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18話 影(6)

血の描写が入ります…。苦手な方はすみませんm(_ _)m






「クロじゃないか。第7隊のちょうし調子はどうだ?」


「団長! お久しぶりです。まあ大変ですけど、上手くやってますよ。」



丁度お昼の時間。

私はたまたま出会った騎士団長のオルガと一緒に、食堂に向かっていた。



「ヒハイルは…。いや、なんでもない。」



気まずそうに口を継ぐんだ団長を私は明るく返す。




「ヒハイルですか? もしかして親戚だったりします?」


「おお、知っていたか。ヒハイルは私の甥だ。」


「やっぱり! どこか雰囲気が似ていたので、もしかしたらと思っていたのです。」




団長は私に対しても平等に扱ってくれる。私を軽蔑しない人の一人だ。

彼はとても強く、火属性でそれを強化した爆破の魔法を使える。魔法を纏った剣の威力は恐ろしく、剣の腕も達人の域を超えている。文句なしの団長だ。



「私の姉、ヒハイルの母親は10年前位に他界していてな。父親も既に亡くしていたから、まだ成人もしていなかったし、うちで引き取ることになったんだ。

父親は平民であの子は庶子だったからか、私たちには中々感情を出してくれない。

ただ剣や魔法の腕は良かったから騎士団に入れることにしたんだ。少しでも心が和らいでくれたらと思ったのだが。」



「そうだったんですね。」




ヒハイルにそんな過去があるとは驚きだ。確かに強面で表情筋は固まってそうだけど、ちゃんとした感性を持っているし、私はいい人だと思う。




「騎士団内でも、私の親族だからと孤立している噂を聞いた時には心配したもんだ。強さは文句もないというのに、私のことで周りに馴染めていないのなら申し訳なくてな。打ち解けないまま、こんなにも時間が経ってしまった。」



団長!めっちゃ優しい!! 惚れそうだわ。

本当にいい伯父さんだ。

ヒハイルの性格上、自分から馴染みに行くようなタイプではないし、なんでも自分でこなしていきそうだからな。逆に迷惑をかけたくないって感じじゃないかな。

本人が辛いと思っているかは分からないけど、私はヒハイルはそこまで気にしていないと思うな。悲しいなんてマイナスな感情は感じられないし。いや、鉄仮面だからあんまり分からないけど。

それでも他人の身内関係に口は出せない。



「ヒハイルは上手くやってますよ。とても優秀ですし。うちの隊は色んな人がいますから。私が誰一人孤立なんてさせません。」


私が言えることはこれだけだ。後は二人の問題だしね。


「頼もしい隊長だな。よろしく頼んだ。」


「はい!」



褒められた私は上機嫌に、団長と別れて隊室に戻った。









今日はヒハイルとカラスとスウが任務に出ている。クライブはお昼かな?

部屋にいるのはユキとムジナだけだ。





「おかえり〜。ご飯食べてくるなら僕も誘ってよ、たいちょー。」


「ごめんごめん。また次に誘うね。」




ユキは私が叱り飛ばしてからというもの、丸くなった。不意打ちもかけてこないし、言うこともちゃんと聞く。従順な犬みたいだ。たまに耳としっぽの錯覚が見えるほど可愛い。何が効いたのかは分からないけど、扱いやすくなって楽だ。




「ムジナ〜。休憩しなよ〜。」



相変わらずムジナは研究バカだ。三度の飯より魔法の方が大事らしい。

今もお昼ご飯も食べず、黙々と資料探しをしている。




「厶・ジ・ナーーーーー!!!!」


「は、はい!?」


「ご飯を食べなさい。」




ビクッとなってやっと目が合った。

そんな生活していると体に悪いよ? 私なんて転生したと思ったら2週間近く飯抜きだよ? 転生する前から数えたら1年間もご飯食べてなかったんだよ?

どれだけご飯がある生活が恵まれているのかちゃんと自覚せい。



「ね? ティア。」


『…ごめん。僕はご飯食べなくても生きていけるから。』



そうだった、ティアは聖獣だ。

何してるんだろう、私。普段はボケなんてしないのに。疲れてるのかな。今日は早く寝よ。

























ーーーーーーー



私はいつも通り同じ時間に目を覚ます。

シークと暮らしていた時の習慣だ。体に染み付いたものって怖い。


だけど今朝は30分遅く起きてしまった。

ま、30分ぐらい遅れても大丈夫でしょ。今日は書類を終わらせるだけだし。

ぐぐっと伸びをして、欠伸が漏れる。





どろどろっ。






…は?



お腹の辺りに違和感を感じた。

一気に解放されたみたいな、気持ち悪い感触。それと同時にきたのは、下腹の痛み。


痛いっ!

慌てて寝間着を捲る。そこに現れたのは、どんどん服を侵食していく赤い色だった。



まじか! 思いっきり忘れてた!!



今までなかったから忘れていたが、この歳頃になると必ずやってくる、女の天敵。

なんで私はこんなに大事なことを忘れていたんだ…。

この世界の対処法なんて知らないよ!? そんなことまでゲームにも書いてあるはずがない。



そう、生理だ。







「と、とりあえず水場に…!」



布団とシーツをかっさらって、入口を寝間着で抑え水場に駆け込む。

この部屋にお風呂があって良かったぁ…!!!


