【第二章】私と傘と美脚でハイヒール【二十話】
ギャルだ。ギャルがいる。
唐傘のギャルがいる。
何を言っているか自分でもわからないけど、私の部屋に唐傘のギャルがいる。
傘の部分を、トウフにデコレーションしてもらい、口には派手な色の口紅をつけ、化粧をして、傘の部分の生地? 紙? も、ピンク基調のビニールの生地に気が付けばなっていた。
なんだ、この傘。
ギャル的なのが趣味だったのか、もう少し大人なファッションが好みかと思っていたが、カラカサは、結局ギャル的なファッションに落ち着いたようだ。
ついでに、それらの費用はすべてトウフが稼ぎ出してくれているので、私からは文句はない。
文句はないんだけど、なんだ。
私よりお洒落しているし、着飾っているしで、なんだ。
なんか女として負けている気がする。カラカサに。
私は高校時代のジャージを未だに着まわしているしな。
だって、これ着心地が良いんだもの……
新品のがあったら買い足ししたいくらいだ。
いや、まあ、それは良いんだ。
しかし、何だこのデコられた傘に、網タイツを履いた艶めかしい足は。
部屋の中だから、ヒールのないサンダルまで履いているし。
けれども、けれどもだ。
カラカサのおかげでトウフのやつが化粧の仕方を覚えていってるんだよ。
この調子で、いつかトウフに女装をさせてみたい。
そうすると妄想が、私の脳内で飛び交っている妄想が、より激しい方向になっていってしまう!
だが、させたい! 見て見たい! トウフが女装しているところを!!
なんとかだまくらかしてトウフを女装させたい!
「なあ、トウフ。おまえも女装してみないか?」
欲望が私の口からストレートに出た。
あ、私、ダメかもしれないな。
「え? ジョソウ? なんですか? 草刈りですか?」
トウフはきょとんとした目で私を見返して来る。
逆にカラカサの奴はわかっているのか、少し驚きながらも、確かに、と言った表情をしている。
女装したトウフ。
それを一目惚れした少年がトウフに言い寄って……
って、展開を私は妄想したいんだ!
リアリティを追求するために、トウフに女装して欲しいんだ!
「違う。女の恰好してみないかって、言っているんだ。カラカサみたいに」
熱い思いを胸の内に秘めて、私は顔に表情を出さずにそう提案してみる。
「え? こんな格好嫌ですよ、ボクは」
それに対して、カラカサの方を見て、それから私に向き直りそう言った。
トウフはそう言ったのだ。
「こんな格好でありんすと!?」
そのトウフの言葉にカラカサがショックを受けている。
うん、まあ、私は人の趣味にケチはつけないよ。
心の中でしか。
今は茫然としているカラカサの事は置いて置いてだ。
「良いじゃないか、トウフ。きっと可愛いぞ」
うん、きっと可愛い。
ついどこぞの少年がトウフに一目惚れしちゃうくらい可愛いはずだぞ。
だって、そのまんまでも割とかわいいしな、トウフは。
「いやですよ、ボクは豆腐小僧なんですよ。アイデンティティに関わります!」
だけど、トウフは頑固として抵抗してくる。
「そんな言葉を覚えて。良いから女装しようぜ?」
いつの間にアイデンティティなんて言葉を覚えやがったんだ。
少しスマホを自由に使わせすぎか?
とはいえ、テレビもないこの部屋じゃスマホが唯一の娯楽だしな。
「いえ、あの、ボクは豆腐小僧なので、小僧じゃないとダメなんです! 無理に女の真似事すると存在が揺らぎかねないんですよ」
ん? 存在が揺らぐ?
小僧じゃないとダメ?
そういえば、出会った時にちょんまげだけは、変えさせてくれなかったが、そう言うことか。
トウフにとって小僧のシンボルがあの頭のてっぺんで結っているちょんまげなのか。
あれが? 小僧のシンボル?
そうなのか?
けど、それを言ったらさ、
「はっ? なにそれ。カラカサは唐傘小僧じゃないかよ」
唐傘お化けの別名はカラカサ小僧だろ?
じゃあ、なんでコイツは存在が揺らんでないんだ?
いや、揺らいでこうなったんか?
「あちきは唐傘お化けでありんす」
けど、カラカサ的には、唐傘小僧ではなく唐傘お化けらしい。
だから、性別は関係ないのか?
そういえば、こいつは女じゃなくて性別不詳だったな。
「違いがあるんかよ?」
「実はあるんですよ。妖怪はその存在があやふやなので、名前も名称も重要なんです。カズミさんが付けてくれた安直な名前も実はボクやカラカサさんからすれば、実はありがたいんですよ」
それで適当につけた名前を気に入ったと?
豆腐小僧だからトウフ、
唐傘お化けだからカラカサ。
こいつらからしたら、存在を揺らがせないありがたい名前だったという訳か。
なるほど。なるほど……?
「んー、よくわからないが、豆腐小僧だからトウフって名前は実はありがたかったと?」
「です!」
トウフはそう言って元気に返事をする。
トウフがやけに少年というか、小僧ぽいのはそう言う存在だからなのか。
「チッ、女装はなしか……」
下手に女装して女にでもなられたら、価値がなくなるしな。
ん? 待てよ?
逆にそれは私の手でトウフを自由に変えれるってことじゃないか?
「なんでボクに女装させたいんですか?」
「その方が妄想がな……」
急にトウフが質問するから、つい本音で答えちまったじゃないか。
あやうい、あやうい。
「ボクで何を妄想しているんですか?」
「知りたいか?」
そう言って私はよからぬ顔をする。
つまり私がトウフをBL好きの少年に仕立て上げれば、もうそうじゃなく本当にそう言う趣味になってくれると言う訳だ。
こ、これはどえらい事じゃないか!?
私の妄想を現実に出来るってことだよな? おい! 凄いじゃないか!
可能性の妖怪だよ! トウフ! おまえは!
「い、いえ、いいです。聞いてはダメな気がします! ボクの存在が揺るぎかねない気がします!」
チッ、勘のいい奴だな。
でも、そう言うことだよな。
つまり、トウフに総受けの話をし続ければ、実際にトウフに総受け属性がつくと、そう言うことか!!
これは良いことを聞いたぞ。
だが、ここは慎重に考えなければならない。
安易にトウフに総受け属性をつけて良い物かどうか。
トウフには純愛を、他の美少年妖怪との純愛をしてもらいたい、私の妄想はそうなっている。
しかし、しかしだ、それはそれとして、これは良いことを聞いたぞ
「ぐへへへへっ」
トウフをどう変えていこうか、じっくりと考えなければならないようだな。
ダ、ダメだ。妄想が強すぎて顔に滲み出てきてしまう!
「カズミさん怖いですよ」
妄想がにじみ出てしまった顔を見て、トウフは素直に引いていた。
「いらねえ知識をつけさせちまいましんした」
カラカサだけが、少し心配そうに私とトウフを交互に見ていた。




