太朗と花子の事情
文字数多いかな?普通かな?
よろしくお願いします!!
「おれぜったいしょーらいカナエねーちゃんとけっこんするんだ」
「あー、わたしはぜったいつよしにいちゃんとけっこんするー」
「太朗君、男前に育つのよ!うちのカナエの婿になるんだから!」
「あら、それなら花子ちゃんは美人に育ってね!豪のお嫁さんにうちに来たもらうだもん。可愛いお嫁さんがいいわぁ」
と、両家の母親に宣言していた。本人にも告げていた。
現在俺は高校2年生。卒業と同時にカナエと籍を入れる予定。
花子も豪兄ちゃんと籍を入れる予定。
俺と花子、カナエと豪兄ちゃんは4人幼馴染。
全員同じ高校に通っている。もちろん俺と花子は学生として、カナエは保険のせんせー、豪兄ちゃんは化学の先生だ。
俺達の関係を知ってる人は学校に俺達だけ。
親もシラをきっている。
「吉祥寺―。お前、蓮池とデキてんの?いいよなぁ?色男はあんな可愛いというか美人というか…なんというか…な子と付き合えてよー」
そして、俺は股間を掴まれた。
俺は無実だ。股間を放してくれ。
「花子は「おい、下の名前で呼んでるのか?なんて羨ましい!」
待て!その手に力を入れるな!
俺の息子、大ピンチ!
「あー、蓮池な。蓮池はただの幼馴染だし。あいつはあいつで昔から大好きな人がいる。
こうして俺の息子は解放された。…しかし。
「蓮池さんの好きな人って誰だよ!」
言えない……。言ったら豪兄ちゃんに殺される。そして、退学になる。
さらに俺の楽しい高校生ライフともオサラバとなる。
蓮池とは花子の事。
花子は一途に豪兄ちゃんの事を想ってるし、実際二人はラブラブだ。
俺はというと…
「あ、保健の先生というか荘司センセーだ。くぅぅ、ナイスバディの美人だよなぁ。一晩お相手してもらいたい!むしろ俺のハジメテを捧げたい!」
お前のハジメテはどっかに捨てて来い!カナエは俺のもんだ!!
そう、俺はカナエがいる保健室で!
カナエと!
キャッキャウフフをするためにこの学校に入学したと言っても過言ではない!
問題は俺が超健康で風は引かないし、怪我をしないウルトラ運動神経ということだ。
……これでは保健室に行く理由がない!
************
しっかしよぉ、お前と蓮池は仲いいのな?幼馴染だっけ?結婚しちゃえよー!」
と、クラスメートによく揶揄われる。
全力で否定するけど。俺は子供の時からカナエ一筋だ!
そんな俺も花子も籍を入れる前に同棲している。…両家の両親が認めてる…というか推奨している。
『早く孫の顔をみたい』というのが理由。
しかし……しかしだ。俺はカナエに「正式に籍をいれるまで体の関係は×」と宣言された…。
健康な高校2年生が!昔から好きな異性と!ひとつ屋根の下!
それなのに、体の関係は卒業までNOとか、ちょっとした罰ゲーム。
……神様…、俺は何かイケないことをしたでしょうか?
極めつけは隣の部屋から夜な夜な聞こえてくる、花子(?)の喘ぎ声。
そう、隣の部屋に花子と豪兄ちゃんが住んでます。
二人は別に卒業まで体の関係NOとかないみたいで……非常に羨ましい!!
豪兄ちゃん……精力強すぎです。
たまに花子が授業中に眠そうなのは豪兄ちゃんのせいかな?
カナエのとこ(保健室)行けばいいじゃん!
俺は保健室に行ったことがない!
どんなとこなんだろう!
ミニスカカナエが足組んで出迎えてくれたりするんだろうか?
ミニスカは今朝家を出る時に確認した。着てないけどさ。
保健室…白衣…密室に二人きり…背徳的でいいよなー。
「花子ちゃん、今日も保健室にいらっしゃい。でも、こう何日も続くと他の子に『風邪ひいてる』とか思われたりしないかなぁ?」
カナエ姉ちゃんに心配された……。豪さんのせいなんです。なんで豪さんは無事なんだろう??
