転校生~~~トラックゴーレムは彼女は知らない~~~
転校生が自己紹介を終えた昼休みまで、どうやって話しかけるかずっと悩んでいた
好きな数学や魔法学の授業が全く頭に入らずそればかり考えていた
しかし、娯楽が少ない田舎では転校生が来ること自体がイベントで、それが美少女ならなおさらうわさが広まるのが早かった
その結果、廊下があふれるほどの生徒たちがクラスに集まって、メリーに近づくことすらトイレに行くことすら困難になった
「あ、集まりすぎだろ」
戦略的撤退。クラスから俺はとりあえず抜け出した
今の状態で自己紹介しても、何の印象にも残らない。だけれども、印象が強すぎると変人扱いされて落とすのは難しい
どうすればいいと頭を抱えていると誰かにぶつかった
「あ、ごめん」
「こっちこ―――って、エントじゃない」
「マナカだったか」
マナカ・アイトウ 幼馴染の女の子だ
小さいころから親同士が仲良く、家族ぐるみで遊ぶぐらいに仲がいい
背が俺と同じぐらいで炭のような真っ黒い髪をショートにしてボーイッシュの雰囲気を出している
「これから転校生見に行くんだけど一緒に行かない?」
「悪い、今それから逃げてきたんだ」
「え? もしかしてエントのクラスだったの?」
「ああ、しかも廊下があふれるぐらいにいるから今いかない方がいいぞ」
「マジか―。かわいい子って聞いたんだけどなあ」
その言葉に俺はメリーの顔を思い浮かべて、顔を赤らめてしまう
その一瞬をマナカは見逃さなかった
「あれ? もしかしてエント……」
「いや、違う」
「私のことついに好きになったの?」
「いや、違う」
はっきりと俺は答えた
マナカはことあるごとに「好きになったの?」って聞いてからかってくる
確かにかわいいとは思うし、恋人になったら楽しいとは考える
だけど、俺の中でこいつと恋人になることはないと答えが出ている
「ま、そうね。あ、じゃあ転校生を好きになった?」
「うぐっ」
「え、マジ?」
少し引き気味に聞いてきた
「うわー、あんた。マジかー。ちょっと待ってなさい」
そういって、手に持っていたジュースを俺に渡して、マナカは俺の教室がある方へ向かった
数分後、走ってはいけない使ってはいけない廊下で魔法を使いながら、全力で走ってきた
「よし! あなたの恋。私に任せない!!」
「え、ちょ、おい!!」
俺の手を取り、そのまま走っていった