【第三章】私とスネコスリがフェレットでスネカジリ【二十八話】
「おまえはここでフェレットとして私に飼われるんだ」
柵の中にいるスネコスリに対して私は笑顔で話しかけた。
「なにと言うヒトよ。ワチは妖怪、スネコスリよ、そのような物ではない」
スネコスリとか言うかわいい小動物はそんな事を言っているが、この柵から出られない時点で何を言っても無駄だ。
おまえはここでフェレットになるんだよ。
私のペットになるんだよ。
そして、私達の娯楽になるんだよ。
「五月蠅いな、ごちゃごちゃ言うなよ。おまえはフェレットだ。良いな? 名前も今からフェレットだ」
語気を強めてそう言った。
そうするとスネコスリも少したじろぐ。
「な、なにを言う、ヒトよ。ワ、ワチは……」
気が弱くて案外ちょろそうだ。
この調子なら、フェレット化も楽そうだな。
「フェレットだ。おまえはフェレットだ」
畳みかけるそうにそう言うと流石に、
「ち、違うぞ、ヒトよ!」
スネコスリも声を荒げる。
ふふふっ、無駄な抵抗だな。
今の私はニート。暇などいくらでもある。
時間をかけて言い聞かせていってやるからな。
「カズミさん、イジメないであげてくださいよ、こんなにかわいいのに」
私が邪悪な笑みを浮かべていると、トウフがいてもたってもいられないように、スネコスリに助け舟を出す。
そんなトウフとは裏腹に、ゴミ袋から解放されたカラカサは眠そうな目をして、
「あちきは眠いので一眠りさせていただきんす」
と、跳ねて傘立てに頭から突っ込んでいった。
まあ、私の代わりにこのスネコスリに擦られ続けていたからな。
ご苦労さん。
「おう、ありがとうな、カラカサ」
「あい、気にせずに」
カラカサはこちらも見ずに返事をする。
あれ? 割と怒っている? まあ、いいか。
今はスネコスリをフェレット化させることを優先したい。
私がカラカサとやり取りしている間に、トウフは柵の外からスネコスリに向かい軽く頭を下げて、
「あ、スネコスリさん、初めまして豆腐小僧のトウフです」
と、挨拶をしていた。
小動物にまで礼儀正しい奴だな。
「そちが行方不明になったと言う豆腐小僧か」
その言葉からわかるように、やっぱり妖怪連合の仲間がトウフを心配して探しに来たってことか。
「はい、でも、ボク妖怪連合抜けたんですよ、あ、カラカサさんもです」
トウフは認めつつもそんなことを言っている。
けど、トウフは妖怪連合に抜けるとは言ってないもんな、そりゃ心配もされるだろうよ、こんなにかわいいおのこだからな。
「そうか、わざわざワチが探しに来ることはなかったか」
そう言ってスネコスリは頷いている。
なに大人ぶってんだ、この小動物は。
「おまえも妖怪連合を抜けるんだよ、そして、ペットのフェレットになるんだよ」
私はニヤニヤと笑いながらスネコスリとやらに話しかける。
「ヒト、ヒトよ、おまえは何を言っている?」
スネコスリは少し怯えながら、私の考えなど少しも理解できないかのようにそう言うのだが、スネコスリは柵の中だ。逃げ場などないのだよ。
「ほぉ~ら、フェレット用の餌だぞ」
そう言って、柵と一緒に買って来たフェレット用の餌を餌皿に乗っけて柵の中に置く。
そうするとスネコスリは餌の匂いを嗅ぎ、
「なっ、なんだ、それは…… 良い匂いがする…… 食べ物なのか?」
そんなことを言っている。
おまえ、実は最初からフェレットなんじゃないか?
「ああ、ダメですよ、スネコスリさん、それはペット用の食べ物で…… こっちのコンビニのお弁当を食べましょう?」
と、トウフはスネコスリ用にも買って来たコンビニ弁当をフェレットに、あっ、いや、スネコスリに見せる。
「トウフ、ダメだぞ。動物に人間の食べ物は塩分が濃すぎるんだ。逆に病気になっちゃうぞ」
そんなトウフに私は優しい声色で言い聞かせる。
「そうなんですか!?」
トウフもトウフで私の言葉を素直に信じている。
「オイ、豆腐小僧よ。ワチは動物ではない、丸め込まれるな!」
それをスネコスリの奴が止める。
余計なことを言うなよ。
おまえはフェレット用の餌でも食べてろよ。
それも割と高かったんだぞ。
「けど、フェレット用の餌を良い匂いと、食べ物と認識してるんだろう? なら、それがおまえに合っているってことだよ」
私はニヤつきながらそんなこと言う。
所詮は小動物よ、妖怪とはいえ丸め込むのも簡単そうだ。
「ぐぬぅ」
なにせ、スネコスリ自身がそう感じているんだからな。
何も言い返せないよな。
「え? ええ、ボクはどうしたらいいんですか?」
コンビニ弁当を持ってトウフがわたわたしている。
ふふ、カラカサが起きる前に、スネコスリの洗脳を完了させておいてやるぞ!