「大丈夫?花子ちゃん、すっごく可愛いから。読モとかスカウトされたりするんじゃない?」
「あ、あるケド…断ってます。本気かわからないし、単なるいかがわしいバイトかもしれないし。わかんないから」
「しっかりしてるわねー」
「あの…あと1年ちょっとで豪さんと正式に籍を入れるつもりだし…。それにカナエ姉ちゃんだってすごく美人ですよ?」
「それは、年齢の問題です!」
私は両頬を引っ張られた。
「ひはいお、ははえねえひゃん!」
「ああ、ゴメン。本気だったかな?ふふふっ」
笑い事じゃないんだけど?
きちんと保健室に私達2人以外いないことは確認済で話してる。
「あー、そうよね。若い読モが既婚者はないわー。それにしても……豪センセイにも言っておくけど、卒業まで、妊娠しないようにね!」
「あの……どうして?」
「隣だから、声が聞こえるのよ。嫌あねぇ。あのマンション、壁薄すぎ!」
超ハズいんですけど!太朗も聞いてるの?うわー、教室に戻るのハズイ!!
「しばらくここにいていいですか?」
「いいわよー、若いっていいわね。(花子ちゃんに限る)よ?」
次の授業、確か化学だった……。
豪さん…涼しい顔して授業だもんなあ。私はすっごい恥ずかしいのに。なんかズルい!
花子ちゃんは大丈夫かなぁ?本当に豪兄ちゃんに注意しなきゃ。
声聞こえてるって!花子ちゃんが恥ずかしがってるって!
うーん、あの野郎(豪)…お金はあるからなぁ。
声が漏れないようないい家をポーンと買いそうだ。怖いなぁ。
豪兄ちゃんも涼しい顔して、花子ちゃん好きだからなぁ。
私らの両親が選んだ家に住んでるわけだけど、ワザと?!ワザとなの?!
お互いの声を聞かせて、競わせて孫求む的な?…それは考えすぎかな?
それはそうと、太朗だって声聞こえるのは精神衛生上良くないわよね?
籍入れるまで体の関係NO宣言してるし。
あと1年ちょいの我慢なんだけどなぁ。あ、若いほうが時間の流れが遅いのか…。
とにかくあの家は問題だなぁ。
おっと、あんなところに話題の豪センセイ。
「豪センセイ!ちょっとよろしいですか?」
「はい、今日は授業の持ち分が終わりました。あとは担任クラスのホームルームかなぁ?」
「では、時間がありますね。少々保健室の方へいいですか?」
そうして豪兄ちゃんを捕まえて保健室でみっちりと説教をした。
豪兄ちゃんの言い分だと…
・自分だって新婚みたいなもんだ。仕方がないだろう?
・マジか?声が漏れていると…それで花子が恥ずかしがっていると…
だ。
はぁ、これだから男の方の考えって甘いのよねぇ。…太朗もなのかしら?
俺の授業の時、避けるように花子が教室にいなかった。避けられてるのかな?そんなに昨日の夜…
カナエから事実を聞いた。
なんだよ?それは?聞いてない!いやだって隣(太朗&カナエ)からは聞こえてきてないからそうだと思ってた。
俺は花子が中退だろうとなんだろうと責任とるつもりだし。花子、超美人で可愛いし。俺が養うつもりだからいいんだけど。花子、恥ずかしがってるのか……それはそれで初心で可愛いケド。
ウーム、ここはやはり引っ越すべきだろうな。
学校に通いやすくて適度な距離があって(俺と花子の関係が学校にバレないように)、今後家族が増えることを考えると3LDKくらいか?まずは2LDKでいいかな?の分譲マンションないかな?
できれば、キッチンが使いやすくて、収納スペースがたっぷりのとこがいいな。
************
「もう、若いカップルが何をもたもたしてるのかしら?子供の一人や二人、ポーンと作りなさいよ!」
「「「「そうよねー」」」」
「知ってました?太朗君のとうちのカナエは籍を入れるまで清い関係らしいわよ!」
「ほんとう?もう!カナエちゃんは真面目なのね。太朗もちゃんと養えるようになってくれなきゃ!」
と母たちは結構好き勝手に言っていた……。
所謂、井戸端会議というものを母たちはしているようだ。
父たちはいいのだろうか?
