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第2話 スローライフに夢を見る

そのあと警察に通報した。

 市街でモンスターを目撃した場合は、通報が義務づけられている。

 それが死体であっても。


 数分ほど待つと、1台のパトカーがやってきた。

 近場の人が駆けつけてくれたのだろう。

 このあとも続々とやってくるはずだ。


 パトカーからおっさんの警察官が降りてきた。


「いやー災難だったね」

「ああ、いえ」


 反対側からは若い女性の警察官。


「お怪我はありませんか?」

「大丈夫です」


 二人が近づいてくると、その目は驚いたように見開かれた。


「それ、ドラゴンの子供じゃないか!?」

「うわー、カワイイ!」


 二人とも、丈二の腕の中にいるドラゴンを見ての感想だ。


「それは、だ、大丈夫なのか?」

「今のところは懐いてくれてるみたいで」

「触っても大丈夫ですか?」

「いやー、どうでしょう?」


 女性警察官が手を差し出すと、ドラゴンはくんくんと匂いを嗅いでペロリとなめた。


「人が平気なんですね。この子はどうしたんですか?」

「実は――」


 丈二はドラゴンと出会った後のことを話した。


「ドラゴンが人に懐くなんて、前代未聞だな」


 おっさん警察官が信じられないと言うように呟いた。


 モンスターを使役することは、そこまで珍しいわけじゃない。

 だが大抵は弱く、気性が穏やかなモンスターの話だ。

 

「ドラゴンが懐いたなんて、テレビから取材が来るレベルだろう」


 それほど、ありえない事だ。

 

 ところで、モンスターを連れて帰って良いのか。

 丈二はおっさん警察官に聞くことにした。


「あの、このドラゴンは連れて帰って良いんですかね?」

「連れて帰って良いよ。手懐けたモンスターは、その人の所有物扱いだからね」


 おっさん警察官の説明を続ける。


「ただし、モンスターの飼育は役所に届を出して、専門の講習を聞く必要があるから。必ず向かうようにな」

「分かりました。ありがとうございます」 


 女性警察官がドラゴンの頭をなでながら言った。


「そうだ、SNSとかにあげたらバズるんじゃないですか?」

「SNSですか……」


 丈二はSNSをやっていない。

 『バズる』の意味合いも良く分からない。

 なんか話題になってる。くらいの意味の認識しかない。


「もしくは動画投稿とか!」

「動画かぁ」


 動画の方がなじみがある。

 猫動画みたいな感じにすればいいのだろう。


 腕に抱いたドラゴンを見る。

 愛嬌があって、表情が豊かだ。

 人気が出るかもしれない。


「猫動画で豪邸建てた人だっているんですよ」

「豪邸……!」


 そんなに稼げるのか。

 それだけのお金が稼げるのならば。

 田舎に一軒家。家庭菜園。ドラゴンとたわむれる動画撮影。

 夢のんびりスローライフ。


 いやいや。

 と丈二は欲望を振り払う。


 ドラゴンをお金儲けの道具として考えるのは良くない。

 自分で稼いで育てねば!

 そんな決意を固めようとしていたのだが。


「それに、この子もっと大きくなるんじゃないですか?」


 その言葉にふと思い出す。

 それはダンジョンを探索している人たちの動画。

 動画で見たドラゴンは山のように大きかった。

 小さめの個体でも小屋ぐらいのサイズ。


「飼育環境、エサ代、なんにしてもお金がかかるでしょうし」


 今の家では飼育できない。

 エサ代だって厳しい。

 お金が足りない。稼ぎが足りない。

 遊んであげる時間もない。

 丈二の力だけで育てるのは難しい。


「動画投稿で儲けないと!」

「……そうします」


 自分の力で育てられないのは悔しい。

 だが自分の意地で、ドラゴンに無用なストレスをかける必要もないだろう。

 素直にドラゴンに稼いでもらおう。


「やった! じゃあ、私がファン一号ですね。楽しみにしてますから」

「ほら、雑談はそれくらいにして、仕事するぞ」


 その後、丈二はより詳しい状況説明をして、解放してもらった。 

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