【第三章】私とスネコスリがフェレットでスネカジリ【二十三話】
「仕方がない、トウフを起こして相談するか。これも妖怪絡みだろうし」
声に出したつもりはなかったけど、声に出していた。
私も相当、頭に来ているみたいだ。
足に布団を巻いたまま、今は左腕を触られる感触を確かめながら、そして、それを憎々し気に見えない何かを見ながら、トウフが寝ている布団のところまで行く。
「トウフ、トウフ! 起きろ! おい! 起きろよ!」
お姫様みたいなポーズのまま、寝ているトウフを私は揺すって起こす。
本来、妖怪は寝なくても平気だって、夜こそが妖怪の時間だって、そう言っていたトウフは熟睡してやがる。
すっかり人間の生活に慣れてきているようで、しかも、いらぬ知恵をスマホから仕入れて、人間は夜寝ないとダメですよ! って、ママみたいなことを言ってきやがる。
子供の姿なくせにな!
でも、そのおかげで、昼間に寝て夕方に起きだす、なんて生活は改善されたよ。
本当にママかよ。
そんなトウフを起こす。声を掛けただけでは起きなかったので、揺すっているが、トウフは起きない。
それでも、何度も揺すっていると、トウフの目がやっと開く。
「なんですか、カズミさん、せっかくいい気持で寝ていたのに……」
本当に眠そうな顔をしてトウフが上半身だけ起き上がる。
その眠そうな顔は妖怪のヨの字もない。
どう見ても、熟睡しているところを起こされた子供そのものだ。
「それはごめんだけれども、妖怪だ! たぶん、妖怪がでた!」
一応は謝っておいて、今、私がサワサワと触られている左腕をトウフの見せる。
私に見えなくても、トウフなら、妖怪のトウフなら見えるんじゃないかとそう思ってだ。
「え? 妖怪ですか? って、足に布団を巻く妖怪はボクも知りませんよ?」
けど、トウフの視線は私の左腕ではなく、両足に巻かれた布団の方へと向けられる。
まあ、わからんでもない。
だって、変だし、奇妙だしな。
よくよく考えれば、なんで私は足に布団巻いてはしゃいでいるんだ。
「それは違う。巻いてないと脚を触られるんだよ、脛のあたりを!」
私がそう弁明すると、トウフは何かに気づいたように顔を明るくさせる。
「あっ、脛ですか? じゃあ、スネコスリですね、きっと。害のない妖怪ですよ」
トウフはそう言って、そのまま布団に横になろうとする。
私はそれを必死に止める。
「スネコスリ? そのまんまだな? どんな妖怪なんだ?」
確かに何の対策もしなければ、執拗に脛ばかり狙われてた気がする。
それだけ脛が好きだとか、とんだ変態フェチ妖怪だな!
「その名の通り、脛をこする妖怪ですよ。けど、素早くて捕まえられもしないし、目でも追えないんです」
目でも追えないほど素早いってことか?
私には実体そのものが見えないように思えてたけど……
きっとその辺の事はあまり気にしたらダメなんだろうな、だって相手妖怪だし。
トウフも何気に一日に数個程度の制限があるけど、無限豆腐製造機だしな。
妖怪って、何気にすごいな。
まあ、確かに脛ばっかり狙ってやがるし、見えないしで、そのスネコスリって妖怪で間違いはなさそうだ。
「本当にそのまんまだな。でも、それであってるかもしれない! どうすればいいんだよ」
そうだ、対処法だ。
妖怪には大体弱点とか苦手なものがあるって聞いたことがあるぞ!
変態フェチ妖怪の弱点を教えてくれよ!
「すいません、ボクにも具体的な対処法はわかりません……」
そう言ってトウフは眠そうな顔をしている。
「まるっきり子供じゃん、トウフの奴……
こんな子供を夜中に起こした私の方が罪悪感に悩まされるぞ。
「そうか、トウフでも、同じ妖怪のトウフでも捕まえられないのか?」
すがる思いで私はトウフに聞く。
人間の私には無理でも、何か妖怪パワーとかで捕まえられないもんなのか?
「妖怪とか関係ないですよ。ボクでも無理ですよ」
そう言って目を閉じる。
本当に眠そうだな。
「まあ、身体能力もまんま子供だしな、トウフは」
トウフは見たまんまの身体能力をしている。
いや、どちらかと言うと、運動能力はない。
同世代の子供の平均以下の能力しかない。
「うぅ…… いくら鍛えても変わらないんですよ」
それは妖怪だからなのか?
それとも私と一緒に自堕落な生活を送っているからか?
これから健康のために散歩でもした方が良いのか?
いや、それよりも気になったのは、
「鍛えてたことあるのか……」
ってことだよな。
トウフが私に隠れて筋トレでもしてるのか?
ふむ、それはそれでありだな。
中々ポイント高いぞ。
ただ、トウフに筋肉つけられても、それはそれで嫌だが。
「はい、ボクも一応は男なので……」
そう言って、トウフは若干照れた顔を見せる。
相変わらず可愛いな、この妖怪小僧は。
「そうかそうか、男の子だもんな! トウフは!」
強い男に憧れる子供って言うのは良いもんだよな。
BL的にだが。
「な、なんですか!」
私の良からぬ気を感じてか、トウフも完全に眼を覚まして何かを警戒している。
しかし、トウフも何かしらの手段を知らないとなると、私はこのスネコスリっていうフェチ妖怪にずっと足を触られまくられるってことなんか?
なんだよ、とんだ痴漢妖怪だな。
でも、脛だし触り心地も悪くはないんだよな。
これ、ブーツとか履いたらどうなるんだ?
いや、布団を足に巻いたのと一緒か? 別の場所に行くだけだよな。
どうしたもんかね?