あ、今更か。尻に敷かれてるもんなぁ。……全員揃いも揃って。4人もいるのに。
「そういうわけで、あとちょっとだけど引っ越そうと思うのよ。ここの立地条件はいいわよ?でも壁がねぇ?」
「……薄いよな」
「……ね……」
やっぱり太朗も思ってたみたいだし、引っ越しには反対されなかった。良かったぁ。
この部屋ってやっぱり母親達の陰謀で出来てるのかしら?
「引っ越そうと思うんだ。せっかくだから、今後の二人の愛の巣?となる分譲マンション買ってさー。花子が卒業したら籍入れるだろ?家族が増えたり…。ああ、花子の子供は可愛いだろうなぁ」
豪は遠い未来に想いを馳せた。むしろ遠い目をしている。
「えぇ?!マンションを買う?いきなりローン?えーと、何歳までローンを払い続けるのかなぁ?うーん…」
花子は頭の中でそろばんをはじき始めた。
「悩む花子も可愛いケド、ローンじゃなくて一括で」
「一括ってどこにそんなお金あるの?闇金とかに手を出すの?やめてよ」
「俺の貯金。そもそも教員だし。お金使ってないから貯まる一方で結構あるんだよね。昔からのお年玉とかも地味に貯金してたし。使い道ないじゃん?」
「……」
(服とかあるんだけどな。豪さんはかっこいいから、何着てもその服がブランド物に見えるのよね)
***********
四人で会議をしました。太朗とカナエの家です。
「「俺「「わたし」」達引っ越そうと思うの」」」」
全会一致だ。
やはり全員原因は『壁が薄い』事。夜の事もそうだけど、他の事もご近所にバレるのは厄介だ。いつ学校にバレるのか……。
「そうだ!教室で『豪センセイとカナエ姉ちゃんが出来てる』って噂が広がってる。なんか二人で保健室で密会的な?」
当然俺と花子は知っていた。…ケド、無視していた。だって嘘だし。
「ああ、密会と言えば密会だけど、あれは豪兄ちゃんを説教したときかな?花子ちゃんの事で」
「ああ、花子は毎日のように保健室に行ってるからなー。いいよなー」
俺の想いは切実だった。だってよぉ、保健室で白衣のカナエと共に過ごす…、いーなー。
「そうなのか?花子すまんな。俺のせいなのか?」
明らかにそうだろう?
「豪さんのせいといえばそうなんですけど、私が体力ないせいと言えばそれまでで……」
花子は赤面している。
「ところで、太朗!お前、俺の花子を呼び捨てにしてるのか?」
なぜに?俺は豪兄ちゃんに怒られるのだ?昔からなのに…。
「どうすればいいんだよ?昔からの癖なんだからしょうがないじゃん」
「豪兄ちゃんだって『太朗』って呼び捨てじゃない?彼は私のよ?」
『私の』…すごくイイ!!
「・・・・・・」
いーぞー!豪兄ちゃんが黙った。
「私の太朗……」
俺は感動のあまり復唱してみた。
「コラ太朗!復唱するな!恥ずかしい」
カナエに怒られた。でも事実だよなぁ?ちょっとニマニマしてしまう。
「昔からの癖なら仕方ないか……」
ふっ、豪兄ちゃんになんか勝った感じがする。普段、授業とかで散々いじめられてる(?)俺としては嬉しい。
「でも、太朗も花子ちゃんも私達の呼び方は変えたわよ?昔は豪兄ちゃんとカナエ姉ちゃんだったけど。豪兄ちゃんは花子ちゃんに‘豪さん’って呼ばれてるでしょ?私は太朗に‘カナエ’って呼ばれてるもん」
カナエの大暴露!
「へぇ、そうなのかぁ」
豪兄ちゃんはニヤニヤと俺と花子を見る。
「っ……。今は呼び方じゃなくて引っ越す話だと思います!」
花子が力強く遮った。花子よ…恥ずかしかったのか。
「おっと、そうだった。俺と花子はいい物件を見つけてそこに引っ越そうと思う」
「豪さん、『マンション買う』って言ってるの。(誰か止めて!)」
「やっぱりねー。豪兄ちゃんならそうだと思った。予想通りだわ。どうせ、『買う』一択でしょ?賃貸マンションじゃなくて、分譲なんだ」
「不動産でも財産を持っていた方がいいと思って。今後地価が高騰する可能性もあるしな」
豪兄ちゃんは堅実だよなぁ。つまらないといえばそれまでだけど、イケメンだから許されるのか?そうなのか?
