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唯一無二の異能者  作者: 陽炎
幼少期
13/57

約束

「あの…先生、一つ聞いても良いですか」


「なんだ?」


「もしかしてなんですけど、手加減…してくれてました?」


「…どうしてそう思った」


「いや、何となく…死んでてもおかしくない場面がいくつかあったような気がしたので…」


「ははは、そうだな。確かに私は手加減をしたと思われて当然の戦い方をした。…だがな、君の瞬時に判断する能力といい、技の見極め方といい、本当に良く出来ていたと思う…君なら本当に「魔法中等学校」を卒業出来るかもしれないな」


「ありがとう…ございます」


「…おっ、あれが君の家だろう?」


「はい…鍵は開けっ放しなので、入って貰って構いません…」


「了解」


私は、彼の家まで彼を背負って送り届けてやった。


流石にあの距離からの落下はやばかったのだろう…血の量がハンパなかったからな。


私のあげた回復薬のおかげで彼は喋れるまでに回復したが、まだ完全には回復してないはずだ。


とりあえず今日はもう寝かせてやるか…。


「おい、君の寝室はどこだ?そこまでおぶってってやろう」


そう言いながら私は玄関の扉を開けた。


「二階の…真ん中のドアの先が、僕の部屋…です」


「二階か…背負って行くのはちょっときついな」


ま、仕方ないか、怪我人を放置する訳にもいかんし。


そういう訳で私は彼を二階の寝室まで背負って行った。


彼の部屋には、窓際に布団があり、すぐ近くにテレビ、タンス、机と、何かと寄せて置いてあった。


私は彼の部屋を見渡して彼の布団を見つけ、彼を布団の上に寝転がせた。


彼を寝転がらせたので、私は帰る事にする。


「あの…先生」


…おっと、引き止められてしまったな。


「どうした?」


「今日は色々と、ありがとうございました」


「おうよ、ゆっくり休めよ」


さて、今度こそ帰るか…。


「なぁ、ハルト君。ここに来たついでに知っておきたい事があるんだが」


「何…でしょうか」


「君のお母さん…美琴は、どこにやったんだ?」


「…」


「頼む、教えてくれ」


「…母は、裏庭に…火葬して、埋めました。…火葬と言っても、独自のものですけど」


「そうか、じゃあ目印になるものはあるか?」


「えぇ…確か、そこに種を植えました。だから、その部分だけ異様に盛り上がってるはずです…」


「すまないな、無理矢理喋らせちまって。…じゃあな」


…そういう事だったか。


美琴は自分の存在が跡形も無くなった時、封印の魔法は自然に解けると言っていた。


だから美琴が死んだら遺族の奴等から火葬の日を連絡して貰えると思っていた。


だから連絡が来るまでは彼女は死なないと思っていた。


だから…彼が魔法を使えるようになった時、封印を解く為だけに美琴を殺したと思って…それで怒りを抑えられなくなってしまっていた。


「ここか…」


家を出て裏庭に周ると、何一つ草木の生えていない地面に、少しだけ盛り上がってる箇所があった。


「美琴…ごめんな、守ってやらなくて」


「…お前との約束、破っちまいそうになったんだ。お前が居なくなったら彼を護ってやるって、そう約束したはずなのに…私は彼を一時的にとはいえ、本気で殺そうとした」


「でも、彼は…美琴が思ってるほど弱い人間じゃなかったぞ。自分にはその力が無いって分かってるはずなのに、虐められた連中に復讐してやるって言っててさ。無理だろって思ってさ、せめてお前が教えてくれた彼の魔法だけでも教えてやろうって思ったんだ。…まぁ、確認の為でもあったんだけどさ」


「…正直、驚いたよ。あんなに早く魔法を使いこなすなんて…しかも臨機応変に対応できる力まである。つい、昔からの癖でさ、手加減しちまったんだ」


「まっ、結局彼の方がドジ踏んで自滅しちまったんだけどな!アハハハハッ」


「…状況報告は以上だ、またなんかあったら来るよ」




…来世でも、元気でな。




さて、私もやる事やんなきゃなぁ。


約束した以上、彼をこれ以上酷い目に合わせる訳にはいかないからな。


まずは彼の「魔法中等学校」の卒業を目安に頑張りますか〜。


…今日はもう疲れちまったな、どこか良い寝床は〜っと。


…あっ。


ーーーーーーー


「…やっぱり諦めたらどう?」


「嫌だ!」


「そうは言ってもね、美琴ちゃん…もうずっと「封印の魔法」の練習してるけど、一度も成功した事ないじゃない…もう飽きたよ〜、遊ぼうよ〜、ねぇえ〜」


「ダメだよ凛ちゃん!この魔法が使えないと、安心して赤ちゃん育てられないんだから!」


「そんな事言ったってさ〜…赤ちゃん育てるなんてずっーと先の事なんだよ?後からでも出来るよっ」


「ダメなものはダメー!」


「もうっ!だったら私が美琴ちゃんの赤ちゃんを守ってあげるから!それで良いでしょ?ねっ?」


「う〜ん…ホント?」


「ホント!」


「ホントにホント?」


「ホントにホント!」


「ホントにホントのホント?」


「うんっ!私、雷 凛は、一生美琴ちゃんの赤ちゃんをお守りします!」


「…なら、封印の魔法はいっか!凛ちゃん心強いし!」


「えへへっ、やったー!じゃあ遊びに行こ?」


「うんっ!…あっ、でも今出来そうだったからもう一回!」


「美琴ちゃ〜ん…」


ーーーーーーーーー


「…んん」


しまった…寝過ごしたか。


私が顔を上げるとそこには…


心配そうに見つめる少年の姿があったのだった…。

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