会いたかった人
『ご愛用ありがとうございました。園内はもうすぐ終演です。お忘れ物のないように―――』
アナウンスが流れる
俺と母はそのアナウンスと出口の近くで聞いていた
父がお土産買うのを忘れたといって、買い物でかけた
足が疲れた俺は、ベンチで休み。母も一緒に休んでいる
そんな時だった
「ねえ、楽しかった?」
不意に後ろから声が聞こえた
慌てて振り返るが誰もいない
「どうしたの?」
「え、声が……」
「アナウンスの声じゃない?」
そうかもしれな―――いや、違う
あれはアナウンスの声じゃない
確信をもって言えることだ。あの声は―――
「マリーの声だ」
「マリー? お友達?」
「うん」
そういって疲れている足を動かして駆けだす
「ちょっと! どこ行くの!」
「トイレ行ってくる。少し待ってて!」
嘘をついた。すぐにばれる嘘だ
でも、そんなウソを母は信じてくれる
「ここで待ってるからねー」と言ってくれた
そうして走ると、さっきまでいた観覧車の前にマリーが立っていた
そして、その横には誰か大人が立っている
その人はとても、きれいで優しい微笑みを俺に向けてくれる
俺は思わず、その人の名を口にする
「メリナ……さん?」
「こんばんわ」