「俺らは無理かな?俺、貯金ないし」
「「「あはは、太朗はお年玉とか使ってたしね」」」
笑われた。…地味に凹むんですケド。
「それに、私もそんなに貯金ないし。豪センセイより収入少ないし」
「お前っ、俺の収入知ってるのか?」
「ま、だいたい解るわよね。ほら、保健室の先生といえども服装に気を使うから、私は支出が多いのよ。白衣の下は私服だし?化粧もするし?」
「そういえば、俺は白衣着てるから服装にそんなに気をつかってないなぁ」
「そういうとこで支出に差が出るのよ。そういうわけで、私と太朗は賃貸でいいとこ探すわよ」
こうして、会議は終了した。
***********
「そういえば、保健室にいると色々噂を耳にするのよね」
その割には豪兄ちゃんとの噂は知らなかったんだなぁ。
「それで、どうも太朗と花子ちゃんが付き合ってるとかすでに同棲しているとか噂になってるわよ?」
「マジかよ……。いちいち否定してたんだけどなぁ。同棲ってのは誰かここのマンションに入ってくのを目撃したんだろうな?ヤバくない?」
「うーん、目撃者が目撃者を呼ぶって感じになるかもねー。ここには豪兄ちゃんも私も住んでるもんね」
「ペアが間違ってるけど、噂になってるペアが同じマンションに住んでるのはなぁ」
「言い訳できないでしょうね。親の登場かな?避けたいけど。いい歳して親の介入は嫌なんだよね」
「あ、わかるー。俺の年齢でもそうだから。特に俺らの親はちょっとな……」
「これは会議で言うべきだったわね。ああ失敗。でも、結構な噂だから、豪兄ちゃんも知ってるかな?案外あっちでも話し合ってるかもよ」
「花子、結構噂になってるぞ。花子と太朗が付き合ってるとか既に同棲してるとか」
豪は独占欲から花子を膝に乗せた。花子は慣れてるのか、諦めてるのか抵抗しなかった。
「えー?マンションに入るの目撃されたのかな?確かに学校から帰るの同時になったり、登校時間に同時になったりするけど」
「それがいけないのか?目撃者がいるんだろうなぁ。このままだと、俺とカナエが同棲してるとかもウワサになったりするんだろうな。一刻も早く引っ越さないとな!」
うーん、結構大変なことになった。学長に呼び出されたりするんだろうか?面倒だなぁ。
「学長に呼び出されたらどうしよう……」
「うーん。俺ら全員実家の住所を学校に届けてるからなぁ」
「人のうわさも75日で消えないかな?」
「今は手軽に写真撮れたりするから、目撃者に写真撮られたりしたらアウトだな。さっきの会議で議題にすべき内容だったな。失敗。一刻も早く物件を探そう。俺やカナエの写真も撮られる可能性だってある。世の中恐ろしいな」
引っ越した先で写真撮られたらどうするんだろ?と思ったことは黙っておこう。
「あ、引っ越した先で写真撮られた時は仕方ないよな?俺らの仲公表しちゃう?」
「私は一応、高校までは卒業しておきたい!」
「そっかぁ。その時考えるか!」
うーん豪さんは楽天家だなぁ。
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そして、俺ら4人は引っ越した。戸籍も学校に届けてある住所も実家のままだけど。
「えぇー!なんで、太朗とカナエが隣のアパートに住んでるんだよ?」
なんで豪兄ちゃんに俺らが怒られる?
