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玩具寵愛  作者: 海華
5/11

5


そして目が覚めるとコールドスリープまでした私の心臓疾患は治されていた。


治療、早すぎでしょ。


嬉しそうに治ったよ!と言ってくる男性をぼうっと見る。治っても、もうどうでもいい。



もう、どうでもいいんだ。


『そうだ真珠。私の名前ニコル・アーカードと言うんだ。ご主人様でもニコル様でも好きなように呼んでね』


嬉しそうに嬉しそうにそう言われても。

喋る気にもならない。




屋敷の中には女性の奴隷が一人と、私の前には姿を見せない奴隷が沢山いた。


若く美しい女性奴隷を呼び出してご主人様は言った。


『君の友達にこの奴隷はどうかな?ああでも、私以上に仲良くしないでね。真珠は私の物だからね』


正しく物、ですね。黙っていると抱き寄せられて膝の上に乗せられる。


『可愛い、可愛い真珠。君は好きにしていいんだよ。ありのままの真珠で良いんだよ』


ちゅっちゅと髪に頬にまぶたにキスをされても、もう何も感じない。

ご主人様は私の様子に気づいて居ただろうが、気にした素振りも見せず愛でるばかり。



夜、寝る時は人形のように抱きしめられて眠り。


朝、女性奴隷が作った食事をご主人様の膝の上で食べさせられる。


日中はご主人様が居ないので、ぼんやりと読めない言葉の絵本やテレビのような物を見て時間を潰す。


昼食は女性奴隷が作ってくれて居たけれど、お腹減ってもないので食べない。女性奴隷は何も言わない。


夜、帰ってきたご主人様は真っ直ぐ私の部屋に直行してキスをたくさん落としながら抱き上げて笑う。


そして食事はまた膝の上に乗せられて食べて。


お風呂もご主人様の手によって入れられる。ただのペット扱いに羞恥心も湧くはずがない。


そしてまた夜に抱きしめられて眠り、その繰り返し。


一日、二日、三日。


日を重ねてもご主人様はいつも嬉しそうに私を愛でた。

変わらないそれと同じく、私の心も沈んだまま。声も出さず表情も出さず。


淡々と日々は過ぎていった。


そんなある日、ルーティンに少しだけ変化が訪れた。

私をお風呂に入れたあと、ご主人様は私をベッドに寝かせるとどこかに消えてしばらくして戻ってきていつものように抱きしめて眠った。


そしてその頃から


私に対して無感情であった奴隷女性がご主人様が居ない間に私に敵意を見せるようになってきた。



初めは、私の視界に一切入らないだけだった。


奴隷女性のナタリーはそれまでご主人様に言われるとおり私の友達になろうと、私が嫌がらない程度に話しかけていたのに見かけなくなった。


ご主人様が寝る前に消えることが数度起きて、日中はナタリーの姿を見なくなって数日。


ある日ナタリーは私の部屋までわざわざ食事を持ってきた。


その顔に、表情は無い。


「………なんで、あんたが…」


呼ばれた気がしたのでそちらを向くと、ナタリーは茶色の目で私を睨みつけていた。

じっと見ていると彼女はふるふると震えて……セッティングした食事を、わざわざ手で振り払った。


ガシャーン!!


落ちる食事。割れる食器。響く騒音。


『どうかしましたか』


『真珠様が癇癪を起こされたのです』


『左様ですか。割れた食器などを片付けますので入らせて頂きますね』


扉の外で誰かが尋ねてくるとすかさずナタリーが返事をした。

あまりにもバカバカしいやり取りなので、私は手元の本に目を戻す。


『私、真珠様のために一生懸命作ったのに…酷いです!』


『落ち着いてくださいナタリー』


数人の人が入ってくる気配がすると今度はナタリー悲しげに訴えかけた。そこで馬鹿らしいと思い、私は彼らを意識の外へ放り出した。






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