決意
「私、この子とずっと一緒にいたい」
「何言ってんだ美琴!その子は少なからず聖魔法か闇魔法を受け継いでいるんだぞ!法律上それは不可能だ!」
「別に法律なんかどうでも良いじゃない!貴方はそんなにこの子の事が気に入らないの!?」
「そういう訳じゃない!ただ法を犯してまで一緒にいる意味なんか無いんだ、わかってくれ!」
「そんな…ひどいわ、あなた!」
「なんだと!?こっちはお前の身の安全を心配して言ってるんだぞ!?」
「そう…あなたは産まれて来た子を無下に扱う酷い人だったのね、失望したわ。あなたとは今日でお別れよ」
「あぁそうかい!好きにするがいいさ、どうせその子も俺やお前みたいに辛い人生を送る事になるだろうがな!」
そう言うと謎の男はそそくさと出て行った。
「…よしよし、怖かったよね」
「大丈夫、これから、いつまでも、どんな災難が起きても、ずっと、ずっと一緒にいてあげるから」
「…よしよし、よしよし」
「…よしよし、よし…」
「…よし…、よし…」
「…」
…目が覚めると僕は、白骨化した母親の遺体のすぐそばにいた。
「あれは、夢…」
何となく頰を触ると、かすかに涙の跡が残っていた。
今思うと、確かに不思議だった。
あんなに僕に暴力を振るったり、料理は不味い物しかださないあの母親が、何故僕の元から離れなかったのか。
しかし、何がどうであれ、少し事情があったぐらいでは、僕の復讐心は揺らがない。
「困ったな…これじゃ復讐しようにも出来ないじゃないか」
母親を勝手に殺して何処かへ行ってしまったあの少女。
あいつを母親の代わりに復讐しようと咄嗟に思いついた。
その時に確か名前を聞いた筈だ。
名は確か…「コード8」。
あいつは強い。
母親を殺して白骨化出来るぐらいなのだから、かなりの腕前だろう…肝心の母親の実力を知らないけれど。
そしてあいつが強いと証明出来る唯一の証拠がこの部屋で行われたであろう戦いの痕跡。
焦げてる部分は火。
切り傷は風。
穴は恐らく先の尖った氷柱が刺さった時のものだろう。
そして地面に散乱している砂の塊。
これだけであいつは火、水、風、土の四種類の属性魔法を扱える事が分かる。
「あんなちっこい奴が、四種類もの属性魔法を…」
一般的に属性魔法で扱える属性の種類は約一、二種類が大半だ。
四属性以上扱える奴など聞いた事が無い。
そんな規格外の奴に僕は復讐すると、奴の目の前で言ってしまったのだ。
…奴に反して僕の使える魔法はただ黒い霧を出せる事、ただそれだけだ。
しかも最近使えるようになったばかり…これでは直ぐに返り討ちに遭ってしまうだろう。
「…練習すれば、僕も強くなれるかな」
そう思った僕は立ち上がり、歩き出した。
賢者又はネクロマンサーの能力の莫大化を国が恐れていて、あんな法律を作ったのだとしたら、それはきっととんでもない力を秘めているという事だろう。
裸足で玄関の扉を開け、外に出た。
その足で、僕は昨日訪れた公園まで駆け出した。
…さぁ、練習スタートだ。