【第二章】私と傘と美脚でハイヒール【十四話】
部屋に唐傘を持ち帰って来て思ったことは、なんだ、これ、と言う感情だった。
つい持って帰って来てしまったが、やっぱり不気味だよな。
唐傘に一つ目と口、更に生足が生えてんだぞ。
それが不気味以外の何だって言うんだよ。
やっぱり明日にでもリサイクルショップに売りに行くか?
いや、いやいや、悪い奴とは限らないしな。
でも、トウフの相手役には…… どうなんだ?
そもそも、この唐傘は女なのか? 男なのか?
そこからして不明だしな。
トウフの相手役か。
いつもならすぐに思いつくのに、トウフ相手だとなぜか思い浮かばないんだよな。
「なあ、唐傘。お前、男なのか? 女なのか?」
とりあえず、男か、女なのか、それにより私の対応も変わる。
でもこいつの言葉遣い花魁言葉? だよな?
じゃあ、やっぱり女なのかな?
足は…… 女っぽい足だよな。あの足は。
「さあ? あちきは物ゆえわかりんせん」
物は物か。
性別はないのか。
言うて足だけじゃな、少なくともトウフの相手はな。
私はそこまでプロじゃないしな。
せめて生物であって欲しい。
いや、妖怪だから生物なのか? 妖怪は生物なのか?
今は、まあ、いいか。
冷える前にラーメンを食おう。それから考えよう。
「確かに。傘に性別ないしな…… とりあえず冷める前にラーメン食べるか……」
縮れ麺で野菜もいっぱい入っている、これは豚骨醤油って奴かな。
温める前はスープがゼラチン状になっているやつな。
多少ニンニクの臭いは気になるが、今の私はニート。
そんなもん気にする必要もない。
「はい!」
と、トウフもラーメンの蓋を取って、目を輝かせている。
トウフもあれだよな、カレーとか味の濃いもの好きだよな。
「唐傘は…… 手がないのか? トウフ、おまえがあーんしてやれよ?」
勢いで唐傘の分まで買ってきてしまったが、必要だったのか?
口はついているけど、食ったもんどこへ行くんだよ。
あー、でも、トウフがあーんをしている姿はさぞ可愛かろう。
それを見られるだけでも唐傘の分を買った意味もあるってもんさ。
「はい!」
と、元気に返事をするトウフは本当に素直だな。
唐傘にあーんをしているトウフを眺めつつ、私もラーメンを食べる。
ふふ、良い物だな。
トウフという逸材があーんをしている姿と言うものは。
トウフも自分の分を食べ始める。
一口、麺を口にした瞬間、トウフの目が輝く。
フッ、カレーだけでなくラーメンも知ってしまったか。
どんどん人間の英知による洗脳を受けるがいいさ。
そんなこんなで食事を終えて、一息つく。
で、私は暇だったので、クローゼットからハイヒールとストッキングを取り出して来る。
ハイヒールは社会人になったから、と買ったがほとんど履かなかった奴だな。
ストッキングは私もあんまり持ってないんだよな。
私が持ってるのはパンストばっかりだし。
そんなことはどうでもいい。
早速、着せ替えて遊ぶか。
「まずはストッキングからだな。トウフ、おまえが面倒みるんだから、履かせ方覚えるんだぞ」
そう言って、トウフにハイヒールとストッキングを手渡す。
トウフは未知の物を見る目でそれらを見ている。
特にパンストは何のためのものか、トウフには理解できていないようだ。
「え? ボクがですか? は、はい! わかりました」
あっ、ちょっとトウフくらいの子供に、あれこれと女の世話をさせるの……
なんか良いよな。
オネショタか。私にはあまり刺さらないんだけど、ちょっと良いって思えて来た。
天然で魔性のショタだよ、トウフ。
「まずはこうやって、ストッキングをだな。クシュクシュっとして、爪先を入れて後はスーっと引き上げるんだ。わかったか?」
私はジャージを膝のあたりまでめくって実演して見せる。
その光景をトウフがまじまじと見て来る。
いや、なんか…… そう、まじまじと見られると、恥ずかしいな……
「さあ、実践して見せろよ」
「わ、わかりました」
トウフは少しだけ狼狽えながらも、唐傘にストッキングを履かせようと頑張り始める。
うーん、なんかそこはかとない何か、背徳的ななにかを感じるぞ。
トウフのようないたいけな子供が、足だけとはいえ、他人にストッキングを履かせようとするのは……
私も新しい扉を開きそうになっちまうぞ。