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プロローグ
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彼女の身体は力を失い、ゆっくりと沈んでゆく。
青く暗い海の底へと。
今はただ人となったその少女は、それでもうっすら瞳を開けた。
天井に光が見えるが、そこにもう、自分の手は届きそうもない。
ーーそれでも。
力を振り絞って、指先をその光へと向けた。
沈んでゆく。どこまでも。
ーーそれでも、いいの。
薄れゆく意識の中、彼女は平和だった頃に思いを馳せていった……。
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