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1話 転生しました、瀕死です。





「はっ!!!」

目が覚めて瞼をパチッと開ける。


ーーえ?目が覚めた?あれ、私って死んだんじゃなかったっけ。


視界に入るのは石で出来た天井。少し見渡すと小さな部屋にいることに気づく。部屋には小さなベットと小さな窓1つ。扉にはチェーンが掛けられている。

どこだ、ここ。



「死後の世界? でもあまりにも想像と違う…。」



もしかしてここは地獄とか!?。てか本当に天国と地獄ってあったの!?。ここが地獄で牢屋に閉じ込められているならまだ有り得る。

そもそもなんで地獄に私がいるのー!?。私は罪人ではありません!。悪いことしたとすれば、…いやゲームしかしてません!。ゲームのやりすぎは決して罪ではないと思うぞ、神よ。




とりあえず状況を確認しようとして体に力をいれる。

おお、死んでも体に力って入るんだな。そうだ!あの窓から何か見えるかも。やっぱり地獄だからなー、、針山とかあるんじゃね?


そんな厨二的思考を働かせながら上半身を起こす。その時妙な違和感を感じた。

こんなに体軽かったっけ、?。



「え? 体がちっさい?」



手のひらをグッパグッパしてみる。その手は明らかに小学生時代の手だ。

ベットに降りて足踏みもしてみる。目線が低いー!?。

よく見てみれば自分の肌はこんなに青白くないし、髪もこんなに長くなかった。

それに、「私」って名前なんだったっけ? 記憶はあるのに、どれだけ頭を捻っても名前が思い出せない。



「どーなってんのこれ。」



肉体が無くなったから仮の姿になってるとか?。


悩みに悩んでいると突然空気を読んだようにお腹が鳴った。




ぐぅぅ〜〜。




間抜けなその音に少し恥ずかしくなってしまう。



え、待って。死んでもお腹って空くの?。いや、まさか!!



急いで胸のあたりに手を押し当てる。

ドクンッ、ドクンッ、

心臓は死んだとは思わせないような元気な音を鳴らし続けている。


「心臓が動いてる…。」



じゃ、じゃあこれは…。

小さな窓を開けて外を見渡す。そこに広がる、中世の西洋のような風景を見て私は確信した。





「異世界転生だぁぁぁあ!!!!!」




















ーーーーーーーどうしてこうなったんだっけ?。

混乱する頭から、私は1番新しい記憶を引っ張り出した。











「まだ起きてるの!? 早く寝なさい!!!!」


「分かってるってー。あとちょっとしたら寝るからさぁ。」


「ほどほどにしなさいよー。」






私はJKに仲間入りしたばかりの現役女子高生。

ただ、「青春満喫してマース☆」なんてことはなく、ありとあらゆるゲームをプレイし尽くすという ザ・オタク生活を送っていた。

プレイするゲームは、RPGやらホラーゲームやら音ゲーやら乙女ゲームまでそれはそれは幅広く。貴重な高校生活が始まったばかりだというのに、全ての時間をゲームに費やしていた。





え? 何、恋愛って言った?

そんな夢みたいなことを私が出来るとでも?。もちろん、彼氏いない歴=年齢ですよ。それに女子校なんでね。そもそも今どき彼氏は二次元で作るものなんだよぉ!。










「あ! 嘘でしょ、待って!!。これ超レアな装備じゃない!?。」



プレイしているRPGのガシャを回すととても珍しい大当たりが出た。


興奮気味にボフボフと枕を叩く。

やったぁー! 明日、オタク友達に自慢しよう。呑気にそんなことを思いながら眠りについたのだった。


まさかあんなことになるとは思いも知らずに。








ーーーーーーー





次の日。

私はいつも通りに通学路を歩いていた。通学路では、可愛らしい地元の小学生とすれ違う。がやがやと小学生の大軍が横を通り過ぎていった。

その先には私のオタク友達の姿があった。

昨夜の話をしたいが一心で、駆け足で詰め寄った。




「あ! おはよー。」

「おはよう!。ねえ、聞いて!。昨日の晩にね、ーーーうわっ!?」




足元に何かがぶつかった。バランスを崩してしまい、体が浮遊感に包まれる。



まじか!こけるー!



すぐさま受け身を取ろうとする。だが、次の瞬間見えるものには目を見張った。


クラクションを鳴らしながら迫ってくる大型トラック。体が向かう先はコンクリートの車道。






ドンッッッッ!!!!!!!!!





