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4.謎の魔法。







 夜の道を、コールは一人歩く。

 酒場でシオンとシーナ、二人と別れて自分の宿へと向かっていた。


「ふむ。しかし、あの魔法はいったい――」


 その最中にも考える。

 あの少年の使っていた魔法の正体は、いったい何なのか、と。

 彼の中では少なくとも、一つの結論が出ていた。




「少なくとも、アレは収納魔法ではない」――と。




 いくら独学であるとはいえ、一度収納したものを取り出せないなど、あるはずがない。人間の魔力には限界があり、もし本当に収納魔法を使っているなら、今ごろシオンはとっくにパンクしてるはずだった。

 それなら、どうして少年は平然としているのか。

 コールは理由、可能性を探っていた。


「魔法発動時、収納魔法であれば収束に向かうはずの魔力が、逆に放出されていた。シオン君の手から発生していた光がその証拠。であれば、アレは攻撃魔法の類なのか……?」


 まずは魔法の基礎から、先日と今日、目の当たりにした現象を分析する。


「ならば考えられるのは、消滅魔法。これなら、レッドドラゴンのような巨大な物体が、その場から消失したことも説明がつく。しかし――」


 論を展開する。


「いまだ人類が成功していない魔法を、独学で身につけたというのか? 周囲に基礎を教えてくれる者がいなかった、一人の少年が? ――あり得ない」


 だが、そこでエラーが発生した。

 至った可能性は、あまりに荒唐無稽で、現実味に欠けるもの。コールは一つため息をついてから、星の瞬く空を見上げた。


「まだ、結論を出すには早い」


 そして焦るなと、自分に言い聞かせるように口にする。

 だが、それでも確実な結論は、一つだけあった。

 それというのは――。



「でも、あの少年の才能は、本物に違いない」



 彼はいつの間にか止まっていた足を、動かしながらそう呟いた。

 若干十二歳、孤児院上がりの少年魔法使い。その中に潜んでいる可能性は同じ魔法使い、そして魔法研究者として、とても興味深かった。

 ぜひとも、王宮魔法使いとして迎え入れたい。

 そう思う反面、こうも思った。


「だがそれは、果たしてシオン君にとって幸福なのか?」――と。


 王宮魔法使いとなれば地位と名誉、そして富が約束される。

 しかし同時に彼の場合、研究対象として使いつぶされる未来もあり得た。もちろんコールにそのつもりはないが、ほかの魔法使いが同じとは言い切れない。

 だとすれば、まだ彼には――。


「いいや。なにはともあれ、結論が出てからだな」


 そこで一度、思考をやめる。

 コールはまたため息をついてから、宿の前に立った。



「だが、願うことがあるとすれば――」



 そして、最後にこう言うのだ。




「あの少年に、光あれ」――と。



 


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