熱と咳と夜
熱にうなされ、汗をびっしょりかいて、深夜3時にあなたは目が覚める。
服を着替え、下の階に飲み物を取りにいく。
自室へもどるついでに、両親の寝室、弟の部屋に声をかける。
「こんばんは、お父さんお母さん。おやすみなさい」
「眠れているかい弟よ、おやすみ」
もちろん返答はないがあなたは満足してベランダへ出る。
涼しくなってきた夜風があなたの肌をくすぐる。
あなたは夜の空気を肺いっぱいに取り込み、吐き出す。
マスクを外した開放感に浸る。
今、私と同じように眠っていない人は居ないのだろうな。
静まり返った街を眺めながらあなたは一人思いを巡らす。
「ゴホッ」
唐突に喉の不快感があなたを襲う。
「ゴホッゴホッ」
咳も出てきたか、とあなたは思う。
ようやく咳が落ち着いたあなたは、ベランダから布団へ戻る。
気休めの薬を飲み、冷えピタを取り換え、瞼を閉じる。
とっくのとうに気持ちの整理はついている。
明日、起きれるかどうかを考えながらあなたは微睡の中へ落ちていく。
風邪をひいた時に書きました。
ちなみにストーリーの世界は某コロコロを上回る感染力、致死性、長い潜伏期間をもった感染症が蔓延していて、あっという間に文明が滅びかかっています。
もちろん主人公もそれに感染、発症済みです。
街の人たちはもちろん、家族ももう死んでいます。
残された時間は希望を持つには短く、気持ちの整理をつけるには長すぎました。
悲しいですね。