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素晴らしいこの世界の片隅で。

かたかたかたかた

作者: ニチニチ

3ヶ月に1度は同じような夢を見る。

ある人は悪夢だと言う。

でも、僕にとっては、何てことない、いつもの夢だ。




夢の中の僕は、いつも高校生でテストを受けている。

薄暗い教室で、影のようなクラスメイトと一緒に受けている。

窓からの日差しで、何となく夕暮れである事に気付く。


問題用紙に目を通す。

テスト問題を読んでいっても、全く理解できない。

答えが出せないことは当然で、それ以前に問題自体が理解できない。


僕は段々と焦りを感じてくる。

こんなはずでは。

ふと思い返すと、ずいぶん長い間テスト勉強をしていない自分に気付く。


穴があくほど問題用紙を見る。

でも、なにも理解できない。

焦る気持ちを抑えながら、それでも見る。


問題用紙に書かれている、気味の悪い文字の羅列が、小刻みに震える。

それは、何か得体の知れない幼虫のような姿になって、僕の手にまとわり付く。


得体の知れない恐ろしさに、声をあげそうになる。

周りに助けを求めようとして見渡すと、そこに影のようなクラスメイトはいない。





僕のいたはずの教室が、荒れ果てた廃屋になっていた。

僕の周りの机には、朽ち果てたマネキンたちが座っている。

そして、それらはぎこちない仕草で、一斉に僕の方に顔を向けて、ぎこちなく笑う。


 

 

 

 



かたかたかたかた。


 

 

 

 



夢から目を覚ます。

当たり前の日常。



外套の少ない夜道を歩いていると。

たまに、背後に何かの気配を感じる。


お風呂場でシャンプーをしていると。

たまに、背後に何かの気配を感じる。



暗い夜道の振り向きざまに。

シャンプーのあとの鏡の中に。


 

 









今、こうやって書いていても、背後からザラザラした暗闇を感じる。

僕は、物音を立てないように、じっとしている。

遠くから、夢の中のあの音が、聞こえたような気がした。



闇の気配が、どんどん近づいてくる。

 



僕は、ゆっくりと振り向く。

そこには、暗闇を映した窓ガラスに、いつもの見慣れた顔だけが映っているはずだ。


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