな。

 はぁ、世の中生きづらいなぁ。


 と、それはともかくだ。

 あれが私の作り出した妄想ならば、家に連れて帰っても問題ないよな?


 今日も帰り道に出会ったら……

 連れて…… 帰るか?

 相手が妖怪なら犯罪じゃないしな。そもそも、私の妄想だしな。

 でも、それでどうするんだよ、私。

 冷静になれ。欲望を暴走させるな。

 そもそも、持ち帰ってどうするんだって話だろ?


 そんなことを悶々と考えつつ、私は日中、仕事をこなしていく。


 んでもって、帰り道。

 今日もしっかりと終電だった。

 そもそも帰る理由が終電だから、だもんな。

 そりゃ、終電になるよ。

 女だから会社に泊まるのは免れているだけで。


 いつものコンビニで弁当を買う。

 今日はパスタだ。カルボナーラだ。

 それしか今日は残ってなかった。別に嫌いじゃないけど。


 一昨日と昨日はこの辺で…… そう思っているとやっぱり同じ場所に居た。


 人気のない公園の電灯の下。

 そこに古めかしい着物を着て、大事そうに豆腐の乗った皿を持つ少年。

 美少年というよりは、かわいらしい男の子。幼さがかなり残る。

 白く美しい肌。

 まだすね毛の生えていないつるつるとした足は、私の大好物だ。

 あ、ついでに裸足だな、こいつ。

 そこは少しマイナスかな。靴くらい履けよ。

 後、頭の髷だけは大きなマイナスだな。

 でも、本当にかわいい少年だな。


 はぁ、連れて帰ってしまおうか。

 待て待て待て待て。


 だから、連れて帰ってどうするんだよ、って、話だ。


 いくら何でもそれはまずいだろ。

 法とか法じゃないとか、そういうことは一端、置いて置いて。

 人として超えてはいけない線を超えてしまう気がする。


 ストレスたまってるもんな。欲望も有り余ってるもんな。

 でも、ここは一旦冷静になろう、なあ、和美さんよ。

 私自身に少年に襲いかかる趣味はないんだ。

 連れて帰っても意味はないんだよ。

 うん、そうなんだ。そうなんだよ。


 私はただ単に、少年と少年の絡みが見たいだけであってだ。

 そこに私が入り込まなくて良いんだよ、本当に。


 そして、私は頭の中そのことを整理整頓して答えを導き出す。


「お前の持っている豆腐を食べると全身水虫になるって本当か?」

 何を聞いているんだ、私は。

 まあ、それも気にならないと言えばウソにはなるけども。

 何も整理整頓できてないじゃないか。

 頭の中ぐっちゃぐちゃのままじゃないか。


「え? 全身水虫ってなんですか、怖いこと言わないでくださいよ」

 あっ、豆腐小僧の奴、涙目になって本気で怯えてる。

 やっぱり可愛い奴だな、連れて帰りてぇな。こんちくしょう!!


 なんなんだ、この生物は。

 妖怪か、妖怪って奴は全部こうなのか?

 そうなんだよなぁ、妖怪なら連れて帰っても犯罪じゃないんだよ。

 って、そういう話じゃないだろ。


 もし仮に普通の人間だったら、一時的に保護したとでも言えば、通るか? 通るものなのか?

 でも、明日も会社だしなぁ、どんな理由があっても休めないし、どうすりゃいんだ、これは。


 分かっているのか、かわいらしい少年よ。

 お前が男だからと言って襲われないという保証はないんだぞ。

 私の妄想の中では既に……


 いやいや、本人を目の前にして私は何を考えているんだ……

 そろそろ、色々と限界なのかもなぁ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