表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/23

15話 影(5)

短めです。15時にもう一話投稿予定です。よろしくお願いします!



私が部屋の中に入ると、シークとカラスが仲良くお茶会をしていた。


しかし、カラスの顔はガッチガチ。

なぜかというと、シークがいつになく後ろに炎を燃やしてにっこり微笑んでいたからだ。

まさに、悪魔の笑み…。




その笑顔がこちらに向けられ私は硬直する。

まずい…。シークのことすっかり忘れてた…。








「クロ、僕の伝言は伝わったんだよね? どうして来なかったのかな?」


「…あっ、えっ…」



シークが怒りに燃えている。殺気もぷんぷん放って獣のようだ。

その殺気が私一人に集中した。鋭く刺さる強者の視線。

私はその圧倒感に掠れた声しか出なかった。





「ねえ、どこにいってたの? カラスの話だと飛び出したみたいだけど? 途中でこの僕に浮気するなんて酷いね?」


「ふ、ふぁ! ご、ごめんなしゃいっ!!」




ブチ切れたシークは私の涙腺を崩壊させた。

いつもはここまでならないのに。

不本意にどんどん目尻が熱くなっていく。声はそれ以上出なかった。ただ頬に涙が伝うだけ。

明らかに泣かしにきている。怒ってる…。


昔以上の迫力だった。昔は手加減してくれていたのかもしれない。




怖すぎて噛んだし! 怖い怖い怖い怖い。気絶しなかっただけマシだと思ってほしい。



私は地べたに膝を着いた。お願いだからもうその殺気を向けないでほしい。いくらなんでも気絶する!



「次したら許さないからね。よく覚えておくといいよ。」



そう言ってシークは隊室を出ていった。

そこに残るのは、修羅場を目撃したカラスと地べたに座り込む私だけだった。

シークが過ぎ去った後でも涙は止まらない。



嫌われた…確実に嫌われた…。シークを怒らせちゃった…。どうしよう! 罪悪感と不安で顔をあげられない。しかも泣き顔をカラスにも見られちゃった。恥ずかしい。不本意だとしても恥ずかしい。



「ク、クロ。大丈夫か。」


「ふぅっ、ふぇっ。大丈夫じゃない…。」



嗚咽が喉を掠める。

やっと落ち着いてきた頃には、隊員たちがぞろぞろと帰還していた。うわぁー。目が腫れてるの見られたかな。どうしたのかという目で見つめられる。心配かけちゃうね。

イケメンは絶対に怒らせてはいけないことを改めて感じた。




早くシークに謝りに行こう。こういうのは早ければ早いほどいい。急いでティアを連れてシークの執務室へと足を運んだ。











「第7隊長、クロです。夜分遅くに失礼します。王弟殿下はいらっしゃいますか?」


「…入れ。」



シークは私を見てにこりと笑った。その笑顔の裏には炎がない。ほとぼりは冷めたようだった。



「ごめんね…。怒りすぎたね…。泣かせるつもりはなかったんだよ。」



私は呆然とした。シークが謝ることなんて何もないのに。ただの私の自業自得だ。

ふと、部屋中にある贈り物の山に目がいった。








今日、何月何日だった?






ああ、そうか。だからキレたのか。

あんなに怒るなんて珍しいと思っていた。結局私が悪いんじゃん。


謝るシークに私は抱きついた。



「言うこと聞かなくてごめんなさい。シークは悪くないよ? 私が悪かったんだし。それと…」



ちゅっ。

抱きついたままシークの頬にキスを落とした。

異性としてではないよ? 勿論父親として。私のお父さんはシークだけだから。



「お誕生日おめでとう!」


「…ふふっ。ありがとう。」



それからの夜は親子のように二人で1年間の溝を埋めた。



どんなことがあったのかを全部話して笑って、最後には疲れ果てて一緒に眠った。お互いが布団になって雑魚寝した。体がバキバキになりそうだ。それでも嫌ではなかった。むしろ大歓迎だ。


やっぱり、シークのこと好きだな。





私はシークより先に目が覚めた。

抜けた毛を見てため息をつく。瑠璃色に染めていた髪の毛は根元が黒く変化してきていた。

私、肝心なことは何も言えていないよね。

まだ言えない。偽る私を許してほしい。

最後まで洗いざらい話せていない私は罪悪感で埋もれそうだ。


抜けた毛を丁寧に集めてポケットに突っ込む。




シークと別れてまたいつもの隊室に向かった。

一連の騒動はこれで幕を閉じた。







ーーーーーーー




(マスター)、このままでいいの?』


「信頼されてからにしようと思っていたけど、だんだん怖くなっていくんだね。」


(マスター)(マスター)だよ。何があっても僕だけは(マスター)の味方だ。』


「頼もしいね、ティア。ありがとう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