鈍い音がしてどくどくと血が流れでる。もはや痛みなど感じないほど神経は麻痺していて、意識も朦朧としている。

誰かが救急車を呼んでいる。友達は涙を流しながら私の手を握っている。

痛み続ける体はもう1ミリも動かない。



終わったな。助からない。多分死ぬ。

あぁ、昨日ゲットした装備の話したかったな。こんなに早く死んじゃうとか、運なさすぎでしょう。

親との会話もあれで最後とか…親不孝な娘すぎる。



「わ、私のせいでおねーちゃんが…!…」



時折聞こえてくる幼い嗚咽は小学生のものだった。私にぶつかったのはこの子だろう。本当に怪我がなくて良かった。でも、心の傷は作ってしまったな。目の前で人が死ぬとか小さい子には耐えられないに決まってる。だからって早死にしちゃあ駄目だからね。無駄死には嫌だよ。これは運命だったんだ。仕方がない。

自分自身が危ないというのに呑気すぎるか……でも、もう無理だしな。



「…ゎ、私のぶんまで…ちゃんと…ッい、生きて…!。」



そう言って、最後の力を振り絞って微笑んだ。ちゃんと微笑めていたかは分からない。声も掠れていたけど届いただろうか。

そうして深い深い暗闇の中に意識は遠のいていった。













あれからどれぐらいたったのだろう。そもそも時間軸が違うし、世界も違うのだろう。

なんで転生したのかは分からないけど、とりあえずもう死なないように頑張ろう! 今度こそ幸せになってやる。

そう強く決意したのであった。


























それから1週間。ーーーーーーーー






異世界転生したと気づいた私は状況を整理しようと頭を唸らせていた。

よく見れば窓のガラスに映る自分の姿は黒目黒髪の美少女そのもの。10年も経てばさぞ美しい女の子になるでしょう。そんな子に転生なんてね。そりゃ、嬉しいよ。嬉しいけど。


それ以上に問題が多すぎる!!!!!


まず、ご飯も水も何も食べていない。もうお腹が空きすぎて死にそうだ。人間って水もご飯も無しでこんなに生きれるの!?。この体おかしくね?。

外は少し行った所に中世西洋風の街があるっていうことは分かるけど、まずこの部屋から出してくれない。そもそもチェーン付きの扉が開く気配はない。物音とかは壁越しに聞こえるから人間はいるんだろうけど会ったことはない。てか会える気がしない。

そして、この子の体に転生する前のこの子の記憶がない!。だから名前も正確な年齢も分からない上、何故こんな状況に置かれているかも分からない。なんで覚えてないのよぉ。普通ライトノベルとかはこういう時、前の人格と融合するみたいな感じでしょ?。オタク女子の人格を持った美少女とか勿体なさすぎる。


というように情報が無さすぎて何も出来ず、私の体は瀕死です。誰か助けてください。



おいこら人間、なんか食い物くれや。こんなにもか弱くて可愛らしい美少女を殺す気か。

それに転生してすぐに死ぬとか有り得ないんですけどーーー!!!。








切に願ってもどうにかなるようではなかったので、体が動かなくなる前にとりあえずこのチェーン付きの扉を強行突破することに決めた。かと言って、ろくに何も食べていない小さな体ではチェーンなど簡単に外れやしない。


それからずっとチェーンを地面に擦り付け、切れたのがその3日後。

グルグルに巻き付いたチェーンを外すのに丸1日かけ、遂に残りは扉を開けるだけとなった。

長い道のりだった。でもやっと外に出られる。もう始めのような活力はなく、だんだん考えることも面倒になってきた。

早く早く人に会いたい。ご飯が食べたい。ここを出たい。でも精神は壊れかけ。だからといってここで立ち止まる訳にはいかない。せっかく転生したんだ。楽しまなきゃ損に決まってる。この状況をどうにかしないと。

意を決して重い扉を開けた。

テクテクとやけに短く感じる足で長い廊下を歩く。栄養不足の体はフラフラする。

あの小さな牢屋のような部屋しか知らない私にとってそこから先は未知なる冒険だった。






「#¥*@、%¥(#*@!?!?」


メイドらしき女の人が驚いた顔でこちらを見ている。

本物のメイドだ! それとも侍女か? 

そんなことよりも、今なんて言った? 日本語でも英語でもない…言葉が分からない!? なんでしょっぱなからこんなにハードモードなの…。



どうすればいいのか分からずワタワタしていると、サッと女の人に抱えられ、近くの部屋に押し込められた。

もう一回あの部屋戻るとか絶対に嫌だからね!? どうしよう。見つかっちゃまずかったのかな…。





暫くするとさっきの女の人がやってきて、水と小さなパンを差し出した。

パンだ………!水だ………!

口につけた瞬間、ブワッと涙が溢れ出す。

量も少なくて、固くて冷めたパンでも物凄く美味しく感じた。

やっと食事に辿り着けた。


実に二週間近くの間何も食べていなかったのだ。いくら中身が高校生だからといってこんなサバイバル生活を送るのも限界だった。怖かった。寂しかった。


そうか、だから私が引き出されたのかもしれない。こんな年頃の子供が監禁されるなんてトラウマレベルで怖かっただろう。水もご飯もくれないなんて死んでくれと言っているもんだ。怖くて、死にたくなくて、もう逃げ出したくて私の人格が呼ばれたのかもしれない。




本当に助かって良かった。

もう死ぬような思いをするのは勘弁してほしい…。




女の人が優しく見守る中、ひとまず食にありつけた私は安心してそのまま眠りに落ちてしまった。









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