「驚くのはこっちだよ。豪兄ちゃん、お金あるのは知ってたけど何でこんないいマンションを一括で買えちゃうんだよ?!」
「それは私も驚いたよ……」
「えー、花子もー?」
「でも、私はカナエ姉ちゃんが近くにいるのは嬉しいな♪」
「あら、花子ちゃんは嬉しいこと言ってくれるわね」
「でも…近くだからさ、尾行とかされないかな?」
「おお、珍しくいい事言うな、太朗。化学の内申点あげようか?」
「そういうのはマズいだろう?」
尾行→目撃者→写真はマズイなぁ。
「なあ、二人きりだし、壁も薄くない部屋に移ったことだし、いい加減体の関係×ってのはやめようぜ?」
「一応、籍入れるまでダメかなぁ?」
「俺は浮気はしない!これまでずっとカナエ一筋で生きてきたからな」
「うーん、解禁してもいいんだけど……男子高校生……学業が疎かにならない?将来的に私もそうだけど家族を養うんだよ?その覚悟があるならいいかなぁ?」
「そういわれるとなぁ。俺の成績でちゃんとした大学に行って、ちゃんとした職業についてってしないとなぁ。一度豪兄ちゃんに相談しようかな?俺のクラス担任でもあるし」
「そうしてから、また二人で話し合いましょ?」
「はー、これで何も気にしない。俺は思う存分花子を愛する!!ところで花子??」
花子よ…俺を避けているのか?何故に、内装を今更確認しているんだ?
「このキッチン使いやすそう!ありがとう!豪さん!これでおいしいもの豪さんに作るわね?あぁ、収納も充実していて、使いやすいわ。豪さん、よくこの物件見つけたわね?」
「あ…ああ。知り合いに不動産会社に勤めるやつがいて……」
天晴!、友人A(名前忘れた)!
「……やっぱり二人だと広いかな?」
「早く子供がほしいね」
「私が卒業まで待ってください」
「といっても、寝室のベッドはキングサイズだからな!」
「いつの間に!!」
*************
翌週の学校で俺、太朗が恐れていたこと…いや…それ以上のことが起こった。
「やっぱりねー。私は怪しいと思ってたのよ!!」
やかましいわ!腐った女子め。
…俺が豪兄ちゃんとツーショットでマンションに入っていく様が校門に張り出された。誰の陰謀だよ…
俺はカナエとのことを相談しに豪兄ちゃんのところに行っただけだ!何でこんなことに?!
「吉祥寺太朗君、ちょっと校長室に来てくれるかな?」
くっ、品行方正(?)なこの俺が呼び出しを食らうとは!!誰だよ?こんな嘘の写真を撮ったうえに張り出したのは?きっと脳みそが腐っているに違いない!!まったく、俺はカナエ一筋だって言うのに…。
「小鳥遊先生も校長室に呼んでるから」
これは…いわゆる年貢の納め時というやつだろうか?迷惑な話だよな。カナエとも相談したいけど…火に油注ぐみたいになりそうだなぁ。豪兄ちゃんだって、花子と相談したいだろうし…。
「つよしにぃ…小鳥遊先生、なんかすごく誤解されていますね?」
「互いに大変だよな…。二人でコソコソ話してるとまたなんか言われるけど?」
「そうですね」(あー敬語がだるい)
「そういえば、吉祥寺の化学の成績がここのところ悪くないか?」
「それ、今言います?」
っていうか、カナエも花子も傍観して、ニヤニヤ見てる…。こっちは面倒なのに。…もう互いの事公表していいのかよ!!
確か俺が豪兄ちゃんの所に行ってた時、花子はカナエに会ってたはず!何を話してたんだか…。女が3人寄れば姦しいというけど2人で十分姦しいよな…。
「えー、吉祥寺君、小鳥遊先生、この写真はどういうことでしょう?教師が個人的に生徒に勉強を教えるのが禁止されていることはご存じですよね?」
学長…何が言いたいんだ?
「この写真のマンションの住所は学校に届けてある住所とは違う住所ですが?」
あー、摘んだ?豪兄ちゃんなんとかできる?
「えー、そうですね。実は学校の方には言ってないのですが、彼とは幼馴染です。それで彼の内申点をどうとかはしていません。むしろ吉祥寺の成績が悪くて困っています。そうですね、届けるのが遅くなってしまいましたがあのマンションは私の家になります。住所変更が遅くなり誠に申し訳ありませんでした。彼がうちに来た時、家には私の両親、吉祥寺の両親がいまして吉祥寺の成績について話していた次第です」
「それを証明できるのか?」
「そうですね?……えー、どちらの両親ともに働いていて夕方くらいにしか家にいないと思うので証言なら夕方になってしまいますね」
「小鳥遊先生の携帯を預かっても構いませんか?いえね、口裏合わせの可能性も……」
「学長!私と吉祥寺に何があったと思っているのですか?男同士ですよ?男女ならともかく…」
すげー、豪兄ちゃん立て板に水みたいに嘘八百。携帯を預けても俺から花子かカナエに事情を説明すれば……だけど、学長もこう言われればなぁ。
「いや、個人面談みたいなことをしたんだね?」
「みたいなこととはなんですか?個人面談です!両親を含めてですけど。吉祥寺の成績があまりにも目を覆うもので……。クラス担任としてはちょっと気になったので…」
言ってることは酷いケド、まぁこの危機を乗り切るためだから仕方ない。豪兄ちゃん、伏し目がちだし。演技か?
