最初の獲物
「…ここだ」
しばらく茂みの中を歩き続けていると、瑛太は急に身体を草木に隠すようにしゃがみ込み、這いずりながら移動し始めた。
「何やってるんだ?」
「静かにしろ……ここから約0.4キロ先に敵の拠点地がある。まずはそこが見える場所まで悟られないように移動する」
「あ、あぁ…」
彼の意図を理解したので、自分も同じ移動の仕方をする。
「ーーー着いた」
彼が止まった先には、約1メートル程の低木が三本、綺麗に並んでいた。
「この低木の葉の間から敵の様子を観察出来る」
彼はその場で一回転して仰向けになり、上半身を起こして木の隙間を覗いた。
「敵は一、二、三…四体。林道付近と旗の周辺に二体ずつ」
「四体って……こっちは二人しかいないんだぞ?勝てるのか?」
「難しい話じゃない」
「どうするんだ?」
「我が林道付近の敵を倒す。御主は旗周辺の敵を倒す……それだけの事だ」
まさかの脳筋戦法!?
「も、もう少し具体的に頼む」
「仕方がないな……まず先に我が姿を見せて敵の注意を引きつける。その間に御主は坂道を少しばかり降る。騒がしくなったら敵に不意打ちをする。そうすれば後はどうにかなる」
「ちょっと待て、坂道ってどういう事だ?」
「ここからでは見え難いが、この低木の先は下り坂になっている。傾きは大体80度位だ」
「坂道過ぎるだろ……もっとマシな所は無いのか?」
「敵の拠点に行くのに安全な手段は林道から行くしか無い。しかし、御主なら物音を立てずに敵に攻撃を仕掛けられるだろう?」
「まぁ無くは無いけど…」
「では決まりだ、早速行動に移す。心の準備をしておけ」
その言葉を最後に、彼はまた地面を這いずりながら草むらの中に入っていった。