【第三章】私とスネコスリがフェレットでスネカジリ【二十四話】
「あっ、そう言えば目を細めてじっと見つめると見えて来るって聞いたことがあったような……」
トウフが思い出したようにそんなことを言った。
「目を細めて? こうか?」
私が目を細めると、確かに何かが見える。
猫? いや違う、黄色い小動物的なものが、確かに高速で私にこすりついているのが。
思っていたよりも小動物で、かわいげがあるように思える。
「あっ、何か、何かいるぞ! なんだ、これ? 小動物か?」
小動物。猫よりも一回り小さいような小動物だ。
あ、あれだ。昔飼いたかったフェレットにどことなく似ている。
「猫とか鼬とか、もしくは狸とか言われてますね」
猫はともかく、鼬や狸は見たことないな。
とにかくそっち系の小動物なのね。
「なんだ、かわいい系かよ。変態フェチ妖怪かと思ったよ」
私は勝手になにか、こう、もっとね? いやらしいのを想像してたんだけど違った。
かわいげのある小動物となると、こう、まとわりつかれるのも悪い気はしないかもしれない。
「え? なんですか? それは……」
トウフが少し引いた眼で私を見て来る。
やめてくれ、トウフ。その冷たい視線は私によく効くんだ。
この視線に耐えれたら、私も自分の書いた同人誌を世間に発表できたのか?
い、いや、今はそんなことはどうでもいい。
このまとわりついている、スネコスリ? だっけか? を、どうにかしないとな。
「うーん、こいつフェレットじゃないか?」
ただ何も思い浮かばないので、私はそんなことを言って気を紛らわす。
「フェレット? フェレットってなんですか?」
と、トウフに聞き返されるが、私も実はよく知らない。
なんかかわいい小動物的な奴だよ。
私が子供の頃、流行ってたんだよ!
「小動物だよ、昔かいたかったんだよな。コイツを捕まえて飼うか……」
飼うと言っても、こんな高速で動かれてたら、かわいがれないよな。
でも、あれか。
妖怪って言うなら、世話の手間も少なくていいよな。
こいつを飼うの、ありか?
「え? 妖怪ですよ!」
驚きの表情でトウフがそう言ってくるんだが、オマエもその妖怪だろ?
「もううちには二匹も住み着いているんだ、今更だろ」
オマエとカラカサの二匹な。
食費は…… かさむよな。
毎日トウフに豆腐を出してもらっているとしても。
でも、このスネコスリとかいうのは小さいから、そこまででもないのかな?
「そう言う問題なんですか?」
そう言う問題じゃないのか? 妖怪のトウフさんよ。
「だって、危険はないってトウフが言ったんだぞ?」
こうやってまとわりついてくる以外、今も何もされてないしな。
意外と飼いやすい妖怪なのかもしれない。
もう少し落ち着いて止まっていてほしくはあるが。
「確かにそうですが……」
「まずは捕まえないとな」
そうだ。まずは捕まえないといけない。
こんな目に見えないほど高速で動くのをどうやって捕まえるっていうんだよな、ほんと。
そもそも、自分じゃどうしようもなくて、トウフを起こしたわけだし。
「どうやってです?」
「目を細めれば見えたんだ、どうにかなるだろ?」
そう言って私は目を細めたまま、捕まえようとするが、私の手をすり抜けていく。
だが、見えているからか、先ほどまでと違って、若干の手ごたえがある。
けど、これを捕まえれるのか?