「携帯、預ける必要性はありますか?」
「よし、君を信用しよう!」
豪兄ちゃんは信用できない……。今後、豪兄ちゃんの言うことをまるっと信じ込むのは考えよう!
「夕方に君たちの両親に連絡をする。その際にどのような話をしたのかを聞かせてもらう。それでいいか?」
「「はい」」
俺(太朗)は学長の所に行く意味あったんだろうか?…ほぼ豪兄ちゃんの嘘で話はついたけど?
そして、俺と豪兄ちゃんは解放され、すぐに両親に連絡をとり口裏を合わせた。
夕方~
「もう、そうなんですよ~!うちの息子、誰に似たんだか成績が悪くって。幼馴染の小鳥遊さんの息子さんにも迷惑をかけちゃって!いやだわ~!!」
おい!俺の成績が悪いのは誰に似たってそれは両親だろう?
そ・れ・と、俺の成績はそれほど悪くない。そんな豪兄ちゃんが両親そろって個人面談をするほどではない。……化学の成績は悪いケド。それは豪兄ちゃんの陰謀ではないかと思う。
「あら、学長さんからお電話ですか?いつも息子がお世話になっております。へっ?優秀な息子さんで?嫌ですわ、うちは放任で育てただけです。吉祥寺さんの息子さんの成績……。あぁ、呼ばれました。奥様に不安だからついてきてとも言われましたし、息子にも「一人暮らしの家に俺が行くまでいてくれ」って頼まれましたし。え?太朗君の成績?そう言われましても……うちは本当に放任で育てたので成績の基準がわからないんですよね~。おほほ。」
……両母親の対応により俺・太朗の成績について豪兄ちゃんの部屋で話し合いがなされたということになった。
豪兄ちゃんの嘘も怖いが、母親のトーク力も怖い……。あれ?俺のまわりは怖いものに囲まれてる?
「私の豪さんなんだから!」
おぉっ、教室では大人しい花子が声を荒げている!俺は正直花子の成長が嬉しいぞ!
「わかってる、落ち着け。この度は誠に迷惑をかけました」
「本気でそう思ってるの?」
花子に本気で怒られている。初めてだろうか?成長したなぁ、花子。
「俺だって大変だったんだけど…?」
「まぁそうだろうけど、ほぼほぼ豪さんの口車で済んだんでしょ?」
図星だ。何でわかるんだ?豪兄ちゃん、ずっと見てたもんなぁ…。
「今後は気を付けます…」
こうして俺の反省会は終わった。
こうして俺と花子は無事に高校を卒業した。
花子と豪兄ちゃんは……卒業式のそのままで区役所に婚姻届を提出しに行った。
豪兄ちゃんも両家の親の承認と証人の印鑑も押してある婚姻届(失敗してもいいように3枚ほど)を用意してたんだから相当だと思う。相当とは……独占欲の塊。
俺もカナエと婚姻届を提出した。
ハレて、カナエが俺のものになる!なんて喜ばしいんだろう!
さようなら、DTの日々よ!!
……そう思っていたのに。
「ゴメン。太朗、予定外に生理になったみたいでもうちょと我慢してくれる?」
はぅっ!…神様…俺はそんなに悪いことをしたのでしょうか?それとも前世で何かしでかしたんでしょうか?
それでも生理は続かないもので、俺はハレてカナエを名実ともに俺のものにできた。
神様!こんなご褒美をありがとう!!
生きていてよかった!!
(カナエにはそんなに喜ばなくても…と若干引かれた。)
~After
豪は高校教師を続けている。
もちろん、愛する花子を養うために。
そんなある日…
「小鳥遊先生!私が卒業したら結婚してください!」
という奇特(?)な女子生徒が現れた。豪の容姿なら当然だし、結婚指輪して授業してるんだけど?
