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黄道を刻む二十四の時の詩

柔らかな陽射しの君と凍ったままの私

作者: 日浦海里

私がここに居られる日々もあと僅か

幾ばくかの日の後には

誰もが待ち望み

誰もが羨む

彼女がこの場所に帰ってくる


その頃にはあなたもきっと

彼女の横に寄り添うのでしょうね


私はいつも分厚いカーテンのこちら側から

微かに見えるあなたの姿を眺めてるだけ


そうして眺めているうちに

いつかその隣に並べたならと夢想する

けれど日にちを積み重ねるように

小石(恋し)を並べているうちに

「いつかは」叶うことなくどこかに霧散する


末広がりが重なる夜の始まりの日に

果てて忘らるる朝は終わっていく


触れてしまえば消えるのだから

夢見るぐらいがちょうどいい


色のない世界

真白な地の上に

ただ一人輝くあなたを

遠くから眺めてる


凍りついてしまった私には

それぐらいでちょうどいい


染まることなく夢見てるだけ

それぐらいでちょうどいい

今日は立春

暦の上では春の始まりになります。


冬至と春分のちょうど真ん中の日でもあり

八十八夜の起算日でもあるそうです


まだ寒い日が続きますが

それでも陽射しは長くなり

見えないところでは少しずつ

春の訪れが近づいているのでしょうね


【登場人物紹介】

○陽ざしの君

 太陽です。

 生命を包み込む優しさと

 生命が生きていくために必要な温もりの力を持ちながら、

 全ての生命にその力を届けることが出来ないことと、

 その力のために生命を苦しめる事があることを

 不甲斐なく思っています。

 遠くに届けようとすれば、近くを傷つけ、

 近くを傷つけぬようにすれば、遠くには届かず。

 そして、その力を制御できるかと言えば、

 思い通りにもならず。

 季節の大半を雲に覆われた空の下で過ごす冬姫は、

 彼の優しさの一面だけしか知りません。

 「柔らかな陽射しの君と凍ったままの私」の中で、

 「凍ったままの私」こと冬姫が、

 春姫と仲良く寄り添う様を羨む言葉を述べているのは

 そのためです。


○冬姫

 別名 氷姫。

 温められた世界を冷やす力を持ちます。

 彼女もまた陽ざしの君とは同じく、

 自らに与えられた力を制御することは出来ず、

 ただその力で世界を凍りつかせることしか出来ません。

 その力は生命の温もりすら奪いつくすこともありますが、

 一方で、彼女によって生み出される氷や雪は、

 地の下で新たな生命を育む役割りも持っています。

 彼女は自らの役割を知り、そのように振舞いますが、

 自分にできることは奪うこと、

 眠りにつかせることだけで、

 生命を育むことは出来ないし、

 他の生命に触れることもできない、と思っています。

 彼女は常に孤独なのです。


○春姫/秋姫

 春姫であり、秋姫。

 彼女自身は温度を操る力をは持ちません。

 彼女はただ、世界に水を与えることが出来るだけです。

 雪解けの水が正しく流れるよう、

 世界を熱する力が訪れる前に、世界が潤うよう、

 雨を降らせる事が出来る。

 彼女自身が温もりを持たないために、

 陽ざしの君の事も冬姫の事も、そして夏姫の事も、

 冷静な立場で眺めることが出来ます。

 彼らが皆、一様にして生命を慈しみたいと思いながら、

 思い通りにいかないことを悩んでいることを知り、

 彼女はただ、その心が乾かないように、

 潤いを与えたい、そう願っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰もが待ち焦がれる春。それを見つめる凍り付いた冬。 私もさむいのは苦手なので早くあたたかくならないかなぁなんて思っていたのですが、この作品を読むとなんだか罪悪感が……^^; それぞれの季節に…
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