表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
唯一無二の異能者  作者: 陽炎
中学校編
18/57

ブラック・クリスマス

…今日は2032年の12月23日。


世の中では「クリスマス」という行事で盛り上がっている。


だが、もちろん僕にはそんなイベント存在しない。


今まで一度もクリスマスを祝った事など無いのだ。


よって僕はクリスマスの準備などしなくて良い…


はぁ、なんてつまらないクリスマスなんだ。


せめて、友達の一人でもいれば多少は盛り上がっていたものを…


…友達?


僕は「友達」というキーワードで、いつの日か出会った少女が脳裏をよぎった。


「ダメだ…、彼女はきっと、「裏切り者」なんだ。三号の奴と一緒だ、忘れるしか無いんだ…」


あの時のように、ちょっとそそのかされただけで手のひらを返すような人を友達とは言わない。


そういう奴等は虐めてきた奴等となんら変わりない。


優しい顔して忍び寄る悪魔だ。


そんな奴等と友情ごっこするぐらいなら、いっそ友達なんて作らない方がよっぽどマシだ。


「…なんて、友達欲しいからこの話になったのに何考えてんだかな」


僕は昨日受け取った封筒の中から30万ほど抜き出して家を出た。


…家を出るとそこには、真っ白に染まった景色があった。


「…今日は雪か」


昨日は全然降っていなかったのに、今日は一段と多くの雪が降っていた。


その証拠に、地面には靴の半分を埋めるぐらいの雪が積もっている。


「…今日は自転車は使えないな」


仕方がないので歩いて商店街まで行く事にした。


ーーーーーーー


「…ふぅ、やっと着いた」


自宅からこの商店街まで歩いて約一時間…流石に疲れてしまった。


…辺りを見回すとそこには、溢れんばかりの人集りが所々あった。


そしてそいつらは揃いもそろって腕を組んでおり、そのまま様々な店に入っていく。


洋菓子店にオモチャ屋、イベントホールに中古テレビゲーム店…


どれもこれも、「クリスマス」が絡んでいるから、足を運ぶのだろう。


…正直、羨ましい。


だが、もう僕には友達も家族も居ない。


「クリスマス」を楽しめる事は、二度と無いのかも知れないな。


「…あっれれ〜?もしかしてそこにいるのって、まさか「脳筋」じゃない?」


「…!!」


その言葉に僕は思わず振り向いてしまった。


「ほら、やっぱり!その汚いツラ!やっぱり脳筋だ〜」


…随分と調子に乗っているようだ。


粗方、荷物持ちと金が必要なんだろう…この場所に一人で訪れてわざわざ僕に話掛けるという行為がその考えをより際立たせている。


「えっと…、どちら様ですか?」


「え、えぇっ!?覚えて無いの〜?ショック〜」


「申し訳ございませんが、お名前の方を…」


「あぁ、そういうの良いから。あんたは今日一日、私のトナカイになって貰うからね」


「…トナカイ、とは?」


「はぁ?決まってんでしょ、荷物持ちよ荷物持ち!後金はあんたが払ってよね?」


「はぁ…」


「何その顔?あんた、私を怒らせたらね、彼氏が怖いよ?分かったら一緒に着いて来い!」


彼女は脅したつもりなんだろうが…流石にもうその程度では臆さない。


「分かったよ、でも名前ぐらいは教えてくれ。じゃないと僕は君の「トナカイ」にはならない」


「はぁ?あんたマジで忘れてる訳?超ウケるんですけど」


「…」


「…「真澄」、それが私の名前」


僕がその場で黙り込んでいると、彼女は笑うのを止め、低いトーンで教えてくれた。


「ありがとうございます」


「チッ、さっさと行くぞ!」


「はい」


ーーーーーーー


数時間後…


「ふぅ、買った買ったぁ〜!」


彼女の周りには買込まれた商品が沢山転がっていた。


「いくら何でも買い過ぎでは…?」


「良いのよ別に、苦労するのは私じゃないし。てかあんた案外金持ってんのね、お陰で金借りる事無く欲しい物全部買えたわ!」


「は?」


お金が返って来ない事など最初から分かっていたのだが、金に余裕が無いせいか、つい奴の言葉に反応してしまった。


「は?って何よ。最初に言ってあげたじゃない、荷物持ちも、金払うのをあんたがやれって…あんたはそれを承認した。つまりやらなくちゃいけない事なの、あんたが自分で選んだ事なんだから。…分かった?」


「はぁ…」


「良し、じゃあさっさと帰るよ!荷物持って!」


「…」


…流石に我慢の限界だ。


「どうしたの?さっさと動かなきゃ日が暮れちゃうでしょ!」


「…あの、この道を行くと人混みが多過ぎて商品を持ち運び出来ません。なので、あっちの裏路地を歩いて行きませんか?」


僕の提案に乗ってくれたのか、彼女は今向かっている道を右折して、裏路地に入っていった。


「…」


後を追うように、僕も大量の荷物を分割して運びながら裏路地に入る。


…すると、奴はすぐそこで待っていた。


「ほら、あんたの為にわざわざ裏から行ってやってんだから、とっととしてよね」


そういうと、奴はまたすぐに歩きだした。


…一発当てるなら、今だ。


そう思った時にはもう既に、奴に向けて大量のガスを噴射していた。


「…ごほっ、ごほっ。何よ…これ」


蔓延するガスを手を動かして振り払おうとする奴が目の前にいるのが分かった。


どうやら直撃したらしい…これはチャンスだ。


「もうサンタさんごっこはおしまいだ」


僕はそう言うと、一瞬で奴との距離を詰め、腹に猛烈な打撃を加えた。


「ぐ…、がっ」


女らしく無い声を上げる奴の顔は、何とも愉快な物だった。


しばらくその汚いツラを拝んでおこうと思っていたが、突如奴の手が光り、咄嗟に身を引いたその瞬間、

爆発を起こした。


「チッ…」


僕の出した霧と爆発の煙が混じってしまい、周囲が良く見えない。


…時間が経ち、爆発の煙と霧が消滅すると、目の前には顔を強張らせた奴が立っていた。


「…どういうつもり」


「どうもこうも無い、ただ世間の辛さを教えてあげてるだけだ」


「そんなの、あんたに頼んだ覚えはない」


「そう、だったら「プレゼント」って事にしといてやる。…奴隷のような扱いをされた「トナカイ」から平気で人を苦しませる暴君の「サンタ」宛にな」


「…それ、要するに私に喧嘩売ってるって事で良いの?」


「あぁ、別に構わない」


その僕の言葉に奴は大笑いした。


「あはは!魔法使えない奴が私に喧嘩売ってるとかマジ?超ウケるんだけど…潰すよ?」


「…ホントにお前は異常な人格してるよ、彼氏さんもこんな奴が彼女だとさぞかし苦労してる事だろうね」


「ふふっ…愚痴は勝ってから言えっての!」


奴のその言葉と共に放たれた黄色い光は、僕に向かって一直線に、そして結構な速度で迫ってきた。


「まぁ、あの先生の雷光よりかは全然遅いかな」


僕は光が放たれた後すぐに地面に罠を「重ね掛け」し、頃合いを見て自分で発動させた。


その光は発動した罠によって地面から飛び出した岩石に直撃し、爆発した。


「なっ…何が起こったの?」


驚いた様子でこちらを見る女。


「何故喰らってないんだ」とでも言いたそうな顔をしている。


「じゃあ、そろそろ本気でやり合いますか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