「俺、結婚してるし「知ってます」
女子生徒はかぶせ気味に答える。かなり手強い。
「えー、俺の妻(響きがいいな)は超美人だ。しかも若い。最近卒業した。知ってるだろ?旧姓蓮池」
その言葉でだいたいの女子生徒は撃沈する。
ちょっと年上の美人で有名だった蓮池先輩には敵わない…と。
「え?いつからそんな関係に?」
「うーん、いつからかなぁ?生まれた時からかなぁ?花子の方が年下だから、花子が生まれた時から?幼馴染で許嫁。昔っから二人はラブラブだ。邪魔しないでもらいたい」
豪は強い。
カナエは高校で保険教師を続けている。
収入がとりあえず安定するまでは…ということにしているけど、名字が変わった。吉祥寺に。
「保健室のカナエちゃん、名字が“吉祥寺”になってるけどどういうことだ??」
とかなりの噂を呼んだ。
本人は知らぬ存ぜぬ。そういう約束だったから。
学長に呼ばれたけど、真実を告げると黙られた。……何故?
俺がカナエと結婚するとオカシイのか??
花子は専業主婦を頑張っている。
地味にもうすぐ妊娠しそうだと思っている。……まだ妊娠してないけど。
太朗は豪のアドバイス通りに国公立大学を出て“教師になる”というのが堅実にカナエを養っていけるだろうと、国公立大学に通っている。
た・だ・し・カナエとは離れて単身赴任のように一人暮らしで地方の国公立大学に通うことになった。
「もう少し俺の頭が良ければ…」と何度も頭を掻きむしりたかった(禿げたくないので抑えた)。
「4年も地方で離れることになるとは……」「夏休みとか長期の休みには必ずやカナエの元に帰ろう!」と煩悩いっぱいの大学生活を送ることになった。
その後、教育実習で地元に帰ることになったが卒業校には、カナエもいて上層部が頭を抱えることとなった。
その時点でカナエは職を辞することにして、太朗は母校へと教育実習に通うこととなった。
「豪兄ちゃん?」
「ここでは小鳥遊先生と呼べ。そして、お前のとこは何故出産祝いを送ってこないのだ?」
あ、すっかりサッパリ忘れてた。
「カナエと離れて暮らしてるから、そういうのが連携できなくて……。それに、小鳥遊先生ならまた子供できるでしょ?」
「うっ、まぁそうなんだが。礼儀としてだなぁ…。そういや、お前がここに教育実習に来ることで、カナエが保健の先生を辞めた」
「天晴だよな」
「そうじゃなくてだなぁ、一部の生徒がお前を敵視しているぞ?」
「何故?」
「カナエ先生が好きだったからだろ?」
「はあぁ?カナエは俺のもんだ!何考えてんだ?」
「カナエ先生LOVE♡だろ?名字が吉祥寺でも入学した時から吉祥寺だから変化はないし、今の生徒は現役のお前のことは知らないからな」
何てことだ…。カナエは結婚指輪をして仕事してなかったのか?なんか「消毒液でよく手を消毒するから指輪は首から下げてる」って言ってたかな?
でも…首から下げるって服の中じゃんか!今のここの生徒はカナエが既婚者(俺と結婚している)ことを知らないのか?