急いで水を貯め、シーツと布団を放り込む。服も脱ぎ、汚れた足を水で流す。抑えていた寝間着がだんだん赤く染まっていく。

騎士団の制服を汚す訳にもいかないし、そもそもここから出られないじゃん…。

これからどうしよう!?






「そ、そうだ! ティアーーーーーーー!!」



大声で自分の契約した聖獣の名前を呼ぶ。

ティアなら雄雌関係ないし。猫だし。聖獣にこんな姿を見られるのは恥ずかしいけど、そんなこと言っている場合ではない。

誰かを連れてくることの方が優先だ。このままでは数日間ここに籠らなければならなくなる。



『ふはぁ〜。大声出してどうしたの。てか、なんでお風呂場にいるのさ?』



器用にドアを開けて、大きめの猫が入ってくる。

本来ならまだティアは寝ている時間だ。起こしてしまった所、申し訳ないが、主人のピンチだ。助けてくれい!



「誰か呼んできて! えーと…出来れば女の人がいい!」


『なっ! その血、誰にやられたの!? 大変だ! すぐに呼んでくるよ!』



ふう…。何か勘違いしているみたいだけど、なんとかなりそうだ。これで女の人を呼んできてくれれば…。





んん!? 


ティアの姿って火属性の人しか見えないんじゃなかった!? 火属性の女の人なんて私の周りにいなくない? そもそも女の人自体少ない気がする…! 

じゃあ連れてこれる人といえば、シークかヒハイルかクライブぐらいじゃん…。






「やっぱり、ちょっと待ってーーーーーー!!!」


私の悲痛な叫びは伝わることなく水場に虚しく響いた。




















ーーーーーーー(第三者視点)





「今日、たいちょー遅くない?」


「確かにクロが寝坊なんて珍しいな。」



隊室でチェスをしながらユキとカラスが顔を見合わせた。

今日は全員が非番だ。クライブとスウとムジナは出かけている。隊室にいるのは残りの3人だけ。


非番で暇な日は、隊室にいるメンバー同士で絡んでボードゲームで遊んだり、チェスをしたり、手合わせをしたりするようになった。

どれも隊長であるクロが来るまでは考えられないことだった。クロがいると場はより一層盛り上がる。

大体の隊員は遊ぶようになった。いつも非番が回ってくる日を心待ちにしている。







遊ぼうとして朝から集まった3人は肝心な隊長がなかなか来ないことに疑問を感じていた。



「僕とカラスはチェスしてるから、ヒハイルが隊長起こしてきてよ。」



ソファーに寝転がっていたヒハイルはムクっと起き上がって頷いた。



「分かった。」
















ヒハイルが暫く歩いているとよく隊室に遊びにくる猫に出会った。


(多分、隊長の猫なんだろう…。いつもより大きくないか? どちらにせよ、今日も可愛い。)



ヒハイルが溺愛している猫は何やら慌てているようだった。どうしたものかとヒハイルは猫と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

すると猫はヒハイルに背を向けて、まるでついてこいというように尻尾を振った。



「にゃぁにゃぁ!」



その可愛さに負けたヒハイルは猫に大人しくついていった。

着いた先はヒハイル自身も目指していた隊長のクロの部屋だった。

何やら部屋の中から物音がする。



(なんだ、起きているじゃないか。)


ちょうどいい、と思い扉を叩く。




「隊長。寝てるのか? あいつらが待ってるぞ。」


(俺もだけど。)


そう心の中で思ったヒハイルは少し照れた。

強がるように言い、中の様子を尋ねる。


すると物凄い叫び声が聞こえてきた。





「誰か女の人呼んできてぇぇーーーー!!」



その悲痛な叫び声はヒハイルを焦らせた。いかにも窮地に立っているような感情が籠もっていたのだ。



(何があったんだ?)


慌てて鍵のかかっている扉を蹴飛ばす。


(壊れただなんて気にしていられるか。隊長に何かあるよりはマシだ。)



隊長の部屋には隊長自身はおらず、部屋は荒れていた。そして目についたのは隣の水場であろう部屋に続いている血。ヒハイルはサッと血の気がひいた。



「隊長!?」


「こっちこないで! とにかく女の人呼んできて! 大丈夫だから! …つっ!」


(大丈夫じゃないんじゃないか!? いやでも本人は大丈夫っていうし…。どうしたらいいんだ!?)



状況がよくわからないヒハイルはあわあわと慌てた。



「隊長命令よ! 早く呼んできてってば!」


「お、おう。」



勢いに乗って返事をしてしまった。とりあえず隊長の言う通り、女の人を呼んでこようと部屋を出る。

すると部屋の外で様子を見ていた猫が目を大きく瞠って立ち尽くしていた。



(飼い猫ってこんなに主人のことが分かるもんなのか?)



疑問をたくさん抱えながらヒハイルは急いで女性を探し回った。







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