「俺は結婚指輪を堂々とガンガン見せつけ授業してたからな」
いや、それをドヤ顔で言われても……。
うーん困った。
「吉祥寺先生の指導教員は俺だからな」
なんてこったい、豪兄ちゃんが指導教員……。恐ろしい。
「俺の事は小鳥遊先生と呼ぶように、俺も太朗の事は吉祥寺先生と呼ぶからな!(学校限定)」
「はいはーい」
「ハイは一回でよろしい。はぁ、色々気が重いなぁ……」
俺も気が重い……。
一刻も早くカナエがいる我が家に帰りたい。
「あー、帰りたそうな顔してるけど…。今日の日誌書かないと帰れないからな。はぁ、俺だってお前が書き終わるまで帰れないんだからな。愛する花子と我が子が待つ家に」
「はい、超スピードで仕上げます」
「汚い文字で書くなよ」
「小鳥遊先生―、今はPCに打ち込むんですよ。小鳥遊先生の時代と違うんですよ!」
何か寒い気配を感じる。そして殺気も……。
「ほーぉ、明日からの指導が楽しみだな吉祥寺先生……」
豪兄ちゃんが怖い。
「PCに打ち終わりました。どうぞ見て下さい!」
「うむ。吉祥寺……一応全部出来てる。そうだな、お前は化学以外の成績は良かったもんな。それなのになんで化学の教師になろうなんて……」
「えー、それは秘密です」
「この俺に秘密とは偉くなったもんだな、太朗!」
豪兄ちゃん……こめかみグリグリは普通に痛いです。それなのに左右から力を入れられると頭蓋骨が壊れます。
「まだ、職員室に居残りがいたのか。施錠をするから早く帰ってください」
用務員さんに助けられた。俺の頭蓋骨が助けられた。感謝。
「はいわかりました。いやぁ、この新人が全然仕事できなくて・・・」
さらっと俺のせいになった。
「おい、うちの愛する花子が太朗の教育実習記念パーティを開いてくれるんだと。参加するように」
そう言い残して、豪兄ちゃんは帰っていった。
俺も帰りたい…。
あ、用務員さんに早く帰るように言われてるんだ。さっさとPCの電源落として帰ろう。
「ただいま~」
俺はやっと……やっと理想の自宅に帰宅を達成した。
「おかえりなさい!」
俺としては「ご飯にする?お風呂?それともわ・た・し?」というのをやってほしかったけど、これでも結婚して3年近いもんなぁ。
「豪兄ちゃんから聞いてると思うけど、太朗の教育実習記念パーティをしてくれるみたいだから、私はなんにも作ってないわよ!」
いや、胸をはって言わなくても。はい、カナエはナイスバディなので、はる胸はかなりのボリュームです。
「花子ちゃんと一緒に作ったの~。早く行きましょっ!」
そう言われると、俺も弱い。
「ちょっと荷物置いて、この凝り固まったスーツ着替えてからでいいよな?」
「もうっ、しょうがないなぁ。待ってるから、早くね!」
くうっ、このやりとりがたまらない!
パーティをサボってカナエを抱きつぶしたい衝動に駆られる……ケド、それは豪兄ちゃんに殺されるのでやめておく。理性よ、ありがとう。明日も豪兄ちゃんに会うからな。
「そうだ!カナエは保健の先生としてアイドル的だったみたいだぞ?なんか俺、一部の生徒に敵視されるらしい」
「えー、そうなの?」
「カナエ、結婚指輪を手にしてなかっただろ?それで突然現れた吉祥寺先生の旦那というのが俺のポジションらしい」
「消毒しまくるから仕方ないじゃん。ほら、手が荒れてるのよ?ハンドクリーム塗りまくり!」
久しぶりに触るカナエの手はスベスベ。手のひらは指先が荒れてるなぁ。
「せっかくの結婚指輪だし…消毒液で腐食とか嫌だったんだもん」
頬をぷぅっと膨らませてもOKだ。カナエ可愛い!俺の理性頑張れ!
「それと、俺の指導教官が豪兄ちゃんだ。それは化学の先生だから仕方ないけどさぁ。当たりが激しいというか容赦ないというか……」
「うーん、豪兄ちゃんで慣れればどこでも生きていけるとポジティブに考えればいいんじゃない?」
「そうか、そうだよな!豪兄ちゃんより当たりが激しい人には当たらないだろう」
「ほら、太朗も世間的にはイケメンだし?運動神経いいし?」
おおっ、カナエに褒めてもらった。100人力だ!
「ほら、そこのバカップル!太朗の歓迎会やるぞ!」
豪兄ちゃんに言われたくない・・・。自分のとこ、既に子供いてまだまだ増えそうなのに。
「太朗、久しぶり」
「おう、花子は太った?」
「レディに向かって失礼な男だな!頭蓋骨を破壊してやろうか?花子は子供産んで体形がおこちゃま体系とは違うんだよ!」
こめかみグリグリはやめてください。
「豪兄ちゃん、太朗の頭蓋骨が壊れちゃうよ、やめてよ」
「ふん、明日から覚えておけよ」
俺の歓迎会のはずなんだけどな……。
こういう紆余曲折を経て俺達4人は無事平穏(?)な生活を手に入れた。
終わり方強引ですか?著者は終着点が迷子になります。いつまでもダラダラ追われない系…